74 嘘泣きのお姫さま
女の涙は武器だ。
小さな頃からその武器を振りかざす。
兄のオモチャを欲しがって泣き、友達に意地悪を言われて泣き。
全て通用するわけじゃないし「泣けば済むと思って」なんて言われることもあったけれど、泣かないよりマシ。だってやっぱり相手は多少怯むから。
泣き虫ひめ、なんてあだ名をつけられた私をただ一人、嘘泣きひめ、と呼んだ男の子がいた。
「お前ほんとは悲しくないだろ」、小学校の廊下で二人だけのときに言われ、つい怒ってしまった。ほらな、普段ならそこは泣くはずだ、と笑ったその子を見て、しまった、と思った。それからその子の前では泣くのはやめた。涙の無駄だから。
でもそれ以来、彼が気になる。中学へ進学しても、同じ高校へ進学しても、視界の片隅に入る。
あるとき、何気に彼の後を追って、階段の踊り場で彼が女の子から告白される場面に遭遇してしまった。咄嗟に影に隠れる。かわいくて有名な彼女。答えを聞きたくない。目を瞑り耳を塞ぐ。
人の気配がして顔を上げると、目の前には彼。
「ホントの涙、初めて見た。なんで泣いてんの?」
「え」
頬を触ると、確かに濡れていた。
「な、なんで本当ってわかるの?」
なんでかねえ、と彼は私の頬をぬぐった。
それは、ずっとずっと見てたからなんだけど。
↑そこんとこまで書けよ!(そしてもっとkwsk!)というお声を背負いつつ力尽き今回はここまで……!
明日は拍手小話をまとめてupします




