80 (I love you) just the way you are.
私はあの頃の私ではない。
太っていた私。それを知る者はここにはいない。1年間の浪人中に必死でダイエットして、そして東京のマイナーな大学に進学した。ここなら過去の私を知っている人なんていないはず。
だったのに。
「ミシュ?」
何故あんたがここにいる!
友人に誘われて入ったサークルの1年先輩に高校時代の同級生がいたのだった。つーかその忌まわしいあだ名ヤメロ!
「私が昔太ってたことは誰にも言わないで!」
「お前ふにふにだったよなあ」
「私は生まれ変わったの! いい? 言わないでよ!?」
「まさか大学で会えるとは思わなかったなあ。あ、あんパン食う?」
話が通じん!
彼は事あるごとに私に構う。
「なんで体型に拘んの? お前明るくてみんなにも好かれてたじゃん」
「確かに太ってるからって苛められたりはしなかったけど」
でも。恋愛の対象にはならなかった。キャラ立ちしたマスコットみたいな存在で。
「もっと恋とかしてみたいんだもん」
切実な顔の私を見て彼が言った。
「わかった任せろ。俺と付き合おう」
「は?」
「俺は昔のお前も今のお前もどっちも可愛いと思ってる。適任だろ?」
「え?」
周りのみんなが、やっとくっついたか~、よかったね~と祝福した。
あれ?
「ミシュ」の由来は〇シュランタイヤのマスコットから。
(そのキャラにはちゃんと別の名前はあるんだけど…)




