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秋鋼  作者: MTL2
81/600

1%以下の確率

「…」


「おやおや?暗いわね」

「どうしたのかしら」


…真っ白な空間

俺の夢の中、か…


「まぁ、知ってるけど」

「一斑君、死んじゃったわねぇ」


「…うるさいよ」


ごろりと寝転ぶ波斗


「不貞寝?」

「情けないなぁ~」


「死んだんだよ」

「俺のせいで、人が…」


「ふ-ん」

「だから?」


「…だから、って何だよ」

「お前…、命を何だと…」


「じゃぁ、逆に聞くけど」

「命って、そんなに大切かしら?」


「当たり前だろ!!」


「本当に?」


「…何が言いたいんだよ」

「命は…」


「人が1人死んだ」

「それで国家が動く?」

「世界が動く?」

「貴方が死んでも同じ事」

「ちっぽけで毎日、幾億の命が生まれて死んでいく」

「男と女が交われば、幾らでも量産できるのよ?」


「そんな言い方…!!」


「事実でしょ?」

「命は大切です~、なんて道徳的な考え、ちょっと考えれば解るわ」

「意味のない、学校で先生の口先から出る妄言」

「カミサマが与えてくれた大切な命という妄言」

「意味のない、妄言よ」

「一斑君が死んでも何も変わらないわ」

「一斑君を殺した組織が滅ぶの?」

「この世の悪が滅びるの?」

「この世から争いが無くなるの?」


「そんなの…!屁理屈だ!!」


「そう、屁理屈」

「でもね、時に屁理屈が真実になるのよ?」


「…ッ!!」


「一斑君も言ってたじゃない」

「「自分にだけは[偽善者]になりたくない」って」

「そう言う事でしょ?」


「…それでも」

「俺は…、偽善者になっても…」

「俺は…!!」


「ハッキリ言ったら?」

「グチグチ言われても解らないわよ」


「…俺は!!」

「偽善でも何でも!!」

「誰かを救える人間になりたいんだ!!!」

「この[能力チカラ]が誰かの為に使えるのなら構わない!!」

「悪でも正義でも!!」

「誰かの笑顔の耐えに使いたいんだよ!!!」


「それが[偽善]だとしても?」


「当たり前だッッ!!!」


「…そう」

「じゃ、クエスチョ~ン♪」


るんるんっと指を回す女性

楽しそうに笑い、波斗を見つめる


「貴方が死ねば一斑君が助かります!」


「…え?」


「そのまんま!」

「ほら!ドラマとか映画で「彼は身代わりになって死んだんだ…」ってシ-ン、有るでしょ?」


「…あ、あぁ」


「それよ」

「君が身代わりになれば一斑君は助かるわ」


「…本当か?」


「ホントもホント♪」


「…」


「どうするかな~?」


俺が死ねば一斑は助かる

俺のせいで死んだ一斑は助かるんだ

例え、1%以下の可能性であろうとも…

その可能性があるなら、賭けたい


「…決めたよ」


「何?何?」


「俺は…」


小さく口を開けた波斗は止まった

静かに口を閉じ、目を瞑る


「…馬鹿野郎」

「繰り返しじゃないか…、それじゃ」


「?」


波斗は手を女性へと向ける


「どう言うつもり?」


「お前なら一斑を生き返えらせれるんだな?」


「そうだけど?」


「その代わりに、俺に死ねと」


「うん」


「却下」


「じゃ、一斑君は…」


「却下」


「…はぁ?」


「お前が一斑を生き返えらせれるのなら」

「お前をぶっ飛ばしてでもやらせる」


「…そんな手荒な事するの?」

「君が死ねば良いじゃん」


「そうしたら」

「一斑は俺と同じ事を考える」

「それじゃ本末転倒だ」


「…力ずくでやらせると?」


「そうだ」


「…ふふっ」


小さく笑った女性


「面白いなぁ…、やっぱり」

「蒼空 波斗」


波斗に近づいた女性はそっと波斗を抱きしめる


「!?!!?」


「可愛い子」

「面白くて可愛くて」

