58 JUDO-girlができるまで
高校の体育の授業、次の単元は柔道だ。
ちゃんと柔道着を着るのだが、週2.5時間の体育のわずか1~2ヶ月のために柔道着を購入するはずもなく、例年クラスの男子から借りることになっている。ちなみに男子は1年時にマイ柔道着を購入済み。
出席番号順で借りる決まりで、私が借りる相手はあまり喋ったことのない彼だった。印象としては静かな穏やか男子。いつも本を読んでいるし。
「どうぞ」
「ありがと、借りるね!」
そして初めて迎えた柔道の日、更衣室で体操着の上に彼の柔道着を着る。さすがに大きいけど帯で縛れば……って。え、これは。
OH! く ろ お び !!
え? 何? あのヒト柔道やってるの? しかも有段者!?
周りみんな白帯の中、黒帯締めて柔道場に佇む私。大ウケである。
「お、黒帯がいるなあ」
先生、わかっててそういうのやめてください。
「ねえ、柔道部だったっけ?」
彼に道着を返しながら問う。
「一応入ってるけど活動日少ないし。でも家が道場やってる」
本を読みながら受け取る彼。
草食動物に見せかけて肉食とか……! (※違います)
私は一気にノックアウトされてしまった。
「つ、付き合ってください!」
「道場ならいいよ」
斯くしてここに柔道少女のできあがり。




