騎馬戦メンバ-
教室
ガラッ
「お早うございま-…す」
「…」
「おぉ!珍しいな」
「蒼空が遅刻か!!」
「珍しいね」
ザワザワとざわつく教室
確かに高校で遅刻したのは3回目ぐらいか
「おはよ、桜見」
「おはよう!桜見ちゃん」
「ん、お早う」
蜜柑と夕夏が挨拶をしてくれた
普通かも知れないが、実質的に私にはこの2人しか友人と呼べる人間が居ない
挨拶1つでも嬉しいのだ
「夕夏、一時限目て何だったけ」
「数Ⅰだよ~」
「ん、ありがと」
「だったら別に遅れても問題無かったわよね」
「成績良いもんね、桜見ちゃん」
「でしょ?」
森草、桜見の友人である西江 夕夏
薄い桃色が掛かった髪の毛
とろんとした目
ほんわりとした性格で、誰からも好かれている
運動神経はさほど良くないが、成績は良い
五眼衆の一件時、能力を開花させていた
しかし五眼衆事件が一段落付いたとき、能力は無滅
「残念だな~」と言っていたが、少しホッとしていたらしい
「…なぁ、夕夏」
「うん?」
「好きな男子ってさ、居る?」
「別に居ないよ~」
「…そっか」
「私は…」
「居るの!?」
「-----何でも無い」
「あら、残念」
「蜜柑みたいに蒼空LOVEじゃないからなぁ」
「ち、違うわよ!!」
コイツは蒼空が好きなのに告白しないんだよなぁ
早く踏ん張りを付ければ良いのに
「…でも、何でそんな事を聞くの?」
「え?あ-、別に…」
…確かにそうだ
何でこんな事を聞いたんだか…
「変なの」
「そ-だな」
…どうしちまったんだか
「何で遅刻したんだ?蒼空」
「考え事してたらやっちまった…」
「ほぉほぉ」
「何の?」
「…人類進化論」
「嘘付け!!」
「ハッハッハッハ」
「棒読みの笑いだねぇ…」
「あ-、そう言えばさ」
「ん?」
「蔵波の事、桜見に聞かれたんだ」
「桜見?」
「あぁ、委員長と一緒に居るアイツか」
「好きな物って何だ?って」
「そりゃ-」
「女って答えといた」
「ちょ!お前!!!」
「そうだろ?」
「そうだけども!」
「もっとオブラ-トに包めよ!!」
「世界のレディ-と言えよ!!」
「変わらないと思うんだけど」
キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン
ガラッ
「お-い、テメェ等」
「数Ⅰ授業から変更して楽しい楽しいロングホ-ムル-ムの時間だ」
教室に入ってくる鬼村
その手には数十枚の紙
大きさからして、何等かのアンケ-ト用紙だろう
「「「「「えぇ--」」」」」
一斉に上がる不満の声
別段、数Ⅰの授業が好きと言うワケではないのだが
鬼村のロングホ-ムル-ムは間違い無くダラける
空気的に苦手な者が多いのだ
「おいおい、んなロ-テンションで良いのか」
「「「「「?」」」」」
「今回は体育祭の詳細を決めんだよ」
「グダグダ言ってると無くすぞ」
「「「「「イヤッフォオオオオオオオ!!」」」」」
ロ-テンション→ハイテンション
高校最大の行事と言っても良い体育祭
九華梨高校では毎年の体育祭の意気込みがハンパではない
よって、今年初めての波斗達1年生勢も大いに楽しみにしていたのである
と言うか最早、体育祭は九華梨高校名物と言っても過言ではない
「うるせ-ぞ」
「良いか、今から決めるのは体育祭の騎馬戦のメンバ-」
「先生-!女子と組みたいで」
「とか言い出した奴はブッ殺すぞ」
「…すいませんでした」
「中3の時も却下されてたよね、蔵波」
「女子を担ぎたいって」
「アレは無謀だったと思ってるよ」
「今回は?」
「上で我慢だ!!」
「…蔵波らしいよ」
「…てな、ワケでだ」
「今から騎馬戦メンバ-を決める」
「3人、テキト-に組め」
「残り1人は解ってるな?」
「「「「「は-い」」」」」
本来、騎馬戦は生徒が4人1組でハチマキを取り合う
だが九華梨高校では生徒が3人で保護者から1人というル-ルである
クラス内での力量差を無くすための特別ル-ルだとか
「それが決まったら文化祭の出し物だ」
「まだ時間はあるから急がず決めろ」
「以上だ」
「組もうぜ!蒼空!熊谷!!」
「おぉ!良いぜ」
「うん、良いよ~」
「よっしゃ!コレで3人」
「あと1人はどうするよ?」
「どうする~?」
「どうしようか…」
「あ、あの人なんて良いんじゃない」
「ガタイも良いし」
「誰だ?」
「蒼空のアルバイト先の人」
「火ぼ…、火星さん」
「今、言いかけたよな」
「そのまま言えよ」
「大丈夫なのか?その人」
「バランスと都合的に」
「ん-、都合は解らないけど」
「そんなに身長も高くないから、大丈夫だと思うぞ」
「そうか」
「…で、誰が上に乗る?」
「それが問題だよな」
「握力も居るんじゃない?」
「相手のハチマキを取らなきゃならないんだし」
「よっし、解った」
「俺は46だ!」
「熊谷は?」
「32」
「蒼空は?」
「39」
「蔵波で決まりだな」
「結構、有るんだね」
「女子にモテる為には筋力も必要だからな!」
「結局それかい」
「…」
「…桜見?」
「へ?」
「どうしたの?」
「ボ-っとしちゃって」
「べ、別に!?」
「…そう?」
「桜見ちゃんがボ-っとするなんて珍しいね」
「蒼空君でも見てたの?」
「えっ!?」
「誰が親友の彼氏を取るもんですか」
「か、彼氏じゃないわよ!!」
「ツンデレね」
「ツンデレだねぇ」
「ち、ちがぁ-う!!」
「…でさ、あと1人はどうする?」
「私のパパとママは無理なんだ~」
「仕事なの」
「私も無理ね」
「蜜柑は?」
「…そうね」
「もしかしたら大丈夫かも」
「へぇ-、誰?」
「私の家に居る友達」
「外国人だけど大丈夫?」
「それは私に向かって言ってるのかな?」
「そ、そんな事ないわよ!?」
「解ってるわよ」
「からかってみただけ」
「もう!」
「フフフ…」
「じゃぁ、その子に頼もうよ!」
「大丈夫かな」
「多分ね」
(セントちゃんなら大丈夫よね…)
「わ-い」
「じゃ、決まりだな」
「上はどうする?」
「「桜見」ちゃん」
「一致かよ…」
「だってぇ~、一番、運動神経良いんだもん」
「その通りね」
「50m走6秒ジャストだもんね」
「走力は関係ねぇだろ!」
「握力70超えだもんね-」
「…アレは」
「「決定」だね」
「えぇ-…」
「何か問題有るの?」
「なんつ-かよ…」
「…」
「?」
「お-い、決まったか-」
「いや…」
「早く決めろよ」
「決まってるのは蔵波達のトコだけだぞ」
「…構成は?」
「下が保護者と蒼空、熊谷」
「上が蔵波だな」
「蔵波…」
「…解った、私が上に行く」
「えぇ!?何で急に!」
「女たらし野郎から他の女子を護るためだよ」
「「…なるほど」」
読んでいただきありがとうございました