殺戮症候群
車内
「ぐぅ…」
「がぁあああああああ…」
「…」
「…はぁ」
「寝れないの…?」
「明日は襲撃するんだからさ…」
「早く寝なよ…」
「馬常さんもですよ…」
「…名前、蒼空君だって?」
「はい」
「良い名前だよねぇ…」
「まぁ、どうでも良いんだけどさ…」
「どうでも良いなら言わないで下さいよ…」
「そうだねぇ…」
「…クロアゲハってどんな組織なんですか?」
「トップである黒襟に絶対の信頼を寄せる組織でね…」
「黒襟の為なら何でもするんだよ…」
「どうしてそこまで?」
「さぁ?」
「…そうですか」
「…」
「…」
「…」
「…馬常さん」
「何?」
「貴方の能力って?」
「俺ね-…」
「…後で説明するよ、うん」
「後で、って…」
「もう寝るから…」
「ちょ…」
「ぐぅ…」
「…寝てるし」
空港
「…」
「…」
「…オイ」
「何?」
「何か喋れ」
「うっさいロリコン」
「死ね」
「テメェな…」
「…はぁ」
「何?何か言い返したら?」
「クソゴミ」
「もうちょい口を治せよ…」
「死ね」
「…はぁ」
「きゃぁあああああああ!」
「!」
「ひったくりよ----!!!」
「…ひったくりか」
ドンッッ!
「どけ!!」
ひったくり犯が防銛を突き飛ばし走り去っていく
「…やめろよ」
「無理」
ボンッッッッ!!
風船が弾けるような音
飛び散る脳味噌と眼球と骨と
肉
「きゃぁああああああああ!!」
響き渡る悲鳴
「おい!何だコレ!!」
「うわぁああああああ!!」
「…ったく」
「どうすんだよ、コレ」
「さぁ?知らな~い」
「当たってくる奴が悪いんでしょ?」
「公衆の前で能力使ってんじゃねぇよ」
「これから大量に殺すのに、今から1人殺しても2人殺しても変わらないでしょ?」
「…限度ってモンを考えろよ」
「解らな~い♪」
(この餓鬼…)
数時間前
45F総督室
「殺戮症候群?」
「どういう意味だ」
「そのまんまなのよね」
「人を殺すことで快楽を得る精神病」
「…大抵のイカレ野郎はそうだろ」
「別に珍しい事じゃ…」
「能力を使わなければ悪化する…、と言ったら?」
「あ?」
「むしろ、彼女はそれが発動条件なの」
「まずは両親、次に兄弟、その次は親族、友人…」
「殺戮症候群によって殺した人々よ」
「…能力を使えば人が死ぬ」
「使わなければ殺したくなる、か」
「そうよ」
「…無茶苦茶だな」
「だから厄介なのよね」
「…軍が保護したときが最も酷かったらしいわ」
「どういう状態だったんだ?」
「あの子が通ってる学校のね」
「入口から屋上まで…」
「全て破裂死体で埋め尽くされてたわ」
「おいおい…」
「本人も誰も殺したくなかったんでしょうけど…」
「それが仇になったのよ…」
「…畜生が」
「そいつのお守りを引き受けちまったのか…」
「何であの子の願いを受け入れたの?」
「前にな」
「人手が足りなかったから頼んだらよ…」
「それで?」
「…まぁ、自業自得だから頼んだわよ」
「…はぁ」
現在
飛行機内
「…」
「フ-…フ-…」
カタカタと震える防銛
「…どうにかなんねぇのか」
「今から殺しまくれると思うとウズウズするんだから仕方ないでしょ…?」
「早く殺したいいぃぃ…♪」
「…殺戮症候群、か」
肘を付き、本を読むゼロ
本には[殺戮症候群について]と書かれている
「…一応、言っとくがよ」
「今回は鎮圧だ」
「殺しじゃねぇぞ?」
「正当防衛は許可されてるじゃない♪」
「それで殺しても問題なんて無いわよね?」
「…そりゃそうだが」
「ウフフフ…」
にやにやと口元を緩める防銛
その笑みには狂気に似たものを含んでいる
秋葉原
高層ビル
「黒襟様」
高層ビルの一室にス-ツを着た青年が入ってくる
「何?」
高級ブランドの服を着こなす女性がくるりと椅子を回す
顔つきは妖艶で胸は豊胸
長く綺麗な脚を見せつけ、にっこりと微笑んでいる
「軍の連中が来てます」
「恐らく、奇襲をかけるつもりかと」
「消しなさい」
「しかし…」
「?」
「雨雲と馬常が居ます」
「こちらの被害も計り知れません」
「…あのね?茂埜辺」
「何でしょうか?」
ゴキンッ!
「がっ!?」
茂埜辺と呼ばれた男の腹に黒襟の蹴りが直撃する
「兵は捨て駒って言葉を知らないの?」
「所詮は私の美貌に集まってきたウジ虫よ」
「捨てなきゃ腐るだけ」
「解る?」
「申し訳…、有りません…」
「じゃぁ、早くしてよね?」
「ウジ虫君♪」
「はい…」
ふらふらと立ち上がる茂埜辺
ガチャンッ
「大変だな」
「来牢か…」
まるで何処かの番長のように破れた学生服を着ている男
「あの女王様に下手に口答えしたらそうなるって!」
「お前が一番解ってるだろ?」
「…あぁ」
「ドMでも有るめぇしよ」
「いつかはあんなのでも☓☓☓にしてやりてぇぐらいだぜ」
「言葉を慎め」
「黒襟様を侮辱するな」
「へいへい…」
「ケッケッケ…、副隊長様は真面目だねぇ」
読んでいただきありがとうございました