表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秋鋼  作者: MTL2
86/600

桜見の思い出

職員室


「おぉ-?まさかテメェが遅れるとはなぁ」

「蒼空ァ」


「…スイマセン」


「…テメェはいつもだな」

桜見サクラミ


「ソウデスネ-」


イスに寄り掛かるように座る鬼村

その前には恐縮した波斗と森草の友人


名前は桜見サクラミ 舞桜マオ

通称、番長と呼ばれる金長髪の女子

ケンカは負け知らず

暴走族グル-プを愛刀の竹刀でなぎ倒したとか

ナンパしてきた男を蹴り一発で粉砕したとか

隣町の不良グル-プの元総長だとか

様々な噂が流れているが定かではない

顔付きと体付きは良いのでクラスでは密か人気である


「いつもと反応が違ぇなぁ」

「「うっせ馬鹿!」とか言わねぇのか」


「いい加減、飽きただけだし」

「何か文句でも?」


「調子が狂うだけだよ」

「まぁ、良いや」

「遅刻届書いて来い」


「はい…」


「へいへい」



渡り廊下


「…」


「…チッ」


(わぉ、気まずい)


待てよ

待ってくれよ神様


彼女とは確かに委員長繋がりで何度か話した事は有る

有るよ!?有るけども!!


「おい、蒼空」


「ん?」


「そこの消しゴム取ってくれ」


「あぁ、はい」


「ありがとな」


こんなモンですよ!!

こんなモンだぞ!?


今!はい、この状況!!

教室まで3分!!


無理!無理です!!

俺にこの沈黙は耐えられない!!

ここは無難に終わっても!!

後で精神的ダメ-ジが波の如く押し寄せるだろ!!

誰か沈黙を打ち破ってくれぇ----!!!


「…なぁ」

「好きな物って何だ」


誰もアンタに言ってないッッッッッッ!!!!

最悪だよ!最悪の結果だよ!!

普通の話題だけども!!

ごくごく普通の話題だけども!!

アンタが喋り始めたら悪化の一途を辿るんですけど!?


「…カレ-、かな」


「テメェじゃねぇよ」

「蔵波だ」


「…知らないけど」


「…そうか」


以上ですかッッ!?

焼け石に水じゃないか馬鹿野郎!!!

って言うか、さらに気まずくなっちまったよ!!!

何で蔵波!?

どうして蔵波!?

どうしてアイツが出てきたんだ!?

もうワケが解らないんですけどぉおおお!!!





「…」


…どうしよ

気まずい


桜見は悩んでいた


高校に入って男と話した事なんで滅多に無い


彼女は今までヤンキ-として学園生活を送ってきたのだ

男子と関わったことなど無いし、興味もなかった

だからナンパしてきた男共は一蹴してやった

男なんてクソだ

私の体目当ての馬鹿共が殆どだからだ


そう思っていた


…入学式までは



数ヶ月前


九華梨高校入学式


終了後


「…チッ」


桜見は校舎裏に居た

入学式の時、金髪を注意され退場処分になったのである


「コレは地毛だっつ-の…」


桜見の親はイギリス人と日本人

この頃、既に籍は外していたため名前は日本人である

しかし、それが原因でよく髪は染めていると勘違いされているのだ


「おい、そこの可愛子ちゃん」


「あ?」


桜見に声を掛けてきた男

大きな体と筋肉質の腕

明らかに染めた金髪と3つのピアス


「…はぁ」


慣れている

ナンパだ


「今、暇だろ?」


一蹴してやろう、こんな奴


「うっざ…」


「おっとぉ!」


ガシッ


「!!」


「危ないねぇ?」

「良いぜ!意気込みの良い女は大好きだ」


「離せ…」


「へっ!誰が離すかよ」

「入学式追い出されたって事は、どうせクズだろ?」

「暇なんだったら、遊んでやるぜ」

「今夜、ベットでゆっくりなぁ!!」


「キモっ…」


「けっけっけ!離せるんなら離してみやがれ!!」


鬱陶しい

足を捕まれたのには驚いたが、どうと言うことはない

今すぐ泡拭かせてやる…



「ドロップキィイイイッッッッッッ-----クッッ!!!」


「ごはぁっっ!?」


「!?」


3年生をドロップキックではね飛ばす男


「可愛い女子に無理矢理迫るとは笑止千万ッ!!」

「この俺、蔵波 滝水が許さねぇぜ!!」


「誰よ…、アンタ…」


…はぁ?

