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秋鋼  作者: MTL2
40/600

終戦

会議会場


正門


「…恐ろしいな」


「よく言うぜ…」

「恐ろしい怪物だろ、お前」

「本当の本当に無能力者か?」


「あぁ、そうだ」

「無能力者には体を鍛えるしか脳がないのでな」

「筋力には自信がある」


「筋力ぅ?」

「筋力付けたら弾丸も素手で受け止められるってか?」


「別に止めたんじゃない」

「前へと向かう弾丸の方向性を上からの衝撃でねじ曲げた」

「飛ぶ鳥の頭上から石を落とすのと同じ原理だ」


「…頭も回るのか」

「クソ面倒くさくなってきたな…」


「何、その能力ほど面倒ではない」

「物質の速度を変える能力、ほどな」


「…気付いてたのか」


「当たり前だろう?」

「お前が投げた石礫が弾丸の様なスピ-ドで飛んできた」

「速度は威力にもなり得るからな」


「チッ…」


「…その武器は投げないのか?」

「布で巻いた棒は」


「あぁ?投げねぇよ」

「槍投げなんざ得意じゃねぇ」


「ほう、そうなのか」


「…つ-かよ、テメェは良いのか?」

「チンタラ会話しててよ」


「目的はお前の足止めだ」

「むしろ、有り難い」


「違ぇよ」

「この戦いの時間を聞いてるんじゃねぇ」

「お前の時間を聞いてるんだ」


「…勘が良いな」


「戦闘中に殴ってもねぇトコを抑えられたら嫌でも気付く」

「癌、か」


「体中に移転しているそうだ」

「軍に追われているとロクに医者にも行けん」


「…そうか」


「何故、悲しそうな顔をするのだ」

「敵だろう?お前は」


「よく言うぜ」

「お前は敵だが、強ぇからな」

「病気で殺すのは惜しい」


「なら、お前が殺すのか?」


「い-や、病気で苦しんでる野郎をブッ殺すのは気が引ける」

「…だからこそ、死ぬ前に聞きてぇ」


「何だ?」


「どうして軍を裏切った」


「…」


「耐えられなかった、の意味が解らねぇ」

「何に耐えられなかったんだ?」

「お前は軍を裏切って私欲に走るような人間じゃねぇ」

「軍の規則に耐えられなかったワケじゃねぇだろ」


「どうして、そう思う?」


「…街」


「む?」


「街を攻めて、住民を人質に取れば良いんじゃねぇのか」

「そうすれば軍は手出し出来ねぇ」

「何故、そうしない?」

「元は軍に居たテメェなら百も承知のはずだ」

「それに日本で能力者が暴走したときも、五眼衆の連中が暴走した能力者を止めていたと報告が入ってる」

「何が目的だ?何の為の行動だ?」

「軍への復讐にしては遠回りし過ぎじゃねぇのか」


「…お前は知らないんだな」

「十数年前、軍はある計画を立てた」


「計画だと?」


「…最悪の計画だ」

「殺し殺される計画」

「その計画に耐えられなかったんだ、俺達は」


「…詳しく聞かせろ」


「別に構わないが…、条件が2つ有る」




廃墟前


路地裏


「委員長!しっかりして!!」


「嘘…、ボスが…、父さんと母さんを…」

「雅堂は…、知って…」


「委員長!!」


「嘘…、嘘…」


(クソッ…!!)


どうなってるんだよ!?

何で俺は委員長を庇って逃げてるんだ!?

敵だろ!?五眼衆の幹部だぞ!?

なのに…!何で…!!


