LinK21
「おいで、ー…」
遠い昔、うちは人間やった。
柔らかく笑うあの人と、二人、貧乏でも慎ましく生活しとった。
ところがある日、あの人は居なくなった。
居なくなったのではなく、国を統べる王の娘が、一目惚れして、婿に迎えたのや。
やけど、あの人は婚約を破棄し、怒り狂った姫さん、その姿を哀れんだ王が、処刑にしたんや。
あの人は最期まで柔らかく笑っとった。
なんでや、なんで。
うち、の、せい?
うちが居たから、結婚破棄したん?
居なければ、お金持ちになって、美男美女同士、幸せになったんちゃう?
うちが、居たから、あの人は、幸せじゃなかった?
うちが、殺したようなもんや。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
朽ち果てたうちの身体に、白虎の魂が入った。
人間の姿にも、虎の姿にもなれた。
なんで、うちなん?
あの人の身体に入ってくれたら、良かったのに。
そして、あてもなく歩いていた。
時間なんて分からん、日付やって分からん、ただ、ひたすらに、歩いた。
その先で、あの人を見た。
「…なん、で…」
カラカラに渇いた喉。
涙でぼやける視界。
「大丈夫ですか?」
それが、うちと安藤千鶴の出会いやった。
千鶴は、あの人に似ていた。
さり気ない仕草や喋り方。
たまに「おいで、」って言われると泣きそうになるんや。
うち、もうこれ以上人を好きになりたないねん、
好きになってしまったら、千鶴まで失ったら。
だから、うちは。ただ千鶴の側に居られるなら、何だってやってやる。
人も、機械も、仲間だって、殺せる。
のろのろ歩く玄武は捕まえた。
あとは青龍と朱雀だけや。
なのに。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「白虎!!」
コックピットから千鶴が出てきた。
馬鹿やないのか、戦いの真っ最中やで。
千鶴が執着しとった男の攻撃が、当たる瞬間、うちがリンクを解除し、庇った。それだけや。
「なんで、なんでっ…!」
馬鹿やなぁ、うち、お前に笑ってて欲しかっただけやのに、なんで泣くんよ。
千鶴がぎゅう、と抱き閉める。
千鶴の匂いで、胸がいっぱいやった。
千鶴が死ぬくらいなら、うちが居なくなった方がええ、
千鶴、幸せに、なるんよ、
「すき、やったで、千鶴んこと、」
「知ってた、だって、俺も、白虎の、こと、」
好きだから。
その瞬間、うちの身体は軽くなって、気づいたら下に千鶴がいて、泣いてた。
嫌やなぁ、笑っとってよ。
ふと上を見上げたらあの人が、あの時と変わらない姿で、手を差し伸べてくれた。
隣には白虎の姿もあった。
うちら、一人と一匹で、一つやもんな。
差し伸べてくれた手に、自分の手を重ねた。
∴はろー、ぐっばい