78 3番ピッチャー泉さん
ソフトボール部なのは知っていた。ポジションがピッチャーなのも。グラウンドでよく見かけたから。
2年でその彼女、泉さんと同じクラスになる。俺は野球部でピッチャーだったから、よく話をした。背の小さいバッターは投げ難いとか、たまに他のポジションやると楽しいよなとか。
泉さんと河川敷でキャッチボールしたこともある。彼女がスパイク持参で来たのは笑った。しかしさすが持参しただけはある。投げる投げる。速い速い。つい自分もマジになる。「痛ーっ」と言いつつもしっかりキャッチする彼女。すげえ。
3年の夏に、野球部が全国大会まであと一歩というところまで行って、そこから俺の周りがガラッと変わった。女の子が周りにうろうろする。告白される。その中に顔の可愛い子も何人かいて、さすがにちょっと揺れて休日に一緒に出かけたりしてみた。映画とか、街ブラとか。
うーん。
可愛いんだけどさ。
でもそれだけなんだよな。
うろうろ歩くとか座って喋るだけとか、疲れる。
これが泉さんなら。
そう思ったらもうそれしか考えられなくなった。
次の休日、俺はグローブを持って泉さんちへ向かう。
俺、泉さんが好きなんだ。
……もう少し勇気がたまったら、絶対言う。
え、ちょ、今言いなよ!∑(゜д゜)




