呼び出し
商店街
「あ-、最悪だ…」
「国語がヤバいかも…」
だらだらと歩く波斗
結局、男子生徒連合軍の計画はアッサリ失敗したため、国語は悲惨な事になったのだ
「てか、鬼村のヤロ-…」
「ムズ過ぎなんだよ!全く…」
「おいおい、大丈夫かよ…」
「どうなってるのかしらねぇ…」
「ん?」
商店街の人だかり
野次馬か何かか?
「どうしたんですか?」
「何だか、あのお店で事件が有ったらしいのよ」
「外れの方だけど、商店街のお店じゃない?心配でねぇ…」
「外れの…?」
「もしかして!万屋ですか!?」
「え、えぇ、そうよ」
「あの綺麗な女の人が主人をしている…」
「…あぁ」
「そうでしたか…」
どうせ、織鶴さんが火星さんに何か投げたのが外に出たんだろう
ガラスとか突き破って
「退いて退いて!!」
「救急車…?」
…おいおい、やり過ぎじゃないのか?
何事…
「…」
「あ…」
「彩愛…、さん?」
「彩愛さんッッ!!!」
「…」
返事がない
何だ!?どうなってるんだ!!
「ぐ…う」
「鉄珠さんも…!!!」
「鉄珠さん!!」
「あ…おぞ…らか…」
「悪ぃ…、やら…れ…」
「鉄珠さん!鉄珠さん!!」
「君!彼等の知り合いかね!?」
「そ、そうです!!!」
「乗りなさい!」
「病院へ向かおう!!」
「は、はい…!!」
病院
待合室
ファイルに纏めた資料を見る院長
そしてイスに座っている波斗
「どうして…」
「警察官が発見したんだ」
「店から妙な音がすると連絡が有ったらしくてね」
「で、見に行ったら…」
「彩愛さんと鉄珠さんが…」
「…そういう事だ」
「君と彼等の関係は?」
「仕事の先輩で…」
「そうか」
「今、私が診察したんだが…」
「…状態は極めて深刻だ」
「!!」
「内部破損、出血多量」
「骨も剔られてる」
「特に…、彩愛さんが酷い」
「助かるんですか…?」
「…尽力はするが」
「生存率は…、極めて低いね」
「…ッ」
「親族の方に連絡してくれないかね」
「覚悟は…、しておいた方が良い」
prrrrr
『もしもし?波斗?』
『どうしたのよ、急に』
「織鶴さん…」
『…何が有ったの?話なさい』
「彩愛さんと鉄珠さんが…」
『…』
「容態は深刻だそうです…」
『そう、解ったわ』
『今すぐ向かうから、そこに居なさい』
「はい…」
ガチャンッ
数十分後
「お待たせ」
「織鶴さん!」
「蒼空君!2人の容態は!?」
「…」
悲しそうに目を伏せる波斗
3人の目の前には大量のチュ-ブに繋がれ、機械に囲まれて眠る彩愛と鉄珠
「彩愛…!鉄珠…!!」
「…」
織鶴はただ、2人を無言で見つめている
「あぁ、来てたのか」
「院長さん…」
「警察から新しい情報が届いたんでな」
「報告に来た」
「…その情報を教えなさい」
「鉄珠が運ばれるときに「城ヶ根」と呟いていたらしい」
「何の事だが解るか?」
「い、いえ…、全く」
ぞくり
波斗の背中を悪寒が駆け抜ける
殺意だ
酷くおぞましい殺意
「お…、織鶴さん…?」
振り返った波斗の目に入ったのは織鶴ではない
火星だった
「…」
ギリギリと奥歯を噛み締め、拳には血管が浮き出ている
その表情は今まで波斗が見てきた優しい表情ではない
鬼のような、阿修羅のような表情
怒りで我を忘れているかのような表情
殺意に満ちた表情
「火星さん…?」
「落ち着きなさい、火星」
「…あぁ」
返事こそしているが、表情は変わらない
「…織鶴」
「何?」
「少し出てくる」
「駄目よ」
「頼む」
「駄目ったら駄目」
「今回ばかりはお前の命令でも聞けそうにない」
「…駄目よ」
「頼む」
「駄目って言ってるでしょうが!!」
「頼む!!!」
「…何故?」
「どうして、そこまで拘るのかしら」
「お前なら知ってるだろ…」
「俺の過去を」
「…ッ」
「そう、そういう事ね」
(火星さんの…、過去?)
「頼む」
「…解ったわ」
「波斗、貴方はここに居なさい」
「2人を見てて」
「は、はい!」
「火星、行くわよ」
「あぁ、解ってる」
「お、おい!2人とも!!」
バタンッッ!!!
「…行っちまったよ」
「ですね…」
「ご迷惑をおかけします…」
「君が謝ることは無いだろう」
「…まぁ、奴等らしいけどね」
ヴ-ヴ-
「あ、電話…」
「向こうの休憩室ならOKだからね」
「と言うか、普通は電源を切ろうね」
「す、すいません…」
「彼等は俺が見てるから行ってきなさい」
「は、はい」
休憩室
ガチャッ
「誰からだ…?」
携帯には[彩愛 真無]と表示されている
(警察の人か…?)
「もしもし?」
『…』
「…もしもし?」
『蒼空 波斗か』
「…誰です?」
電話口からは聞いた事の無い声
『名乗る必要は無い』
『良いか、今から西の廃工場に来い』
『貴様1人で、だ』
『仲間に知らせればどうなるか…、解るな?』
「アンタが彩愛さんと鉄珠さんをやったのか?」
『厳密には違うがな』
『そうだ』
『今は女の携帯から電話を掛けている』
「…そうか」
「それだけ解れば充分だ」
プツッ
「…」
待合室
「お帰り」
「早いね」
「すいません、暫く彩愛さん達を見ててください」
「君は?」
「少し出かけます」
「3時間経って連絡がなかったら織鶴さん達にこの紙を渡してください」
「お、おぉ…」
「失礼します」
バタンッ
「どうしたんだ…?」
読んでいただきありがとうございました