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秋鋼  作者: MTL2
56/600

一瞬の勝負

勝負は一瞬


茂埜辺の攻撃が先か


波斗の攻撃が先か


(当たれば…!)


(勝つ!!)



5m


3m


1m


徐々に、徐々に

2人の間が縮まっていく


「ハッ!!」


ドンッッ!!


まるで砲弾が大砲から発射されるような加速

茂埜辺は脚に風を纏い、タ-ボのように加速したのである


「!?」


経験豊富な雨雲や火星なら兎も角、戦闘を始めて間もない波斗には反応できない


ドッッッ


波斗の腹部に直撃する茂埜辺の拳


「かっ…!!」


…あれ?


威力がない

もっと凄いのかと思ったのだが


(…行ける!!)


拳を握りしめ、茂埜辺の顔面へと向かって突く


ギュルッ


「え?」


気が付けば


見えるのは茂埜辺の足


ドタァッッン!!


「あがっ…!!」


背負い投げされたかのような感覚

腹部には感じたことの無いような痛み


「風を渦状にし、拳に纏って腹部に直撃させる」

「そうすると相手は風の方向に沿って回転する」


(だからか…!!)


「終わりですよ」


茂埜辺の手には先刻とは比べものにならない風

確実にトドメを刺しに来ている


「油断したろ…、アンタ」


バチィイイインッ!!


「ッッ…!!」


茂埜辺の右腕と左足を貫く石柱


「しまっ…!!」


「お返しだっっっ!!」


ゴキンッッ!!


波斗の蹴りが茂埜辺の顎へと直撃する


「ぉっ…」


「ッッッッッおらぁあああああ!!」


ここぞとばかりに茂埜辺の全身に蹴りや拳をラッシュする

ドカッ!バキッ!と堅い感触が足に、拳に走る


「ぐっ…」


ふらりと揺れる茂埜辺


「これで終わりだぁああああああ!!!」


バキンッッ!!!


茂埜辺が木琴を割るような音と共に崩れ落ちていく

どさりと、重々しく


「はぁっ…!はぁっ…」


こんなにも俺は汗をかいていたのか


汗を拭おうと額に手を当てようとするが…

ゆっくりと手を元の位置に戻す


「ぐ…」


まだ生きている

茂埜辺という男は


「…」


殺すべきなのだろう

この男は敵だ

自分も殺され掛けた


『覚悟を決めるべきだ』

『軍に入った以上、ね』


この男自身が言った言葉


今だろう

覚悟を決めるのは


「…すいません」


ただ、一言呟く


そして、波斗の落雷のような能力発動音が響いた



13階


「うむ!!」


大きく頷き、手を組む男が1人


「あ、終わったんだ…」


「無事だったか!」


下の階から上がってくる2人の男


「おぉ!火星と芭蕉バショウも無事だったか!!」


馬常バジョウだって…」

「どうなの?強かった?」


「噂の事だけは有るな!!」

「流石の俺も能力を発動してしまったぞ!!」


「今も発動してるじゃん…」


炎々と燃えさかる鎖基の拳


「あ-、馬常」

「アレは違うんだ」


「どういう事?火星…」


「アレは拳に特殊性の布で染み込ませた油を発火させてるだけなんだよ」

「本来はかなりの熱さで扱える様なモンじゃないんだけど、アイツは…」


「気合いだッッッッ!!!」


「って事だから」


「そうなんだ…」

「じゃぁ、能力って何なの?」


「コイツは熱源を捕らえる目を持ってる」

「それが能力なんだ」


「熱源…?」


「サ-モグラフィって知ってるか?」

「アレと同じだ」


「なるほどね…」

「じゃぁ、この暗闇じゃ逆に有利なんだ…」


「その通りだ!!」


「発動条件は…?」


「そこまでは教えられんな!!」

「ハッハッハッハ!!」


「テンション高いね…」


「いつもの事だから」


「それより!蒼空が心配だ!!」

「急ごうではないか!!」


「そうだな…」

「行こう、馬常」


「うん…」



14階


「コレは…」


部屋には壁にもたれ掛かった波斗

そして大の字で倒れている茂埜辺


「蒼空君!」


「火星さん…?」

「火星さん!」


「無事かい!?」


「どうにか…」


波斗は「あはは」と苦笑する


「腹が…」


「大丈夫です、見た目より深くありませんから」


「そうか…」

「…アイツは?」


「敵です」


「…倒したんだね」


「…はい」


「本当に倒しただね…」

「殺してないじゃん…」


「!?」


「流石に殺せませんでした…」


「手足が拘束してあるぞ!!」

「地面から生えているように…?凄いな!!」


「俺の能力ですから…」


「ん-…、火星は蒼空君を見守っててね」

「俺と鎖基は雨雲の援護に行くから…」


「やめておけ!!」


「え…?」


「行くだけ無駄だぞ!」

「むしろ邪魔になるから待っていた方が良いな!!」


「そうなの…?」

「強い無能力者とは聞いてるけど…、それだけだよ?」

「軍でも数回しか有ったことないし…」


「安心しろ!」

「間違い無く、だ!!」


妙に自信たっぷりに言い張る鎖基

仕方もないので、3人は信じることにした



15階


「…ッ」


黒襟は絶句していた


「どうした」


ギャリッと地面に擦れる刀


「その程度か」


「…黙れぇッッッッ!!!」


雨雲の頭上に数百本のナイフ


「いい加減、芸のない奴だ」


雨雲が静かに刀を振る


「またっ…!!」


凄まじい風が巻き起こり、吹き飛ぶナイフ

カランカランと地面に落ちていく


「本当に…!無能力者…!?」


「当たり前だろう」

「能力など、無い」


「-----ッ!」


プライドの高い黒襟にとって敗北は屈辱だ

死より屈辱


「お前などに!!」


シュンッ


「…またか」


雨雲の頭上には鉄筋やナイフ

常人に落ちれば、即死は確実である


常人に落ちれば、の話だが


小さく息をつき、刀を鞘に収める


「---時雨」


ピンッと鍔を親指で弾く


カンッ


小さな音

金属と金属を少しだけ叩き合わせたような


それだけで


雨雲の頭上には塵だけとなった


「化け物…!!」


自然と黒襟の口から漏れる言葉


しかし、織り込み済みだ


ガチャンッ!!


「死ねぇ-------ッ!!」


黒襟の両手に握られた2丁の拳銃


ドンッ!ドンッ!!


ほんの数メ-トルでの射撃


(避けられるはずがない!!)


ドンッ!ドンッ!!


一回目は避けられた


しかし、2回目は直撃した


「むっ…!!」


雨雲表情が歪む


(…あはは)

「ははっははっははっははっははは!!!」


狂ったように銃を乱射する黒襟


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇ----!!!」


一撃事に揺れる雨雲の体


「あははっはっはあははははははっはは!!!!」


ドンッッ…


最後の一発を撃ち終わり、荒く呼吸する


「…ははっ」


所詮は無能力者

私に敵うはずが無い


---しかし、惜しかったわね

ここまで美しいのなら、命乞いさせて生かしていた方が…


「…さて」

「どうする?」


「え?」


カランカランッ


床に落ちる銃数発の弾丸


「流石に直撃したぞ」

「柄で防がなければ…、危なかった」


「そんな…!?」


この距離で当たらない!?

本当に----


「化け…物…!!!」





読んでいただきありがとうございました

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