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LinK  作者: 及川有紀子
20/27

LinK19



「拓人!!」


ざぱぁん!

海の中に落ちた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「どこだ…ここ…」


海武高校の方が襲撃されて、山吹さん、まーくん、メグ、バッキー、俺で鎮圧に来て、バッキーを庇って、そこから…


「気づいたらここにいたんだ…」


真っ暗で何も見えない。

とにかく、歩こう。



「おーい!メグー!バッキー!まーくん!山吹さーん!」



どれだけ歩いただろうか。

真っ暗だから何も見えない。

少しずつ、でも一歩一歩慎重に歩いた。


すると周りにテレビ画面みたいなのが出てきて、

砂嵐が流れる。



「本当お前は出来損ないだな」

「力だって弱いし、すぐ泣くし」

「こいつが兄弟とか本当嫌だ」

「…あんたなんか、産まれて来なければ良かったのに」


暴言とも取れる言葉が聞こえた。

いつの間にか前には白いかたまり。


「だな…?」


やけに静かで、また声が聞こえた。


「春翔くんと拓人が守った命だからね、」

「あら、だなちゃんお昼寝中かしら?タオルケット持ってくるわね、」

「お母さんのご飯美味しいだろう?しっかり食べて大きくなるんだよ、」

「おっ、チビ助!これ食うか?」



「メグ、お母さん、お父さん、おじさん…」


メグや両親、近所のおじさんの声だ。

ゆっくりと手を伸ばして、だなを抱きしめた。


「ねぇ、だな、ずっと一人で抱えていたんだろう、さびしかっただろう、苦しかっただろう、誰にも言えなくて、どうしようもなくて。でも、お母さんもお父さんも、俺も美月もメグも、クラスの皆も、お前が大事で大好きだから、ちゃんと、愛してるから、どんなに酷いこと言われても、頑張ってたの、知ってるから、」


知ってるっていうか、きっとこの映像は。だなの、記憶。


「…俺、美月が産まれる前、嬉しかったけど、お母さんが構ってくれなくて、さびしくて、美月なんか産まれて来なければいいのにって、思ってた。でも、アンドロイドの看護婦さんが、言ったんだよ」


「「先に産まれたのは、次に産まれてくる子に、この世界は、広くて優しくて、安全なんだよって、教えてあげるためなんだよ、」って。だから、産まれてきたら、沢山遊んで、あげようって、」



「そうして、少しずつ、色んな事、覚えて、経験して、今の俺がいる。美月もそうだ。」


「これからはだなも一緒に、覚えて、経験して、悲しさやさびしさは半分こして、嬉しさや楽しさは二倍にして、歩いて行こうよ、だなは出来損ないで、良かったんだよ、そうじゃなきゃ、きっと俺達、出会わなかったんだからさ、」


ゆっくりと腕の中のだなが輝いて、その眩しさに、俺は目を瞑った。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「…し!」


「た…と…」


「拓人!」


「うわっ!」


皆が心配そうに見ていた。

ずぶ濡れになった制服が重い。


「…拓人…!良かった…!生きてた…!」


ぎゅうっとメグが抱きついて、肩が震えてるのが分かった。

俺はごめんと、謝った。


「海武高校で白石のリンクを回収、修理するから、しばらくは出撃出来ない、サポート頼んだぞ、」


「ありがとう、山吹さん、」


「…クラスメイトだからな、」


山吹さんが海武高校に連絡してくれたおかげで、リンクは大丈夫だろう。

ただ。問題が。



「…どうやって帰ろう…」


「俺の機体なら二人乗れる。狭いが我慢してくれ、」


「まーくん、ありがとう、」


「悪かったな、拓人、俺のせいで、」


「ううん、バッキーのせいじゃないよ、それに、助けあわなきゃ、俺達、友達だろ?」


そうして、俺達は学校へ戻った。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「なんや…この感じ…」


懐かしいような。苦しいような。

胸がざわついた。


「…うちはおかしくない、おかしいのはあいつらや、」


「………泣かないでよ。」


「泣いとらん、」


「…そうだね、」



∴ぼくが歩いてきた道、君が辿った軌跡












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