89 背丈よ止まれ!
ミィ姉は俺たち姉弟の幼なじみだ。3歳上の姉の同級生でもあるミィ姉のことが俺は小さい頃から大好きだったが、「ミィねえ、大きくなったらぼくのおよめさんになって」という可愛らしい求婚を、鬼姉は「自分よりちっこい男の嫁になんかなりたいわけないじゃない」と一笑に付した。
俺は決心した。基本的に男は成長すれば女性より大きくなる。今はこっちが小さくても中学生ぐらいになればミィ姉の背を越すはずだ。そうしたらもう「姉」などの敬称は捨て、ただの「ミィ」に愛を告げるのだ。
時は流れる。
中1の終わり。俺は157cm、高1のミィ姉は164cm。
中2。俺は162cm、ミィ姉は168cm。
中3。167cmと171cm……
「ミィ姉!!」
「何」
「ミィ姉の成長期はいつ終わるんだ!!」
大学1年の俺と4年のミィ姉の身長はそれぞれ175cmと176cmだった。モデルか。(実際ミィ姉はモデルのバイトをしている)
「知らないよ。遺伝子に訊いて」
「何でそんなにデカくなるんだよ!」
「悪かったね」
「悪かないよ! もういい! 好きだ!」
ミィ姉が俺と歩くときはいつもぺたんこの靴を履いていることを姉に教えられるのはこのすぐ後のことだ。(覗いてやがった)




