28 好きと言えない(前)
あいつとは小学校から一緒の腐れ縁みたいな関係。
今あいつは年上の女の人に夢中だ。保健の先生。バッカじゃないの? あんたみたいなコドモ、相手にしてくれるわけないじゃん。
「うるせーな。わかってるよ、ほっとけよ」
ふんだ。ほっとくよ!
あいつは体育や部活で少しでもケガすると(しなくても)すぐに保健室へ行ったけど、私は意地でも保健室には行かなかった。体育で転んで足を捻っても、生理痛がひどくても、何が何でも。きっと先生は私の顔も知らないと思う。
だから。
休日の街中で、男性と手を繋いだ先生と目の前ですれ違っても、先生は私に気づかなかった。でも待って、その先には。あいつがいる。さっきCDショップで偶然会って軽口叩いて別れたばかり。CDを買ってもう出入口に──
「あのすみません!」
私は咄嗟に自分のネックレスを引きちぎった。
「これ、今落としませんでしたか?」
先生は、え? と振り向いて、私の手を覗きこむ。
「私のではないみたい」
柔らかく微笑み甘い香りのする先生。
先生の肩越しに見ると、あいつはちょうどこちらに背を向けて、歩いて去っていくところだった。ほっと息をつく。
私、何やってるんだろう。
後編につづきます




