14 May and December
登校前、手持ちの鏡を出して玄関前で前髪チェック。よし。そしたら隣の玄関が開いた。
「おはようユキちゃん!」
「おはようアユ」
隣の家のユキちゃんは今日もスーツが決まってる。
ユキちゃんは駅まで、私はその途中まで、この朝の10分が貴重な時間なのだ。あ、ネクタイは誕生日に私があげたやつ!
「いいネクタイしてるね、おにーさん」
「かわいい子にもらったんだよ」
「カノジョ?」
「残念ながら」
もう! そこは“ええまあ……”ってテレるとこでしょ!
わかってる、相手にされてないことは。私のことなんか妹ぐらいにしか思ってないんでしょ。いいもんあきらめないんだもん。こうやって朝の10分を毎日毎日続けてじわじわいくんだもん。
「ユキちゃん、だいすき」
「オレもアユ大好きだよ」
ユキちゃんは私の頭をぐりぐりなでる。
「もう! 子供あつかいしないでよ!」
ユキちゃんはプッと吹き出して
「ほら着いた。頑張ってかけっこしてこいよ」
と校門前で私のランドセルを軽く押した。
「かけっこなんかしないよ!」
むうとふくれた私のほっぺをつついて、じゃあな、とユキちゃんは駅に向かった。
あーあ、早くオトナになりたい。




