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LinK  作者: 及川有紀子
17/27

LinK16


大人は嘘つきだ。

子供に嘘をつくなと言いながら自分は平然と嘘をつく。

それから俺は、大人を信じられなくなった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「今日の夜はカレーよ、」


「本当!?ぼく、お母さんのカレー好き!」


「じゃあ、行ってくるよ、」


「あっ、待ってよお父さん!お母さん、行ってきます!」


「行ってらっしゃい、」



父と母と3人で、慎ましく暮らしていた。

その日の朝も、いつも通りだったはずだった。



「ただいまー…!」


学校から帰ると、母親は首を吊って死んでいた。


「お、かあ、さん…?お母さん、お母さん!」



子供だった俺は、どうしたらいいかも分からなくて、目を背けた。

しばらくは父親と過ごしたが、俺は、ひまわり園に入れられ、父親がどこに行ったかなんて知らないし、生きてるのか死んでるのかも分からない。


(迎えに来るまで、いい子にしてるんだよ、)


父親がさいごに言った言葉。

いい子にしてたはずなのに、むかえになんて来なかった。


園では女の子の方が多かった。

しばらくすると同じ年のヒナと楓と過ごす時間が増えた。

そして、火事になったあの日、


(必ず、迎えに行くから、待ってて)



なぁヒナ、俺はその言葉を、信じて、いいんだよな。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



楓と二人、行くあてもなく歩いていると声をかけられた。

がたいのいい、男性だった。


「こどもがこんな時間にうろついてたら駄目じゃき、」


楓と繋いでいた手に少し力が入る。


「あ、あなたには関係な、」


「帰るとこ、ないのか、」


何も、言えなかった。


「よし、ちと狭いけど家に来るか!わしは慎じゃ、波多野慎。教師をしちょる、まぁ、何とかなるじゃろ、」


慎さんは後先考えずに俺達を助けてくれた。

慎さんは俺達にとって、太陽みたいな人だった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「「海武高校?」」



「そうじゃ、わしが働いてるとこじゃき、海も見えるし、寮もある、特待生制度もある、アンドロイドやリンクに関しても最先端技術を勉強出来る、どうじゃ?」


正直な事を言えば、学校には行かず、働いて、慎さんと楓、二人といられるなら、それで良かったはずなのに、自分の事が、分からなくなった。

やりたい事、行きたいとこ、あるはずなのに、わからない。


「正直な事を言うとな、今はわしが勉強を教えちょる、けど、それじゃおまさん達の世界は狭いままじゃ、学校で、色んな友達つくって、その目で、広い世界を見てほしいんじゃ、」


「どこに行っても、ここがおまさんらの家じゃ、さびしい時、苦しい時、わしを頼りんさい、」


そして海武高校に入学した。

だが、ある日、慎さんは姿を消した。

俺達には何も言わずに。


その時、はじめて楓が泣いた。

楓はつよいと、勝手に思っていたから、どうしたらいいか分からなくて、恐る恐る抱きしめた。

抱きしめた身体は、とても小さくて。



「楓、俺は、お前をひとりにさせない、何があっても、守るよ、」



大事なもの、まもれるように。

俺は嘘をつかないというように。



∴うそつき群青













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