物質変化?
「そこの研究員、ガラスの破片を寄越せ」
「は、はい」
拳大のガラスの破片をゼロに手渡す研究員
「蒼空、コレに能力を使え」
「でも…」
「いざとなったら俺が抑える」
「やれ」
「は、はい…」
バチィイイイイイン!!
辺りに響く落雷の様な音
研究員達は目を瞑ったり耳を塞いだりしているが、ゼロは全く動じずに蒼空を見つめている
「…ふぅ」
ペキペキ…
まるでガラスの様に丸棒になる強化ガラス
「…驚いたな」
「あれ?先刻は溶けたのに…」
(形式はランダムか…)
「何事ですか、コレは」
「布瀬川、どう思う?」
「はい?」
「このガキの能力だ」
「新入りですか?」
「珍しい能力を…」
「内部分解か、外部分解か」
「どちらにせよ、このガラスと機械を溶かすのは不可能ですよ」
「貴方なら叩き壊せるでしょうがね」
「No以外の連中でここまで出来るのは織鶴と白月ぐらいだろう」
「このガキはそれをいとも簡単に…」
「ガラス代は織鶴さんに請求しますか」
「何でテメェはそこまで冷静なんだよ」
「もしかしたら、このガキは7人目のNoになるかも知れねぇぞ?」
「7人目ですか…」
「それを認定するのは総督ですよ」
「俺はなると思うぜ」
「別に私に関係することじゃない」
パンッ
「はい、そこまで」
眼鏡をかけ、黄褐色の髪色と紫の目を持った女性が手を強く叩く
「…来たか」
「総督さんよ」
「蜂土、機械は修正するからゼロの検査を進めなさい」
「解りました」
「新入りの…、名前は何だったかしら?白月」
「蒼空 波斗」
「織鶴さんの万屋、秋鋼の新入りです」
「そう…、面白い子を見つけたわね」
「蒼空君は私の部屋に来なさい」
「は、はい」
「白月はこの残骸を片付けて」
「じゃ、皆は研究を続けなさい」
「「「「「はい!総督閣下!!」」」」」
「おいおい、ちょっと待てよ」
「何かしら?ゼロ」
「俺も付き合わせろよ、蒼空の話に」
「貴方は検査が有るでしょう?」
「後で良いだろ、後で」
「俺はそのガキに興味が有る」
「…解ったわ」
「序でに切符も再発行してあげるわよ」
「お!ラッキ-♪」
45F総督室
「…」
「あんまりキョロキョロするんじゃねぇよ、蒼空」
「え…?」
「見たら不味いモンも多いって事だ」
「不容易に探索して消された奴も多い」
「…!」
「別にそれを悪用しなければ消そうとなんかしないわ」
「世の中には馬鹿が多いからねぇ」
「そうですか…」
「あっと、自己紹介がまだだったわね」
「私は軍最高責任者、布瀬川 蜂木」
「よろしくね」
「よ、よろしくお願いします」
「ちなみに、先刻俺を検査してた奴がコイツの弟」
「布瀬川 蜂土だ」
「ご姉弟なんですね」
「私には勿体ない出来た弟よ~」
「研究なんて全部任せてるぐらいだし」
「凄い方なんですね」
「全くねぇ~」
クスクスと笑う総督
(朗らかな人だな…)
「で、だ」
「蒼空の能力についてテメェなら何か解るだろ」
「総督さんよ?」
「ん-、見た所なんだけどね」
「物質変化に近いんじゃないかしら」
「物質変化?」
「そうよ」
「形を変えてるの」
「…形を?」
「変えたら溶けたり砂になったりするのか」
「ちょっと違うね」
「その原子の形を変えるの」
「…はぁ?」
「例えば…、そこの紙、取ってくれる?」
「あ、はい」
紙を総督に手渡す波斗
「この紙で箱を作るとするわ」
「おう」
カサカサ
「こんな感じにね」
「で?」
「こう」
グシャッ!
総督が紙の箱を思い切り握り潰す
「コレじゃ元の形を変えただけに過ぎないわ」
「蒼空君、ハサミ」
「どうぞ」
「ありがと」
「で-…」
チョキチョキッ
箱が縦横無尽に斬り裂かれていく
「はい、コレをグシャグシャに丸めます、と」
細切りになった紙切れがグシャグシャに丸め込まれ1つの塊と化す
「…そういう事か」
「?」
「何で肝心のテメェが解ってねぇんだよ」
「つまりだな、箱は幾ら潰しても「元は箱の形」にしかならねぇ」
「だが、テメェの能力を使えば「箱から全く別の形」になるってワケだ」
「…何か役に立つでしょうか」
「アレだろ」
「こう…、アレだ」
「…アレだろ」
「思い付かないなら言うんじゃないわよ…」
「戦闘に置いては、結構役に立つわよ?」
「地面を変化させたりとか…?」
「まぁ、それは防御かしらね」
「使うのは相手」
「その能力は恐らくだけど無差別に使えるはずよ」
「…人に?」
「そうなるわね」
「人体を変形させて痛みが伴うかどうかは解らないけど、少なからず動きは封じられるわ」
「…」
「そんな露骨に嫌な顔しないでよね」
「説明してる私も嫌なんだから」
「ですよね…」
「骨だけ変化させれりゃ-、血肉は裂けるだろ?」
「いや、部分変化も難しいか…」
「ゼロさんは平気なんですね…」
「こちとら傭兵なんでね」
「んなモン、飽きるぐらい見てる」
「そうですか…」
「…忘れてたんだが」
「コイツ、No入りしねぇの?」
「No入り?」
「何の冗談かしら」
「無理か?あの強化ガラスと測定器をぶっ壊せるんだぞ?」
「能力も応用が利くだろうし、Noぐらいには…」
「能力自体は希少だけど、経験も無いしね」
「軍の最高戦力になるには早いわよ」
「チッ、そうか」
「折角7人目が出来るかと思ったのにな-」
「って事は6人居るんですか?」
「まぁな」
「No,1とNo,2は滅多に見ねぇが、No,4とNo,6はよく見るぜ」
「貴方は傭兵だからNo,6とは縁が深いわよねぇ」
「あんまり好きじゃねぇんだよな-、アイツ」
「何か中華料理進めてくるし」
(個性的なんだなぁ…)
「…あれ?No,5の方は?」
「…」
「…」
急に静まる2人
(不味い事聞いちゃったかな…)
「…後任は決まったんだよな?」
「数年前にね」
「ノア・ゼルディギスにしたわ」
「ノアのオッサンか」
「適任じゃねぇの?」
「そうでしょ」
「同じ属性使いだし…、戦闘力も申し分ないワケだし」
「後任としては充分よ」
「後任…?」
「…説明しといてやろうか」
「テメェにも全く関係の無い事じゃねぇしな」
「お願い…、します」
「元No,5は天之川 夜空っつ-奴だったんだ」
「雷属性使い最強とさえ言われてた奴だった」
「任務も完遂できるし強いし、俺もいつかは戦ってやりたいと思ってたんだが…」
「突然だったわ」
「ある日、突然…、彼は軍の抜けたの」
「軍を?」
「彼は…、軍の主要施設を破壊して廻ったわ」
「他のNoも尽力したけど彼を捕まえる事は出来なかった」
「そうして彼は…、軍の最高ランクの指名手配班になったのよ」
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