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秋鋼  作者: MTL2
89/600

土産

商店街


「すまないが、この飴玉をくれないか」


「へいっ!毎度!!」


桜見と別れた波斗と雨雲は商店街へ来ていた

急に「楓に土産を買ってやりたい」と言い出した雨雲は飴玉を購入している最中だ

別段、急ぐことでもない、との事


「蒼空」


「何ですか?」


「このテの菓子は滅多に食わない」

「飴以外に楓が好きな物が解らないのだ」

「意見をくれないか」


「は、はぁ…」


女の子が好きな物?

ケ-キとか、アイスとか?

楓ちゃんは小さいし、それが妥当かな


「コレなど、どうだろう?」


「スルメはやめた方が良いですよ」

「絶対に」


「そうか…」


「ケ-キとかアイスなんて良いと思いますよ」

「ほら、女の子には定番って言うか」


「…ふむ」

「この辺りにその類の店は在るか」


「えぇ、少し遠いですけど」

「行きます?」


「そうしよう」




九華梨警察署前


「ここの角を右に曲がってからですね」


「あぁ」


話ながら歩く2人

丁度、警察署の前を通りかかったときだった


ドンッ


「痛っ!」


「む」


雨雲と女性の肩がぶつかってしまったのだ

雨雲は微動だにしなかったが、女性は尻餅をついて転んでしまった


「すまない」

「大丈夫か」


「大丈夫か、じゃね-よ!!」

「痛ぇじゃね-…か…」


「あれ?昕霧さん」


「っ、っ」


口をパクパクと動かす昕霧

波斗の言葉など耳に入ってないようだ


「誰かと思えばNo,4か」

「すまないな、怪我はないか」


雨雲はそっと昕霧に手を差し伸べる


「ぇ…、ぁ…、はい…」


先刻の乱暴な声とは打って変わって乙女らしい声

まるで違う


「ありがとう…、ござい…、ます」


顔を真っ赤にして手を取る昕霧


「その…、雨雲さん…」

「私こそ…、注意が足りなくて…」


本当に万屋に来ていた昕霧さんと同一人物か!?

波斗は思わずツッコミをいれそうになる

口調すら変わっているのだから当たり前だ


「何、俺の方も悪かった」

「服が汚れたが…、クリ-ニング代なら出す」

「幾らほどだ?」


「い、良いですよ!そんな!!」

「わ、私こそ雨雲さんに触れて…、その、なんて言うか…」


「?」


昕霧のボソボソとした声に首をかしげる雨雲

よく聞き取ろうと顔を近づける


「すまない、もう少し大きな声で…」


「ひゃわっ!?」


「…驚かせてしまったか」


「い、いえ…」

「えっと…、その…」


もごもごと口を濁らせる昕霧

雨雲は困った様子で、波斗へと視線を送る


「…?」


もしかして、どうにかしろと?

まぁ、確かにここで時間を食うわけにも…


「え、えっとですね、昕霧さん」


「何?」


「今からケ-キ屋に行くんですよ」

「ご一緒にどうですか?」


「ケ-キ屋?」


「はい、すぐそこの」

「美味しいって有名じゃないですか」


「どうして?誰かの誕生日なのかしら」


「楓に土産として買うのだ」

「だが、俺にはどれを選べばよいか解らない」

「女性からの目があれば嬉しいのだが」


「え、それって…」


「買い物に付き合って欲しい」


「!!!」


ボシュンッ!!


真っ赤な顔でオ-バ-ヒ-トしたかのように湯気を上げる昕霧

いや、正確にはあげてはないのだが…


「つ、付き合って欲しいだなんてそんな…」

「まだ会って間もないし、それに、それに…」


「そう言えば、会うのは3度目だな」

「初めては軍本部で、次は警察署で、そして今」

「…馴れ馴れしいとは思うが、頼めないだろうか」


「そ、そんな!むしろ私がお願いしたいぐらいって言うか…」


あぁ、そうか

と言うか、もう解ってたんだけど

昕霧さんは雨雲さんの事が好きなんだな

言動、行動を見てれば確実だろう

言葉使いも違うし、猫を被るって言うのか?

…ちょっと違うかな


「駄目ですよ、昕霧様」


「ちゃ、茶柱…」


いつの間にか背後に茶柱さん

この人は忍者か?


