44 お人好しの恋
憧れの彼にはいつも恋人がいた。
大学の部活で知り合ったときには高校時代からの彼女がいて、そのうち年上の看護士の彼女に替わっていて、そして今はどこの誰だかわからないけど、とにかく違う人。この間3年。そのスパンが長いのか短いのかはわからない。ただ私の片思いは、長い。
そうしたら、私にアプローチしてくる人物が現れた。新入生の男の子。「そういう対象に思えない」と何度断っても諦めてくれない。
「私、好きな人がいるの」
「それって副部長?」
誰もいない部室で、固まった私に「見てればわかります」と彼は言う。
「どうして告白しないんですか?」
「彼女がいるでしょ」
「結婚してるわけでもないのに?」
「割り込むようなことしたくない」
「そういうとこ、いいと思う」
赤くなった私に「でもやっぱり一度きちんと告った方がいいですよ」と言って彼は出て行った。
そして、一大決心をした私は当人に気持ちを打ち明け、ごく丁寧に振られ。
一人部室で泣いていると彼が来て、黙って一人分離れた場所に座った。
「こういうときは黙ってるのね」
「つけ込みたくないですからね」
「そういうとこ、いいと思う」
泣き笑いした私に、今度は彼が赤くなった。




