人助け
私は見捨てられたのだろうか・・・。
帰り道をとぼとぼと一人で歩く。
私は惨めだろうか・・・。
いつもならば、公子と別れるT字路が見えてきた。いつものように川の流れは穏やかだ。例えるのならば、母のよう・・いや、私にとっては父のようだった。
私『三途の川みたい・・・。』
私はガードレールから身を乗り出してみた。
私『なんで、こんなに綺麗なんだろう・・・。』
30分程だろうか、私はしばらく見惚れていた。幸せな時間だった。現実を忘れる事が出来たから・・・
増岡『人見、いつまで見てるんだよ。』
人見『・・・。』
この綺麗な川に飛び込めば幸せになるのかな・・・。私の汚い心を洗い流してくれるのかな・・・。私が消えたら誰が探してくれるんだろう・・・。
室伏『・・・?あいつ、飛び降りるんじゃねぇか!?おい、人見!!』
増岡『俺たち知らねぇからな!!』
さよなら・・・お父さん・・・。
ごめんなさい・・・お父さん・・・。
私『!?』
人見『・・・危ないだろうがよ。もし、お前が落ちたら第一発見者は俺たちだ。お前にとって、それは嫌だろ?』
私『・・・。』
息切らしちゃって、馬鹿みたい。
人見『それに俺たち、日頃から馬鹿やってるからさ。疑われるのは目に見えてんだよ。』
嘘ついてる。第一発見者になる前に逃げればいいじゃない。私の心は汚れてる。
私『あ、ありがとう。』
私は人見の目を見る事が出来なかった。むしろ、なんで助けたんだって思った。
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麻里『あ、あそこ!!ヤバいよ、白瀬が掴まれてる!!』
佐村『よし、秘密兵器を出すか!!』
佐村は公衆電話に駆け込んで110番と押し・・・
麻里『どこが秘密兵器じゃ!!』
バシンッ!!
人見『ん?』
私『藤浪と誰?』
麻里『白瀬、大丈夫!?』
私『えっ?』
藤浪も駆けてきた。私が、川の流れに見惚れていた事を知っているのだろうか。そして、藤浪に腹パンされた男は誰だろうか。まるで恋人みたい。
人見『なんだよ。』
麻里『”なんだよ”じゃないよ!!何が”事後よろしく”よ。』
私『・・・?』
人見『俺は人助けをしただけだって!!』
麻里『人助け!?この変態◯んぽこ狸の皮算用!!残念でしたー!!』
私『(なんだ、このノリは・・・。事後よろしく?・・・事後よろしく!?)』
麻里『白瀬!!』
私『はっ、はいっ!?』
麻里『あんたも言ってやりなよ!!』
私『・・・。』
人見『白瀬・・・。』
私『ありがとう。』
私は人見の目をしっかり見て、そう言った。そう言えた。
麻里『白瀬、どういうこと?』
人見『だから、人助けだって言っただろ。』
私『うん、人助けだよ。』
藤浪は呆気に取られていた。
麻里『あ・・・そう・・・白瀬がそう言うならいいんだけど。』
人見『ところで、そいつ誰だよ。』
私も気になる。
麻里『あの・・・その・・・。そ、そうそう!友達の佐村!!た、たまたま帰りが一緒になってさ!!ははは。』
私はよーくわかった。人見はわかっていないみたいだけど。
麻里『ああ、今度の日曜日ね、この佐村が弾き語りをしてくれるから、二人とも来てよ。友達も連れてきてさ。』
私『弾き語りって本当にあるの?』
麻里『うん、友達も連れて来てよ。』
友達だってさ。みんながみんな友達がいると思ってるんだ。友達とケンカ中でも、代わりがいる人はそう思ってるんだ。
私『行けたら行くよ。』
私はそう言った。また嘘をつくことになるかも知れない。