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秋鋼  作者: MTL2
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75/600

遺跡最奥の決戦

「ぐぅっ…!!」


ガキィンッッ!!


「防戦一方じゃ話になんねぇぞッ!!」


ガァンッ!ガァンッッ!!


飛び散る血

振り抜かれる拳

狂気の笑み


(強いな…ッ!!)


「腹がガラ空きじゃねぇかぁ!!!」


ドムッッッ!!!


「ッッッァッ…!!」


「防御が落ちて来てるぜッッッ!!!」


ゴッッ!!


ゼロの拳が祭峰の顔面を捕らえ、直撃する


「中々タフだが!!」

「いつまで保つだろうなぁっっっ!!」


音速の拳


否、それを超えた光速の拳


その速さに比例するように萎れていくゼロの肌、髪、腕

90代の老人のように皮と筋肉だけに絞り込まれていく腕


「ッッッはぁ!!」


ゴンッッ!!


「うぐっ…」


「まだ生きてるのか…」


それらもゼロが攻撃を止める度に若返っていく


(…「まだ」?)

(違うだろう…、ゼロ)


弱い

攻撃が弱くなっている

確かに始撃は強い

一撃ごとに骨が折れそうだ

いや…、折れているのかも知れないな


だが、次第に弱くなっていく

最後の一撃に至っては子供のパンチ同然

効かない、効くはずがない


何故か?


奴は能力を使う度に年を取っている

最後は老人の姿だ


筋力も老人と同然だとしたら?

そりゃ効かないだろう


連撃を行わない理由がコレだ


奴の能力の発動条件は[体内時間を早めること]だと思う

攻撃を続ける奴の姿からして、恐らくそうだろう

つまり、使い続ければ体内時間が促進され過ぎて…


老衰によって死ぬ


それが奴の能力の弱点だ

故に能力の使用を一定的に止めた

そうしなければ死が待ち受けているからな


だが、体内時間を早めるのならどうして若返るのか?


奴は速度を操る能力だ

能力を使い、老人と化した体の体内時間を遅らせているのだろう

そして、その遅らせる時間を早める

そうすれば体内時間と世界の時間がズレて若返る


…よく、こんな事を思いつく物だ


「…ふぅ」


祭峰は小さく息を吐き、砕けた翁の仮面を外す


「ゼロ」


「何だ」


「もう良い」

「お前の能力は解った」


「…あ?」


「次は俺の番だな」

「付き合え」


「…上等だ」


ピリッ…


「…?」


何だ?

周囲の空気が…


ピリピリピリッ…


放電、か…?


祭峰の周囲に走る青い稲妻


[雷神ライデン]」

「稲妻ァッッッ!!!」


バチンッ


「!!!」


咄嗟に体を捻るゼロ


ゼロの背後の瓦礫は消し炭となり爆ぜる


「…雷?」


属性系、か?

馬鹿な

奴は身体強化系じゃ…


「まだまだだぞ!」


バチバチと祭峰の両手に蓄電されていく雷


「千飛輝!!」


バチィンッッ!!


「!?」


放たれる幾千の雷


「ぐっ…!!」


幾千の雷はゼロに向かってくる


頬を掠める

腕を掠める

肘を掠める

足を掠める


「どうしたぁ!?避け切れてないぞ!!」


「糞ッッッが!!」


地を踏みしめ、ゼロは祭峰へと突進する


「能力使用の突進か!!」

「それがどうした!?」


祭峰は腕を突き上げる

その腕の先に集まる雷


「天裂ィ!!」


遺跡の天へと延びる一筋の雷

まるで剣のように延びたそれは、一直線にゼロへと振り下ろされる


「左に避けるか!?右に避けるか!?」

「どちらにしろ死だッッッ!!!」


「ッッ!!」


ゼロの左右に待ち構える雷球


(先刻の[千飛輝]はこの為の仕込みか…!!)


