LinK11
たすけて、わたしの声は。もう、届かない。
「熱いよぅ!痛いよぅ!」
「助けてぇぇ!!」
「お父さん!お母さん!」
「やだよ死にたくないよ!!」
園が燃えてる。
子供たちの悲鳴が聞こえる。
わたしは、一歩も、動けなかった。
「ヒナはここにいて、絶対帰ってくるから」
「皆を助けてくる!!」
そう言って真守くんと楓ちゃんは炎の中に飛び込もうとした。
「行っちゃ駄目!」
「「ヒナ…?」」
子供たちの声が聞こえなくなる。
駆けつけた消防によって火は消えた。
そしてひまわり園があった所には何もなかった。
「必ず迎えに行くから、だから、待ってて」
そう言って、わたしは、二人の前から姿を消した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「…っ、」
ゆっくりと瞼をあけると、心配そうにみている真守くんと楓ちゃんがいた。
まだ、夢の続きを見ているのだろうか。
「ヒナ…!!」
「真守くん、楓ちゃん、」
「……ヒナ、」
「俺たち、ずっとヒナを探してたんだ」
「まさか青北学園にいるとは思わなかったぜ」
そうだ。
あの時のアンダーロイドの声が。
「…して……」
「ヒナ?」
「どうして、わたしは、いきてちゃ、だめなのに、」
ぼろぼろと大粒の涙が溢れ出る。
「ヒナ、教えてくれ。あの日の事。何か知ってんだろ」
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ひまわり園は訳あって親のいない子どもたちがいる孤児院だ。
理由は様々。虐待や育児放棄。
もちろんアンダーロイドやアンドロイドだっていた。
わたしと真守くんと楓ちゃんは同い年という事もあり、すぐ仲良くなったし何をするにも三人一緒だった。
ある日、知らないおじさんがひまわり園を訪れた。
お母さんと話しているのを、聞いてしまった。
「この子たちは使えます。是非とも協力してほしい」
「何、ただでとは言いません。」
「いいお返事を待ってます」
◇◇◇◇◇◇◇◇
「今夜、星を見に行かない?」
「「星?」」
「駄目かな?」
「別にいいけど…」
「珍しいな、ヒナから誘うなんて、」
実験に使われる子供は少しずつ遠くに連れて行かれた。
そして、今夜、真守くんと楓ちゃんも連れて行かれてしまう。
そして、連れて行かれなかった子供は、消される。
わたしは、ふたりを守りたかった。
はじめてできた、友達だから。
夕飯を食べ終わるとこっそり準備して、園から少し離れた場所で星を見た。
心の中では、園は無事にあって欲しいと願っていた。
戻ると園は炎に包まれていた。
聞こえる。子供たちの泣き叫ぶ声が。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ぱしんと乾いた音がした。
わたしの頬がじんと痛んだ。
「何でアタシたちに言わなかったんだよ、そんなに頼りないかよ!!」
「落ち着け楓!」
「友達だと、家族だと思ってたのはアタシだけなのかよ!」
楓ちゃんの声が、少しずつ震えて、
「親に捨てられて、親戚も誰も頼れない時に、ヒナが助けてくれた」
「だから、アタシは、ヒナに感謝してるし、ヒナが苦しんでるなら助けたい、」
ぼろぼろと大粒の涙が、溢れでた。
「か。えで、ちゃ、」
「そうだ、ヒナはいつだって自分より他人を大事にするから、だから、俺たちはヒナを大事にしたかったんだ」
「ま、もる、くん、」
「…叩いて悪かった、痛いよな、」
「ううん、いたく、ないよ、」
そっと頬に触れた指が冷たくて心地よかった。
∴助けて、と心で泣くわたし。お願い気付かないで。わたしは、ここにいるの。