「蒼空 波斗!!」


「!?」


目の前にはベルアと大勢のロンドン支部員達


「大丈夫ですか!」

「総員!構るのです!!」


大量の銃口が森草に向けられる


「撃っ…」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」


「な、何なのですか!!」

「早く退いてくださいです!!」

「当たっても知らないのですよ!?」


「こ、この人は俺の友人なんですよ!!」

「敵じゃない!!」


「いいえ!彼女は五眼衆の一員です!!」

「デ-タの顔とも一致したのです!!」


「え、えっと…」


「敵を庇うのですか!?蒼空 波斗!!」

「反逆と見なしますですよ!?」


「ち、違…」


「どうするのですか!?」


「そこまでだ」


「!?」


「全員、撤退しろ」


「ゼロさん…?」


「No,3…!!」

「し、しかし!」


「命令が聞けんのか?」

「No,3の権限を持って命令する」

「撤退だ」


「…ッ!!」

「全員!撤退です!!」




「…ゼロさん、どうして」


「気にすんじゃねぇよ」

「森草 蜜柑」


「…」


「…テメェはロンドンに旅行に来ていた」

「そして、偶然にも軍と五眼衆の事件に巻き込まれていた」

「そうだな?」


「え…?」


携帯電話を取りだし、電話をかけ始めるゼロ


「ロンドン支部、会議会場はどうなった?」


『はい、事態は収拾しました』

『五眼衆幹部、混沌のファグナはMr,テツダマが処理』

『ボスは貴方が処理しましたね』


「あぁ、そうだ」


「ボス…ッ!!」


『---…、連絡が入りました』

『今し方、憤怒の雅堂を捕縛したと』


「そうか、解った」


パタンッ


「皆が…、そんな…」


「五眼衆は壊滅だ」

「お前は五眼衆ではなく、普通の女として生きていけ」

「以上だ」


「ま、待ってよ!!」


「…何か、まだ聞く事が有るのか?」


「何で私は…!!」

「私も五眼衆の幹部よ!?」


「違う」

「お前は日本の九華梨高校の生徒だ」


「どうして!?何でそんな…!!」


「…頼まれた」

「お前の所のボスに」


「ボスが!?」


「お前を五眼衆から解雇するそうだ」

「尤も…、それは数年前から決まっていたそうだがな」

「お前は[偶然にも]五眼衆と一緒に居ただけの女」

「始末する必要が有るか?」


「何で…」


「…お前のボスからの伝言だ」

「生きろ、と」


「…私の両親は!?」

「私の両親はどうして殺されたの!?」


「…能力者狩り」


「能力者狩り…?」


「…コレ以上は言えん」


その場から歩き去るゼロ


「能力者狩り…?」

「何よ…、それ…」

「何…」


「委員長…」


森草の肩にそっと手をさしのべる蒼空


「触らないで!!!」


「ッ!」


「触らないで…、触らないでよ…」

「父さん…、母さん…」

「ボス…、雅堂…」

「皆…、皆…」

「私は…」


「い、委員長…」


「私には…」

「何も…」

「無い…」

「こんなに苦しいなら…」

「死んだ方がまし…」


「…死ぬなんて言うなよ」


「貴方に何が解るの…?」

「全部なくした…」

「失った…」

「全部、全部…」

「私には…」

「何も無いの…」

「何も無いんだから…」

「生きてても…」

「意味なんて無い…」


パァ---…ン


路地裏に渇いた音が響く


「…ッ」


「---!!」


波斗の手が森草の頬を打っていた


「…何だよ」

「無くしたからって…、なんだよ」

「無くしたからって!死んで良いはず無いだろ!?」

「無くした物は幾ら嘆いても帰ってこない!!!」

「無くしたんだ!!全部!!!」

「現実から目を背けるなよ!!!」

「何も無くなっても!!」

「生きろよ!!!」

「死ぬなんて言うな!!」


「私は…」


「…見つけろよ」

「委員長は馬鹿じゃないだろ?」

「見つけれるよ」

「無くした物の変わりとまではいかなくても…」

「きっと…、大切な物が」

「だから…」

「だから、死ぬなんて言わないでくれ…」


「わ、だし…」


委員長の目から大粒の涙がこぼれてくる


「ボスが与えてくれたのに…!!」

「死ぬなんて…!!」

「う…ぁああ」

「うわぁああああああああん!!」


その場に崩れ、目を押さえ

叫び、泣く委員長


路地裏に響く少女の泣叫ぶ声


「…委員長」


波斗はそっと委員長を抱きしめ、彼女の涙を拭った



読んでいただきありがとうございました

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