95 タイムマシンに乗って 4
彼女が卒業してからちょくちょく彼女と同期の卒業生が何人か遊びに来たけれど、もちろんその中に彼女の姿はなく。
これではダメだと他に恋を探してみたけれど、無理やりではうまくいくはずもなく。
すっかり新しい恋に諦めたところで3年経っていた。
季節は初夏。教育実習生の受け入れ時期だ。受け入れ予定の学生の名簿を見て、俺は瞠目した。
「お久しぶりです」
3年ぶりの彼女はすっかり大人びていた。
そりゃ実習先を母校にする学生は多いけど……しかも、教科も。
「宜しくご指導お願いします」
同じじゃないか!
「先生、好きです」
3年ぶりに聞いたそのフレーズ。
「結構粘り強いんだな」
「正直言えば諦めようと私なりに努力したんですよ。他に探してみました。でも無理やりじゃうまくいかなかった」
──彼女も俺と同じことをしていた。
「だから諦めるのを諦めました」
「俺は……学生とは」
「わかってます。私もまだ学生とはいえ教壇に立ってみてよくわかりました。生徒に手は出せない。だからあと1年、社会に出るまで我慢します」
「……」
ああ、今すぐタイムマシンに乗って1年後に飛んでいきたい。
そしたらすぐに、君に気持ちを伝えるから。嘘偽りない、本当の俺の気持ちを。
タイムマシンに乗ってはこれでおしまいです。
好きな相手に好きと言われたのに応えられない、というシチュエーションが書きたかったのです。
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