「私の…、大事な[希望]…」


「[希望]…?」


「今回は貸し、だから」

「ちゃんと返してね?」









「…君!!」

「蒼空君!!」


「!?」


「やっと起きたんだね…」

「そろそろ、一斑君の火葬が始まるよ」


「…俺は?」


「車の中で急に眠り初めてね」

「幾ら起こしても起きないから…」


「…すいません」


所詮は夢、か

1%以下…、か

100回中の1回にも満たない確率…

何で…、そんなのに賭けたんだろう…


「馬鹿だな…、俺」


「蒼空君?」


「いや…、何でも…」


「…最後の見納めや」


棺桶の中で手を組む一斑

まるで、眠っているかのように安らかな表情で


「…ごめんな」


プツッ


「痛っ?」


波斗の指が少しだけ切れている


「何で…」


何処かで切ったのか…?


「納棺や」


ガコン…


「始まったな…」


「…あぁ」


重々しい空気の中、一斑の棺は燃えさかる火の中へと入っていく


「…阿呆が」

「お前が…、後継がんで…」

「誰が継ぐねん…」


「(泣)」


ガタンッッ!!


「「「!?」」」


「熱ゃやたったあああああ!!!」


「い、一斑ぁ!?」


「い、入れるん中止や!!」

「早ぅ出せ!早ぅ!!」


一斉に一斑の棺桶に飛びかかる3人


「熱っ!熱い!!」


「我慢せぇ!!」

「一斉ぇ-!のでぇ----!!!」


ガタァ--ンッ!!


「ぶわっっはぁああ!!!」


棺桶を乱暴に蹴破った一斑

彼はそのまま近くのオブジェ代わりの池に飛び込む


「し、死ぬかと思うたぁ!!!」


「死んどんや!!」

「いや、生きとんか!?」


「あれ?響さんが正装しとる…」

「明日は雨やな!!」


ガハハハハと豪快に笑う一斑


「い…!一斑…!!」


「ん?蒼空?」


「お兄ちゃん!!」


ゴスッッッ!!


「うぐぉわぁっっ!?」


リンデルは一斑の腹部へとダイブする

無論、全力で


「お兄ちゃん…!お兄ちゃん…!!」

「夢じゃない…!夢じゃない…!!」


ボロボロと大粒の涙が頬を伝う


「…心配かけた、んかいな?」

「何で泣いとんや…?」


「…の」


「ん?」

「どしたんや、響さん」


「この…」

「ダァアアアアアホがぁあああああああああああ!!!」


ゴッッッッッッッッッッッ!!!

バシャァアアアアアアアアアアアアンッッ!!


響の鉄拳が一斑の顔面へと一直線に向かい、直撃

一斑はそのまま池へと叩きつけられる


「心配かけとんちゃうぞ!!」

「ゾンビか!オドレはぁ!!!」


「一斑!生き返ったのか…!!」

「良かった…!良かった…!!!」


1%以下の可能性でも…!賭けて良かった…!!


たった1%でも、小さな可能性でも…!!

望みに賭けて良かった…!!

小さな希望に賭けて…!本当に…!!!


「何で生き返ったんだ…」


呆気にとられた火星

一斑に抱きつき、ボロボロと涙を流すリンデル

泣きながら、笑いながら喜ぶ波斗

顔を真っ赤にして、怒っているようで笑っている響


1%以下の確率でも…、掛けてみるモンだな


確かに、お前の言う通りだよ

夢の中の女性


だけど、お前の言う「量産できる物」はこれほどの効果が有るんだ

先刻まで死んだ様な表情の皆が笑顔になった


…お前は「それだけ?」とでも言うかも知れない

だけど、俺には「これほど」のことなんだ

こんなにも…、大切な事なんだ






「…」


「響…、お兄ちゃん?」


「…」


「息、してない」


「「「!?」」」


「お前が全力で殴るからだろ!響!!」


「て、手加減を忘れたんや!!」

「しゃぁないやろ!!」


「い、医者ぁああ------!!!」


読んでいただきありがとうございました

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