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秋鋼  作者: MTL2
58/600

始末

アパ-ト


蒼空の部屋


「っっだぁ----!」


ベットに前の理に倒れ込む波斗


「疲れた…」


あの後、万屋に戻って織鶴に任務の結果を報告した面々

織鶴は「ご苦労様」と言って雨雲さんと鎖基さんに大きな封筒を渡していた

恐らく、報酬だろう

…火星さんのはヤケに小さかったが


馬常さんは軍に復帰できたのだろうか

あの任務を成功させたのだから、問題は無いと思う


…しかし、心残りがある


あの後、軍が来牢と言う人を捕縛しようとしたら、暴れ出したらしい

結果的に来牢は身を張ってクロアゲハのトップである黒襟と副隊長の茂埜辺を逃がしたらしい

…来牢はその場で射殺されたらしい

どうして身を張って助けたのかは解らない

だが、仲間を思っての事だろうか


茂埜辺の言葉が忘れられない


『覚悟を決めるべきだ』

『軍に入った以上、ね』


確かにその通りだ

いつまでも「殺したくない」だとか「怖い」とか言ってられない

今回の一件でさらに自覚した


自分は[殺し合い]の仕事に就いているのだ、と


「殺さなければ殺される」

命を軽く見て言い訳ではないのだろうが、重く見過ぎても行けない

難しい感覚だ


織鶴さんやゼロさん、雨雲さん達は何を思って人を殺すのだろうか?

到底、俺には解らないだろうが…



コンコンッ


「はい?」


誰かが波斗の部屋の扉をノックする


ガチャッ


「あ、委員長」


「こんばんは」

「はい、コレ」


「?」


森草の手に握られていたのはビニ-ル袋で包まれているノ-ト


「何?コレ」


「その…、暫く学校に来てなかったでしょ?」

「だから…、その、ね?」


「あぁ!授業要点を纏めたノ-ト!?」


「そ、そう!」


「助かるよ!委員長!!」


「ど、どういたしまして…♪」


「良かったら上がってく?」


「え」


「どうかした?」


「い、いえ、何でも…」


「御茶でも用意するからさ」

「大したモンも無いけど」


部屋の中に入っていく波斗

一方、森草の脳内はパンク寸前だった


え?部屋に上がれ、って…

年頃の男女にそんな事言う!?普通!!

言わないわよ!絶対!!


「委員長ぉ-?」


「い、今行くわ!」


急いで靴を脱ぎ、バタバタと慌ただしく部屋へと入っていく


「…」


そのまま机の前へと座り込み、俯く


「御茶入れるから待っててね-」


「うん…」


どうしよう

さて、どうしよう!?


つい数ヶ月前までは話すら滅多にしない仲だったのに!

今では部屋に上がり込むまでの仲…


…私の家にも上がり込んだわよね?

互いの家に入るってカップルみたい…


って!そんな事ないないないないない!!!

絶対!!ない!!!!


「委員長?」


「ふぇっ!?」


「ボ-っとしてるから」

「どうぞ」


「ありがと…」


置かれた御茶をちびりちびりと飲む


「…」


「…」


無言


(気まずい…)

「ど、どうして学校を休んでたの!?」


「万屋の仕事」

「クロアゲハって言う組織のトコにね…」

「…って言って良いのかな、コレ」


「い、良いんじゃない?」

「私だって一応は軍の一員だし」


「そっか、ゼロさんの直轄の部下だし」


「あ!そう言えば!!」


「?」


「聞いて!蒼空!!」

「この前、ゼロさんったら家に外国人の女の子連れてきたの!!」

「私達と同い年の!深夜に!!」


「え…、マズくない?それ」


「だから、私とその子でブチのめしたわ」


(本当にやったんだろうなぁ…)