誰?コイツ


170㎝後半の高めの身長

少し茶色の混じった髪

低めの声

大きな背中


「世界の女子の味方!蔵波だ!!」


…言ってて恥ずかしくないのか


「ッテメェ…」

「ブッ殺してやる…」


「うぉ!?」


のそりと立ち上がる3年生

その手にはナイフ


「ちょ、ちょちょちょ!!」

「ナイフは禁止だろ-がっ!!」


「うっせぇんだよ!!」

「殺しやるっ!!」


ナイフを腰に携え、蔵波へと突進していく3年生


「まじかよ…!!」


「アンタ!逃げろ!!」


咄嗟に叫ぶ桜見


自分のせいで誰かが危険にさらされるなんて…!!


「…ふざけんな!!!」


「え?えぇ!?」


「震えてる女を残して逃げられるはずねぇだろ!馬鹿野郎ッ!!!」


震えてる?私が?


「で、でも…」


どうすんのよ…

アイツはアンタを殺す気で刺しに来てる!!

私には解る!

本気でトチ狂った野郎の目だ!!


「助太刀だよ-」


カッ


「うぉおっっ!?」


壁から覗く白い靴

3年生はそれに躓き、ゴロゴロと転げ回る


「やっほ-」


「く、熊谷ぃ!!」


「だ、誰…?」


「俺の親友!」

「助かったぜ!!」


「それよりも逃げようぜ」


「痛ぇっ…」


「来るけど」


「や、やべっ!!」

「おい!逃げるぞ!!」


「は、はぁ!?」


「早く来いって!!」


ぐいっと引っ張られた手


「あっ…」


思わず声が漏れる

今まで男子に手を握って貰った事なんか無かったから…



正門前


「…死にそうだ」


「一気に走るからだろ…、馬鹿」

「あんな無謀行為、今時じゃ誰もしないわよ」


「女子の危険には駆けつけるぜ☆」


「…あっそ」


「にしても助かったぜ!熊谷!!」


「困ったときの熊谷だよ-」


「…ふ-ん」

「アンタ、蔵波 滝水っての?」


「YES!」


「あ、あの…」

「その…」


…言えない

意識してお礼なんて…


「気にするなよ」


「え…?」


「糞野郎をぶっ飛ばしただけだ」

「無理矢理迫るんて、ナンパの風上にも置けないな」


「…っそ」


格好付けやがって…

先刻まで足がブルブル震えてやがった野郎の台詞とは思えないな


「するならば!!」


桜見の手を取る蔵波

微笑み、一言


「お嬢さん」


「!?」


「今夜、一緒にディナ-でもどうですか」


「誰が行くかッッッ!!!」


バゴンッッ!!


「ぐぁっっ!?」


「馬鹿が!!」



「…失敗した」


「蔵波って馬鹿だね」


「次こそは!!」


(諦めないんだ…)



現在


廊下



…変な事を思い出してしまった

あの時、一瞬でもカッコイイと思った私が馬鹿だったか


…あの時だけだったよな

高校に入ってからマトモに男子と話したの


「…な、なぁ!桜見」


「…何だよ」


「何で蔵波の好きな食べ物とか聞いたんだ?」


「別に」

「…てか、[好きな物]であって[好きな食べ物]じゃないんだけど」


「あ!そうか」

「それだったら知ってるぜ」


「え?何?」


「女」


「…だよね」


聞いた私が馬鹿だったか…






読んでいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