LinK19
「拓人!!」
ざぱぁん!
海の中に落ちた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「どこだ…ここ…」
海武高校の方が襲撃されて、山吹さん、まーくん、メグ、バッキー、俺で鎮圧に来て、バッキーを庇って、そこから…
「気づいたらここにいたんだ…」
真っ暗で何も見えない。
とにかく、歩こう。
「おーい!メグー!バッキー!まーくん!山吹さーん!」
どれだけ歩いただろうか。
真っ暗だから何も見えない。
少しずつ、でも一歩一歩慎重に歩いた。
すると周りにテレビ画面みたいなのが出てきて、
砂嵐が流れる。
「本当お前は出来損ないだな」
「力だって弱いし、すぐ泣くし」
「こいつが兄弟とか本当嫌だ」
「…あんたなんか、産まれて来なければ良かったのに」
暴言とも取れる言葉が聞こえた。
いつの間にか前には白いかたまり。
「だな…?」
やけに静かで、また声が聞こえた。
「春翔くんと拓人が守った命だからね、」
「あら、だなちゃんお昼寝中かしら?タオルケット持ってくるわね、」
「お母さんのご飯美味しいだろう?しっかり食べて大きくなるんだよ、」
「おっ、チビ助!これ食うか?」
「メグ、お母さん、お父さん、おじさん…」
メグや両親、近所のおじさんの声だ。
ゆっくりと手を伸ばして、だなを抱きしめた。
「ねぇ、だな、ずっと一人で抱えていたんだろう、さびしかっただろう、苦しかっただろう、誰にも言えなくて、どうしようもなくて。でも、お母さんもお父さんも、俺も美月もメグも、クラスの皆も、お前が大事で大好きだから、ちゃんと、愛してるから、どんなに酷いこと言われても、頑張ってたの、知ってるから、」
知ってるっていうか、きっとこの映像は。だなの、記憶。
「…俺、美月が産まれる前、嬉しかったけど、お母さんが構ってくれなくて、さびしくて、美月なんか産まれて来なければいいのにって、思ってた。でも、アンドロイドの看護婦さんが、言ったんだよ」
「「先に産まれたのは、次に産まれてくる子に、この世界は、広くて優しくて、安全なんだよって、教えてあげるためなんだよ、」って。だから、産まれてきたら、沢山遊んで、あげようって、」
「そうして、少しずつ、色んな事、覚えて、経験して、今の俺がいる。美月もそうだ。」
「これからはだなも一緒に、覚えて、経験して、悲しさやさびしさは半分こして、嬉しさや楽しさは二倍にして、歩いて行こうよ、だなは出来損ないで、良かったんだよ、そうじゃなきゃ、きっと俺達、出会わなかったんだからさ、」
ゆっくりと腕の中のだなが輝いて、その眩しさに、俺は目を瞑った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「…し!」
「た…と…」
「拓人!」
「うわっ!」
皆が心配そうに見ていた。
ずぶ濡れになった制服が重い。
「…拓人…!良かった…!生きてた…!」
ぎゅうっとメグが抱きついて、肩が震えてるのが分かった。
俺はごめんと、謝った。
「海武高校で白石のリンクを回収、修理するから、しばらくは出撃出来ない、サポート頼んだぞ、」
「ありがとう、山吹さん、」
「…クラスメイトだからな、」
山吹さんが海武高校に連絡してくれたおかげで、リンクは大丈夫だろう。
ただ。問題が。
「…どうやって帰ろう…」
「俺の機体なら二人乗れる。狭いが我慢してくれ、」
「まーくん、ありがとう、」
「悪かったな、拓人、俺のせいで、」
「ううん、バッキーのせいじゃないよ、それに、助けあわなきゃ、俺達、友達だろ?」
そうして、俺達は学校へ戻った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「なんや…この感じ…」
懐かしいような。苦しいような。
胸がざわついた。
「…うちはおかしくない、おかしいのはあいつらや、」
「………泣かないでよ。」
「泣いとらん、」
「…そうだね、」
∴ぼくが歩いてきた道、君が辿った軌跡