「その人って?」


「セント・和鹿島さん」

「セントさんで良いらしいわ」


「へぇ、今度挨拶に行こうかな」


「…言っとくけど」

「五眼衆のボスの娘さんよ」


「!」


「彼女自身はゼロさんに言われて考えを改めてるから、言う程は気を使わなくて良いけど…」

「言葉は選んでよね?」


「う、うん」


「…お腹、怪我したの?」


「そうなんだ…」

「…だけど、ほぼ治りかけてる」


「浅い傷だったのね」


「…いや、結構深かった」


「…?」


「治るのが異常に早いんだ…」

「織鶴さんに聞いても「解らない」らしいし…」


「…明日は学校も休みだし軍の病院に行ってみたら?」

「何か解るかも知れないわよ」


「そうする…」


「…じゃぁ、そろそろ帰るわね」


「うん、ノ-トありがと」


「どういたしまして」


「…委員長!」


「何?」


「気をつけて帰れよ?」


にっこりと微笑む波斗


「う、うん…」


その後、森草が真っ赤な顔を押さえながら帰ったのは言うまでもない



路地裏


「げほっ…!げほっ…」


「大丈夫ですか?黒襟様」


「うるさいわよ…」


「お-、ボロボロじゃん」

「2人揃って大丈夫?」


「お前はっ…!!」

「祭峰…!!!」


「ご苦労さん、ご苦労さん」

「どうだった?手応えは」


「冗談じゃないわよ…!!」

「クロアゲハは壊滅ッ!話と違うわ!!」


「話?俺は「軍の連中を引きつけてくれ」って言っただけだけどなぁ?」

「フランスにはNo,3が来たぜ?」

「折角の計画が台無しだ」

「急いで帰ってきたってのによ」


「だけど!連中は引きつけたわ!!」

「雨雲と馬常が…!!」


「Noを1人も引きつけてないのに…」

「よく言えたモンだな」


「それはっ…!!」


「よって取引は無し!」

「無効で-す」


「そんな!私達はこれだけの犠牲を払ったのに…!!」


「だから?」

「やるんだったら軍本部に突っ込むぐらいやれよ」


「まさか…!初めから利用して捨てるつもりで…!?」


「ご名答♪」


「貴様ッッ…!!」

「茂埜辺!コイツを殺して!!!」

「茂埜辺っっ!!」


「あ、もう良いよ」

「三文芝居は」


「え…」


茂埜辺は黒襟の肩から手を外し、祭峰の元へと歩いて行く

それに連れ、黒襟は支えを失い尻餅をつく


「きゃっ!!」


「…」


「お疲れ様~」

「どうだった?クロアゲハは」


「…まぁ、普通だな」

「来牢と戦闘部隊は使えたが…、コイツは駄目だ」


「茂埜辺…?」


「コイツはそんな面倒臭ぇ名前じゃないぜ?」

「本名は橋唐ハシカラ 兎氏トウジ

「俺の仲間♪」


「それじゃぁ…?」


「3年間、スパイとして潜ってて貰いました~♪」


「給料は弾めよ?」


「勿論♪」


「3年間…?ずっと…?」

「私を騙してたの…?」


「そうだ」


「ずっと…?」


「そうだと言っている」


「…けるな」

「ふざけるなぁあああああああ!!!」


騙されるという行為を黒襟の高いプライドが許すはずが無い

無論、橋唐を殺しに掛かる


「予め、マ-クを付けた物質を指定した場所に送る能力…」

「能力に恵まれようとも、才能には恵まれなかったな」


橋唐が手を上空に突き上げ、能力を発動する


「…嘘」


黒襟の能力によって移動してきた鉄骨や木材は全て空中で止まり、停空する


「普段は抑えていたんだがな…」

「もう抑える必要もないだろう?」

「黒襟[様]?」


ひたりと冷たい手が黒襟の顔に触れる


「ま…、待って!!!」

「何でもする!何でもするから!!」

「殺さないで!お願い!!」


「…今更か」

「貴様のために働いてきたクロアゲハのメンバ-を駒同然に扱っておいて…」


「お願い!命だけはぁ!!」


「…死ね」


「まぁ、待てって」


「…何故だ?祭峰」

「殺すべきだ、こんなゴミは」


「落ち着け落ち着け」

「「命だけは」って言ってるじゃん」


「…そうだな」


くるりと踵を返し、立ち去っていく祭峰と橋唐


(た、助かった…?)


ぶつり


肉を斬り裂いたかのような生々しい音


「ひっ!?」


思わず声が出てしまう


…が、痛みは感じない


(気のせい…?)


辺りを見回す黒襟


立ち去っていく2人以外には何も無い


何だ?今の音は

気のせいか


「…あれ?」


気が付けば視線が低い

2人の足しか見えない


「どうして…?」


倒れてしまったのか?

情けない…!この私が…!!

あの2人のせいで…!!

殺してやる!いつか絶対に!!

殺してやる!!!


「…知ってるか」

「魚を達人が捌くと魚は捌かれた事にすら気付かないそうだ」

「今の貴様のように」


ゴトンッ


「あれ?」


立ち上がれない

足がない

手がない


横に落ちているのは何だ?


見覚えのある手

綺麗な綺麗な手


見覚えのある足

綺麗な綺麗な足


「わだじの…」


あの音の正体は

私の手足が千切れる音…?


「お望通りだろう?」


「命だけは助けてやるよ?」

「一瞬だけなぁ!!」


ゲラゲラと笑いながら立ち去る2人

残ったのはバラバラに切断された死体のみ

その目は怨恨に満ちていたと言う


読んでいただきありがとうございました

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