表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LinK  作者: 及川有紀子
12/27

LinK11



たすけて、わたしの声は。もう、届かない。



「熱いよぅ!痛いよぅ!」

「助けてぇぇ!!」

「お父さん!お母さん!」

「やだよ死にたくないよ!!」



園が燃えてる。

子供たちの悲鳴が聞こえる。

わたしは、一歩も、動けなかった。



「ヒナはここにいて、絶対帰ってくるから」


「皆を助けてくる!!」


そう言って真守くんと楓ちゃんは炎の中に飛び込もうとした。



「行っちゃ駄目!」


「「ヒナ…?」」


子供たちの声が聞こえなくなる。

駆けつけた消防によって火は消えた。

そしてひまわり園があった所には何もなかった。



「必ず迎えに行くから、だから、待ってて」


そう言って、わたしは、二人の前から姿を消した。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「…っ、」


ゆっくりと瞼をあけると、心配そうにみている真守くんと楓ちゃんがいた。

まだ、夢の続きを見ているのだろうか。


「ヒナ…!!」



「真守くん、楓ちゃん、」


「……ヒナ、」


「俺たち、ずっとヒナを探してたんだ」


「まさか青北学園にいるとは思わなかったぜ」


そうだ。

あの時のアンダーロイドの声が。



「…して……」


「ヒナ?」


「どうして、わたしは、いきてちゃ、だめなのに、」


ぼろぼろと大粒の涙が溢れ出る。


「ヒナ、教えてくれ。あの日の事。何か知ってんだろ」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




ひまわり園は訳あって親のいない子どもたちがいる孤児院だ。

理由は様々。虐待や育児放棄。

もちろんアンダーロイドやアンドロイドだっていた。


わたしと真守くんと楓ちゃんは同い年という事もあり、すぐ仲良くなったし何をするにも三人一緒だった。


ある日、知らないおじさんがひまわり園を訪れた。

お母さんと話しているのを、聞いてしまった。



「この子たちは使えます。是非とも協力してほしい」

「何、ただでとは言いません。」

「いいお返事を待ってます」



◇◇◇◇◇◇◇◇



「今夜、星を見に行かない?」


「「星?」」


「駄目かな?」


「別にいいけど…」


「珍しいな、ヒナから誘うなんて、」


実験に使われる子供は少しずつ遠くに連れて行かれた。

そして、今夜、真守くんと楓ちゃんも連れて行かれてしまう。

そして、連れて行かれなかった子供は、消される。

わたしは、ふたりを守りたかった。


はじめてできた、友達だから。


夕飯を食べ終わるとこっそり準備して、園から少し離れた場所で星を見た。

心の中では、園は無事にあって欲しいと願っていた。


戻ると園は炎に包まれていた。

聞こえる。子供たちの泣き叫ぶ声が。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ぱしんと乾いた音がした。

わたしの頬がじんと痛んだ。



「何でアタシたちに言わなかったんだよ、そんなに頼りないかよ!!」


「落ち着け楓!」


「友達だと、家族だと思ってたのはアタシだけなのかよ!」


楓ちゃんの声が、少しずつ震えて、


「親に捨てられて、親戚も誰も頼れない時に、ヒナが助けてくれた」


「だから、アタシは、ヒナに感謝してるし、ヒナが苦しんでるなら助けたい、」


ぼろぼろと大粒の涙が、溢れでた。


「か。えで、ちゃ、」


「そうだ、ヒナはいつだって自分より他人を大事にするから、だから、俺たちはヒナを大事にしたかったんだ」


「ま、もる、くん、」


「…叩いて悪かった、痛いよな、」


「ううん、いたく、ないよ、」


そっと頬に触れた指が冷たくて心地よかった。


∴助けて、と心で泣くわたし。お願い気付かないで。わたしは、ここにいるの。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