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秋鋼  作者: MTL2
67/600

ケジメ

現在


「そんな話…!!」


「嘘だと思うか?」

「事実だ、紛れもない、な」

「お前の信じていた火星は仲間を見捨てる屑なんだよ」

「どんな恩人でもな」


「恩人…?」


「火星は能力者に殺され掛けてるトコを祠野さんに助けて貰ったんだよ…」


「それなのに、奴は裏切った」

「見捨てた」


「…そ、その話が事実って証拠は!!」


「本当だよ、蒼空君」


「!!」


廃工場の入り口に人影

波斗が見知った人物

夜斬が追い続けた人物


「火星ィ…!!」


「待たせたな」


「テメェが先に来るとはなぁ…」

「あの織鶴って野郎を先に来させるかと思ってたぜ」


「そんな事はしない」


「…火星さん」


「聞いたんだね、俺の過去を」

「まぁ、隠すような事でも無いけどさ」


「本当なんですか…?」


「あぁ、本当だよ」

「俺は自分の命惜しさに祠野さんを見捨て、逃げた」


「本当に…」


「幻滅するだろう?」

「お前が今まで知っていた、この男はどうだ?」

「普通か?一般的か?」

「表面上はそうだろう」

「だが…、本来の姿は見ての通りだ」

「信用も何も無い、ただの外道」

「屑だ」


「違うッ!!」


「違わないよ、蒼空君」

「俺は屑だ」


「…ッ!!」


「夜斬、どうして彩愛や鉄珠に手を出した」


「俺は苦しめる殺し方は知らないんだよ」

「だが…、肉体より精神を苦しめるやり方なら知ってる」


「…俺を苦しめるためか」


「そうだ」

「それ以外に理由は無い」


「…そうか」


「どうする?殺しに来るか?」

「無能力者の貴様が」


「…いや」


腰から銃を抜く火星


「抵抗はしない」


その銃を足下に落とす


「…人質が居るからか?」


「違う」


「…なるほどな」


ヒュンッ


「消えっ!?」


ガシャァアアアアアアアアアアアンッッッ!!


「!?」


波斗の数m隣の壁が粉砕される


「チッ…!外したわ…」


「織鶴さん!!」


「無事だったのね」

「勝手な行動…、と言いたいけど院長にメモを渡したから不問よ」


「あ、ありがとうございます…」


「背後から奇襲をかけさせる為、油断させたのか」

「城ヶ根」


「はいはい」


ダッ!!


波斗を持ち上げ、織鶴から遠ざかる城ヶ根


「…どこまで逃げ切れるかしら」


「織鶴」


「何?火星」

「サポ-トして…」


「やめろ」

「やめてくれ」


「…え?」


「手を出さないでくれ」

「これは俺の問題だ」


「はぁ?」

「さっさとコイツを…」


「俺はコイツ等を殺しに来たんじゃない」

「殺されに来たんだ」

「俺自身の過去に、ケジメを付けに来たんだ」

「だから、頼む」

「手を出さないでくれ」


「何、言ってるの?」

「そんな事…」


「頼むから」

「俺は今ここで、また逃げたら」

「一生、逃げ続ける」

「過去からも、自分からも」


「…奴等は貴方を殺そうとしてるのよ?」


「それでも、だ」


「…本気?」


「あぁ」


「どのみち、手出しはさせないけどね」


ゴリッ


波斗の頭に突きつけられる銃口

それは人質を意味している


「ッ…」


「火星、過去にケジメを付けに来た、と言ったのか?」


「そうだ」


「それは俺と戦いに来たと解釈しても良いんだな?」


「…いや、違う」


「じゃぁ、何だ?」

「先刻、行った通り殺されに来たのか」

「…いや、流石にそれは」


「そうだ」


「…ぁ?」


「俺はお前に殺されに来た」

「どんな方法でも良い」

「殺せ」


「…気でも狂ったか?」


「狂ってるさ」

「あの日から、ずっと」


「…そうだな」


ゴキンッッ!!!


振り抜かれる拳

大きく揺れる火星の体


「どうした」

「ケジメをつけるんだろう?」


「…」


ドカッッ!バキッッ!!


「どうした!?ケジメをつけるんだろうがッッ!!!」


抵抗せず

言葉を発さず

表情を変えず


ただただ、夜斬に殴られ続ける火星


「…んだよ」

「何なんだよ!!」


ゴキンッッ!!


「ぐっ…」


「…っは!やっと表情変えやがった!!」

「もっとグチャグチャの表情になりやがれっっ!!」


ゴスッッ!ベキッ!!


呼応するかのように鳴り響く殴打音

一撃一撃の度に飛び散る鮮血


「火星さん…!!」


「火星ッ…」


「…」


ドゴッ!!


「はぁ…、はぁ…」


「…どうした、夜斬」

「俺を殺すんだろ」


「うるせぇよ…」

「んだよ…、何で抵抗しねぇんだよ…」


「ケジメだからだ」


「ッッ…!!」

「馬鹿の1つ覚えみたいにケジメケジメうるせぇんだよ!!」

「テメェの死ぬことだ!!!」


ドゴッッッ!!


「ぐっ…」


「良いぜ!もっと表情を歪ませろ!!」


「…すまなかった」


…は?

何だ、何を言った?


「俺のために…、お前達を苦しませた」

「すまなかった」


謝った…、のか?

どうして?

誰に?


「…ぁあ」

「あああああああああああああ!!!!!」


ゴガンッッッ!!


「がっっ…!!」


地面に叩きつけられる火星


「ふっざけんなよ!!!」

「何だよ!テメェはよぉ!!!」


ドガッ!ドガッ!!


夜斬は叫び、火星を踏みつけ続ける


「ぐぅっ…!!」


「はぁ…!はぁ…!!」


「何で…!!」

「何で!!!」


「すまなかった」


「謝るんじゃねぇよッッ!!」

「テメェが…!謝るんじゃねぇよ…!!」


ゴリッ…


踏みにじられる火星の頭

夜斬の手に握られる銃


「テメェが…!!」


銃はカタカタと小刻みに震える


「火星------ッ!!!」


「…すまなかったな、夜斬」


「…ッ」



暗い西の廃工場

その静寂を撃ち破るかのように

一発の銃声が響いた






読んでいただきありがとうございました

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