64 夏恋サイダー 2
夏休み。部活へ行こうと玄関を出たら幼なじみが無表情で立っていた。
「俺たちもう駄目かも。由花、例の先輩に夢中でさ」
こいつと由花と俺は幼稚園からの付き合いで仲が良かった。中二の途中から二人が付き合いだして、多少は遠慮しつつそれでも三人でツルんでた。
それが、由花だけ別の高校に進学して運動部のマネージャーになってから事態は変わったのだ。
「あいつのスマホ見た。仲良さそうにやり取りしてた。向こうなんかあいつのこと名前呼び捨てだし」
彼氏がいる女に手を出すなんてなんて奴だ!
「俺が話をつけてきてやる!」
幼なじみが止めるのも構わず、俺は由花の高校へ向かった。
校門脇の自販機が目に入る。水……じゃ気持ちいいだけだ。かといって色つきのジュースもシミとかが躊躇われる。目についたサイダー。これなら無色だし炭酸が刺激になるかも。うん、これだ。
そうして乗り込んだ先で。
中性的な整った顔。すらりとした身体。クールな眼差しと態度。
ぶっかけられたサイダー。
見事にふたつの意味でやられてしまった。
「ちょっと洋介! 晶先輩に纏わりつかないでよ!」
「うるせーお前は瞬んとこ行ってろ!」
今となっては晶先輩の側にいるこいつこそが憎い。