「数十分後には会議の予定です」

「買い物に行ってる暇なんて無いんですから」


「うぅ…」


しょんぼりと肩を落とす昕霧


「で、でもちょっとだけ!!」


「駄目です」


「ぅ-…」


「そうか、残念だ」

「またの機会にな」


「は、はい!」


暗かった昕霧の表情は一気に明るくなる

絶対に間違い無い、と波斗は自分の予想が事実であると確信した


「茶柱さん、四国から帰ってきたんですね」


「はい、いつまでも昕霧様のお側を離れるわけにはいきませんから」

「響さん、一斑さん、リンデルちゃんにも挨拶をしてきましたよ」


「一斑、どうでした?」


「いつも通りです」

「「病院は暇だ」と愚痴を言っていましたけど」


クスクスと笑う茶柱


この人も結構、美人だよな

髪型さえ変えれば完全に女性なのに

オ-ルバックじゃ男性っぽいよなぁ


「行きましょう」


「解ってるわよ!」


「それじゃ」


「当たってすまなかったな」


「いえいえ♪」


結局、昕霧さんの口調は終始女性口調だった

いつもこの口調の方が良いと思うんだけど


「あ-、蒼空君!」


「何ですか?」


昕霧さんに呼び止められた

何だろうか


昕霧は雨雲に聞こえないように呟く


(先刻のこと、織鶴に言うなよ)

(言ったらブッ殺すからな)


(昕霧さんが雨雲さんを好きな事ですか?)


(~~~~~~ッッ!!)


思わず言葉に詰まる昕霧

やっぱり、と波斗は苦笑する


(言ったら殺すからな!絶対だぞ!!)


(まぁ、努力はしますよ)


軽く愛想笑いをし、雨雲の元へと戻っていく波斗

背後からは顔を真っ赤にした昕霧の殺気


さて、調子に乗りすぎた


「殺してやる…」とかボソッと聞こえた気がしたんだけど気のせいだよね

うん、気のせい




あれ?俺、死ぬんじゃねぇの?



ケ-キ屋


まぁ、死ぬ事はなくケ-キ屋に辿り着けた

マジで怖かったけど

調子に乗り過ぎちゃ駄目だよな、うん


「何が良いと思う?」


「あぁ、はい」


興味深そうに商品棚を見つめる雨雲

女性店員は雨雲をチラチラと見つめているが


まぁ、こんなイケメンを見たらそうなるよね


「このチョコケ-キなんてどうです?」

「お手頃サイズだし、食べやすいですよ」


「ふむ」

「確かに土産だし、そんなに大きくなくても良いな」


「そのチョコケ-キ、ただいまサ-ビス中でお好きなフル-ツをトッピングできます」

「いかがですか?」


「…そうだな」

「楓は苺が好きだし、苺を頼む」


「はい!畏まりました!」


嬉しそうに店奥へと入って行く女性店員


「後は待つだけですね」


「あぁ」


雨雲は近くのイスに座る

ぼうっと辺りのケ-キ模型や人形を見渡しているようだ


波斗自身も辺りを適当に見渡す


あぁ、先刻のサ-ビス中とか言う奴の広告も…

…あれ?1週間前にサ-ビスは終わってるって書いてるけど


「お待たせしました!」


「あぁ、ありがとう」


「ど、どういたしまして…♪」


嬉しそうに微笑む女性店員


…イケメンの特権か

サ-ビスは女性店員からのささやかなアピ-ルだな


「帰ろう、蒼空」

「楓も待っている」


「は、はい!」


「あぁ、それと店員」


「はい?」


「ありがとう」

「サ-ビス、嬉しかったぞ」


「は、はい!」


女性店員の顔が仄かに紅い

この人は無意識に言ってるんだろうな



…つまりは無意識に女性を恋に落としてるってワケだ

恐ろしい…



万屋


カランカラ-ン


「待たせた」


「雨雲!」

「何処に行ってたの!?」


「そう、怒るな」

「謝罪代わりだ」


そう言って雨雲は机に土産の品を置いた

飴とケ-キを


「わぁ!」


パッ明るくなる楓ちゃん

無邪気だなぁ


「食べて良い!?」


「あぁ、鎖基と一緒にな」


「鎖基は雨雲を探しに何処かに行っちゃったよ」


「…そうか」

「その内、帰ってくるだろう」


「うん!そう思う」


「食べ過ぎるなよ」


「は-い!」


「あら?波斗も来たの」


「はい、途中で雨雲さんに会って」

「案内してきたんです」


「そう」


「そう言えば、火星さんは?」

「話が有るんですけど…」


「今は居ないわ」

「彩愛、鉄珠と任務に行ってるのよ」

「明日には帰ってくるだろうから、明日来なさい」


「はい、解りました」

「では、失礼します」


「あぁ、世話になった」


「いえいえ」


「ばいば-い!蒼空お兄ちゃん!」


「うん、バイバイ」


カランカラ-ン



大通り


そう言えば、ゆっくり帰ろうと思ってたのに

結局、暗くなったから急いで帰らなければ


…でも、悪くはなかったかな





読んでいただきありがとうございました

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