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拍手にのせていた200字未満のショートショートです
【4月のさかな】short ver.
3月31日の23:59にメールが届いた。
『すきなんだ』
そうしたら4月1日の0:01にまたメールがきた。
『……っていうのは嘘』
すき、っていうのが嘘、というのが嘘? つまりすき?
よくわからないけど、とりあえず
『わたしも』
って送っておいた。あとは勝手にかんがえて。
【Happy Christmas Present】
幼なじみの彼とのクリスマスプレゼントの交換ももう何回目だろう。
ハイ、と渡された大きい箱。
わあ、と開けると中にまた箱。
また中に、また中に、と段々小さくなる。
そして最後に残った小さい箱。
これはもしや……と開けたら、ひらりと紙が1枚。そこには
『すきだ』
アホかここはフツー指輪とかだろうがよ!!
と私に叩かれ「ヒドイッ」と泣き真似をする彼。
ごめん素直じゃなくて。
本当はすごくうれしかった。
【ギブミーチョコレイト】
残業のお供は机の中のチョコレート。
脳ミソに糖分与えて、ガンバリマショー。
彼はいつも「ちょうだい」と言って1つ取り、
そして律儀に10円置いていく。
いらないよって言ってるんだけど。
でもある夜「今日はタダでもらうからね」
そう言って、10個も取っていった。
1か月後、「お返し」と渡された大量のキャンディ。
そうか、あの夜は2月14日だった。
【隠し味】
うまいうまい、彼はいつもそういって私の料理をほめる。
でもね、今日の麻婆豆腐は丸〇屋の素だし、餃子は冷凍食品。
大好きだっていうシチューだって野菜切って煮込んでルー入れるだけだし
たらこパスタだって、既製のソースを和えてるだけなんだけど。
そう言ったら
「愛情が入ってるからよりうまく感じるんだ」
だからそういうこと言うのカンベンしてよっていつも言ってるでしょ!
【バロメーター】
あ、今朝は彼よりも早いみたい。よし大丈夫。
あ、今朝は彼が前にいる。ヤバイ遅刻する。
私は毎朝みかける彼をこっそり遅刻バロメーターにしている。
ある朝家の前の細い道から大通りに出たところで
ばったり出くわした彼が私を見て
「え、やばっ、遅刻……」と呟いた。
どうやら彼も同じことしていたらしい。
【一夜のあやまち】
背中に温かい感触、腰に絡まる腕。
振り向いて、誰これ! なんて言わない。ちゃんと憶えてるし。
昨夜はかなり酔っ払っていたけど完全に未遂でした。エライ、私。
さて、一応起こすか……と思っていると
彼が目を覚ました。
「おはよ」と声をかけると
「え、え、えーー! だっ誰? 何この状況!」
なんと彼が憶えてないパターン。
さてどうする?
【まわりまわって】
中学校の同窓会。
小中高と片思いしていた彼も来ていた。
「俺、お前のこと好きだったんだよなあ」
「うそ! 私も好きだった……」
何とも甘酸っぱいすれ違いである。
「……お前今彼氏いんの?」
「いる」
「……」
ずるい私は彼の眉間のシワに勇気をもらって
「と、いうのは嘘」と舌を出した。
二次会に行かず抜け出した私たちはあとで散々冷やかされた。
【good morning cafe】
8:00AM。
彼は時間通りに私の働くコーヒーショップに来る。
「おはようございます」
「おはようございます」
いつも通り、彼は本日のコーヒーを手にして店を出る。
そんな日常。
ある夜、街中で会社帰りの彼にばったり会った。
「あ、お、おはようございます!」
やだ今は夜じゃないの!
咄嗟に出た言葉に真っ赤になると
彼は声を上げて笑ってから言った。
「夜のコーヒーでもご一緒にどうですか?」




