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91 書きたい背中

 

 秋深し 只々たこ焼き 焼きにけり


 大学の文化祭。私たちの部の出店はたこ焼き屋だ。1パック6個入り250円。毎年赤字である。

 しかしみんなが実際力を入れているのは売上ではなくお店の客引き。毎年毎年派手な仮装をして来客者たちを引きつけ盛り上げるのだ。女装、原始人、雷様、etcetc。


「よぅしお前ら! 全員俺の背中に彫り物入れろ!」


 そう言ったのは同級生の彼。彼は捻り鉢巻と腹巻をつけ、下はステテコ姿で上半身は裸だ。おう! と言って周りはマーカーを持つ。次から次へと彼の背中に富士山やら桜の花やら波やらが描かれた。


 そして最後は私の番だと彼の背中の前へ押し出される。

 私は置いてあったペンを手に取り、ひとり彼の背を見つめた。


「……」


 腹巻に隠れるようなところに、文字を書く。わからないように、書き順はばらばらで。


「描いた?」

 彼が振り向く。笑って頷いた。


 *


「あのさ、これ書いたのお前だろ?」

 翌日の片付けの日、こっそり彼に脇に連れて行かれた。背中をまくって腰のところを見せられる。

「な、ななな何で……」

 見られる前にお風呂で消えると思ったのに。


「お前だけ、油性ペンだったんだよ」



 彼の腰にひとつだけ残っていたのは『スキ』という文字。


 



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