各階の激戦
14階
「…誰も居ないか」
「そうでも無いさ」
パァンッ!
「!!」
雨雲の頬を銃弾が擦る
「…速いな」
「行かせはせんぞ…!!」
「…ここは任せた、蒼空」
「出来るな?」
「…やれる限りですけど」
「良し」
ダッ
「待て!!」
「行かせませんよ」
「貴様…ッ!!」
「…出来れば穏便に」
「退け…!!」
「…無理だよな」
15階
「…最上階か」
「来たわね」
「黒襟 数珠」
「貴様を抑えれば、残りは…」
「戦意を喪失するとでも?」
「茂埜辺が居れば大丈夫なのよね」
「アイツなら残りの駒共を操れるわ」
「…ほう」
「まぁ、そんな必要ないけど」
「私が貴方に負けるなんて有り得ないし」
「確かに俺もお前に勝てる絶対の自信は無いが…」
「負ける気もしないな」
「言うじゃない…、このモヤシ」
「[モヤシ]か?そんな表現をされたのは初めてだ」
「あら、そう?」
ヒュンッ
「じゃぁ、千切ってみようかしら」
雨雲の頭上に現れた数十本のナイフ
「む…」
カキィンッ!
雨雲はそれを全て刀で弾き飛ばす
「空間移動か…」
「その通りよ」
「最強の能力と最高の美貌…」
「どうかしら?私の[モノ]にならない?」
「貴方ほど美しければ私の側に居ることを許すわ」
「副隊長は茂埜辺だから…、執事なんてどう?」
「遠慮しておこう」
「無能の側に居ても良い事など無いな」
「無能…?」
「フフフ…、解ったわ」
「貴方は燻製にして、この部屋のオブジェにしてあげる」
「…それも遠慮しておこう」
13階
「ぬらぁああああああああ!!」
ドォンッ!
「げはっっ!」
「くそ!!」
「おい!先走るな!!」
「轟炎拳!!!」
ゴンッ!と合拳し、鎖基の拳に炎が宿る
「むんっっっ!!」
ゴッッッッッッ!!!
「おげぇ…」
(属性系…!能力者…!!)
ボッッ!
「おい!炎が!!」
「熱ぅううあああああああ!!」
ゴロゴロと転げ回り、服を燃やし肉を焦がす戦闘兵
「あぁ…!!」
そして燃え尽きる
「…ッ!」
「あの拳には触れるな!遠距離戦だ!!」
「「「は、はい!!」」」
「撃て!接近されたら厄介だ!!」
ドドドドドドド!!
闇夜に響く銃声
何発もの鉛玉が鎖基に向かう
(この暗闇ならば銃弾は確認できまい…!!)
「甘いッ!!!」
ダンッ!!
宙へと跳び上がる鎖基
(計算通りなんだよ!!!)
鎖基を狙う1人の男
(空中なら身動き取れねぇだろ…!!)
(その上!この暗闇なら俺の姿を黙認すら出来ない!!)
パァンッ!!
「!」
(銃声に反応したか!!)
(だが!遅い!!!)
鎖基の眉間へと銃弾は直撃
しない
「むぅんっっ!!」
空中での無理矢理の体勢移動
「馬鹿な!?」
銃弾の速度からして、銃が発射される位置、瞬間を把握していなければ出来ない芸当
(奴は心理系能力者か!?)
(いや、それならば何故!炎を操れる!!)
ゴリンッ!!
生々しい音
「あっっ…!!」
男の肩の骨は砕け、銃は床に落ちる
「あがががあああああああああ!!!!」
「破ッッ!!」
ドゴムッ!!
「かっっ…」
ボンッッ!
「ああああああぁぁああああああ!!!」
「むぅ、手応えのない!!」
ガァンッ!
合拳を威嚇のように鳴らし、拳の炎が火力を増す
「どうした!?そんな物ではないだろう!!」
「気合いと根性が足りんぞ!!!」
「化け物かよ…!!」
14階
バチィイイイン!
「くっ…!!」
パァンッ!パァンッ!!
「危っ!!」
バチィイイン!
カンカンッ!
波斗の作り出した壁により、弾かれる弾丸
「何という能力ですか…」
「特殊系、らしいんだけど…」
「お前は能力無いのか?」
「有りますよ」
「…しかし、あまり好きではない」
「何でだよ?」
「この能力のせいで」
「私は今まで迫害を受けましたから」
「…差別されたのか」
「貴方も能力者なら解るでしょう?」
「いや…、俺は能力者って事を最近知ったんだ」
「そんな事は…」
「…そうですか」
「幸福ですね、貴方は」
「その…、やっぱり酷いのか」
「酷いですよ」
「肉体的に…、何より精神的に」
「…そうか」
「この能力のせいで私は苦しんだ」
「しかし、捨てる気は無い」
「…ですから、能力を生かそうと思ったのです」
「こんな最悪の物でも使い道は有りますからね」
「…なら、どうして」
「どうして、ここに居るんだ?」
「はい?」
「こんな犯罪組織に…」
「軍の事は知ってるだろ!?」
「軍に入れば…!!」
「そうはいかないのですよ」
「どうして!?」
「…私はあの方に救っていただきましたから」
「黒襟って奴にか…?」
「そうです」
「…どうしても、なのか」
「逆に聞きますが」
「どうして貴方は敵の心配をするのですか?」
「人殺しは…、したくない」
「甘いですね」
「貴方は軍の人間でしょう?」
「…あぁ」
「覚悟を決めるべきだ」
「軍に入った以上、ね」
「…そうなのかも知れないな」
「おっと、雑談が過ぎてしまいましたね」
「私は今すぐに、あの方の元に行かねばなりません」
「行かせると思ってんのかよ?」
カリッと親指の皮膚を食いちぎり、指から血を出す波斗
「…そうでしょうね」
「能力を使います」
「行きますよ」
ヴンと音を立て、茂埜辺の手に空気が渦巻く
「…来い!!!」
読んでいただきありがとうございました