祭峰の放った千飛輝と言う技は直接的な攻撃が目的ではない

散乱状に放たれたそれはダメ-ジなど皆無である

しかし、敵は一瞬の注意をそれに向ける

その[一瞬]さえ有れば祭峰は[天裂]を発動するための雷を集められる

本来、[天裂]を使用するために祭峰は空中に浮遊する電気物質を集める為に時間を要する

その時間が相手が攻撃する隙を生み出す

しかし、[千飛輝]で注意を逸らすのである


だが、狙いはそれだけではないのだ

[千飛輝]は囮のための捨て技ではない

それが囮であり、攻撃なのだ


「追撃型か…!!」


「その通りだ♪」


[千飛輝]は散乱する技ではない

本来は雷球型で相手を追撃する技

だが、敢えて祭峰は散乱状にして散らせた

それは敵の注意を向けるためでもあったし、時間差を生むためでもあった

それによって生まれた時間差は祭峰が[天裂]を発動させるまでの時間と

ゼロが祭峰を仕留めようと突進する時間を生む

それが祭峰の狙い


「-----ッ!!」


左右には[千飛輝]

直線上は[天裂]


祭峰の狙い通り、ゼロに逃げ場はない

左右どちらかに飛べば[千飛輝]に焼き尽くされる

後ろに下がれば[天裂]に斬り裂かれる


(どう動く!?)


祭峰がこの状態を考え出したのはゼロの能力を予想したとき

それが勝利へと繋がると予想できた瞬間の実行

幾度の戦場で死線を越えてきた戦士の頭脳と行動力


だが、その戦士の全てを持ってもゼロの次の行動が予想できないのだ


1秒とないこの瞬間でゼロはどう行動する!?

一瞬!一瞬だ!!


能力を使ったとしても光に勝る速さで動けるものか!!


さぁ!どう動く!!


No,3!!!


「甘ぇんだよ、糞野郎」


バチッ


「…は?」


超越


祭峰の思想を超越したゼロの選択


祭峰の[天裂]を素手で受け止めたのだ


馬鹿が!!

腕を捨てる気か!?


だが!

例え捨てたとしても!!!

次の一撃で仕留められるのか!?

仕留められなければ[千飛輝]の餌食だぞ!!!


バチバチバチバチッッ!!!


徐々にゼロの腕を斬り裂いていく[天裂]


決まりだ!!!

これ以上ない確信!!

俺の勝利ッッ!!


奴は全力で[天裂]を止めている!!

例え[天裂]を避けきったとしても!!

お前が左腕に力を込める前に[千飛輝]がお前を喰らう!!

神経伝達速度を超える速度で!!


「終わりだッッ!!ゼロォオオオオッッッ!!!」


「だから言ってんだろ」

「甘ぇんだよ」


バチィンッ


「…あ?」


消え去る[天裂]


「拳で握り潰した…!?」


計算外

あまりに、予想外


だがッッ!!

[千飛輝]はどう対処する!?

お前がこちら側に向いている以上!!

[千飛輝]の速度が精神伝達速度を超えている以上!!

お前は避けられない!!


パチンッ


「…?」


消えた?

[千飛輝]が…、消えた


「俺が光以上の速度で動けないと言ったか?」


「…馬鹿な」


そうか…

精神伝達速度の[速さ]までも…!

操ったのか…!!!


…待て

肉体は?


耐えられるはずがない


光を超えた速度で動いて!!

肉体が…!!!


「…自然治癒?」


「良い勘してるじゃねぇか」


細胞の治癒速度を高めた…、のか


「ははは…」


思わず笑いが溢れる

ここまでなのか、コイツは

これ程なのか、コイツは


「テメェの負けた、祭峰」

「諦めろ」


「…だよなぁ」


あぁ、馬鹿らしい

コイツに真面目に勝負を挑むのが間違いだったんだな


「真面目は駄目だよなぁ…」


「…?」


「[真面目]は」


祭峰は大きくため息をつき、だらんと手の力を抜く


ぞくり


「!!」


殺気


祭峰から放たれる殺気


「…!!」


ゼロの頬を、背筋を、腕を汗が伝う


(何だ…!?)



戦場において生き残ってきたゼロは直感する


如何なる手段を用いても

如何なる攻撃を加えても

如何なる戦法を駆使しても


死ぬ


(この男の何処にこんな-----ッ!?)


「駄目だゼ」


チュィンッ!!


「!!」


祭峰の足下に着弾する弾丸


「…どう言うつもりだ?」

「ラグド」


「アンタが本気を出すと面倒なんだゼ」

「それに、ゼロをここで殺す必要性は無いんだゼ」


「…確かにな」


「目的は未達成だが仕方ないゼ」

「ゼロが来るのは計算外だったからな、だゼ」


「…」


くるりと踵を返し、出口へと向かう祭峰


「命拾いしたな」


そう吐き捨て、祭峰とラグドと呼ばれた男は闇へと消えた





命拾い、か



どさりとその場に倒れ込むゼロ


全く持って…、その通りだよ




…畜生が



読んでいただきありがとうございました

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