38 弁当屋の彼女
主任が私の手元を覗いて訊く。
「いつも美味そうな弁当だね。どこで買ってきてるの」
「えーと、うちの近所のお弁当やさんで」
実はこれは私の手作りだ。料理は好きだが弁当箱が面倒なのでいつも使い捨ての容器に詰めてきて食べ終わったらポイ。そんな事情を話すのも、実は手作りだと言うのも面倒でついそう答えてしまったのだが。
「それ日替わり? 今度俺の分も買ってきてくれない? いくら?」
しまったまさかそう来るとは。
ご、ごひゃくえんです……、そうなんだ安いね、とワンコイン渡され、私は翌日二人分のお弁当を作るはめになってしまった。そんなことが週2,3回、そのうち手間賃だからと週2千円渡され、最後にはひと月分1万円。ひええどうしよう!
他の男性社員が「へえ俺も頼もうかな」と言ったときは心底肝を冷やしたが、主任が「彼女が持ってくるのが大変だから遠慮しろ」と言ってくれたのでそれは免れた。
そんなことが半年も続き、たまたま誰もいなくなった昼休みの部内で主任が言った。
「そろそろ、出来立ての温かいのが食べてみたいなあ」
へ?
そんなわけで、就業後、主任のマンションへ連れていかれた。
いつバレた!




