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秋鋼  作者: MTL2
382/600

捨てられぬ称号


廃墟前


「…もし、さ」

「仲が良かったらなんて思うけどね…」


天へと昇っていく黒煙


「まぁ…、ここしか場所が無かったんだ」

「許してね…」


金色で彩られた棺

布瀬川 蜂木と小さく表示されたそれは炎の中で燃え尽きていく


「…全てが始まる、か」

「ここまで計算通りって言うのなら…、それは恐ろしい事だよねぇ…」


「処理は完了したカ?」


「…あぁ、ソウ」

「久しぶり~…」


「そんなに久々じゃないネ」

「烏龍茶いるカ?」


「ちょっと貰う…」


「…もう、確実に目を付けられるヨ」

「[躯]を壊したんだからネ」

「これで、奴等は蒼空 波斗しか手がなくなル」

「[陽]の[無型]が、ただ1つになるんだからネ」


「…まぁ、覚悟の上かなぁ」

「どうせ…、あのままでも残った血を抜かれて実験台にされるでしょ、総督は」

「だから燃やしてあげただけなんだけど…」


「それが奴等にとって、どれ程までに有害か解ってるのカ?」


「解ってるからこそ…、ね」


「…らしいネ」


「…君もさ」

「軍って立場なら…、今ここで俺を殺すべきだよね…」


「俺に全てを知らせておいて、よく言ウ」

「まぁ、俺は平和で中華料理を食えたらそれで良いネ」


「…中国のマフィア、だっけ」

「どうなってるの…」


「準備は完了ヨ」

「もう潜伏してル」


「…そう、苦労させるねぇ」


「全くだヨ!」

「中華料理券1年分じゃ割に合わないヨ!!」


「烏龍茶も付けるけど…」


「許すネ」

「…まっ、正義ごっこも悪くないシ?」

「最後まで付き合うヨ」


「お世話になります…」


「いやいや、こちらこソ」

「最後まで楽しんで生きて楽しんで死にたいからネ」


「楽観的だねぇ…」


「どうせ人生、死ぬまでの暇つぶしヨ」

「だったら楽しまなきゃ損ネ」


「…ふーん」

「まぁ…、そうだねぇ…」


轟々と猛る炎を背に

2人は空を見上げた






軍病院


隔離病棟


「…チッ」


闇に包まれた部屋の中で、昕霧はベットに腰を掛けていた

酷く腫れた目と、全身に捲かれた包帯

鼻先から耳までを白く覆われて鋭い眼光と朱色の髪だけが覗いている


「…畜生が」


ノアが死に

茶柱が死に

私は生きている


生き恥だ


生きて何になる


「畜生がっ…」



静寂を切り裂く音

ドアを叩く規則的なそれは昕霧の不快感を一層増させる


「…今は、無理だ」


「断ろう」


その声は昕霧の予想だにしない人間の物だった


「…BOX、か?」


「少し話がしたい」


「…帰れ」

「私はテメーに用はない」


「こちらはある」


昕霧の言葉を無視してBOXは室内へと入ってくる

彼の頭部に匣はなく、ただ生々しい火傷痕が見えている


「…匣を外したのか」


「醜い姿で申し訳ないがな」


BOXは昕霧の向かいへと座り、表情を暗める


「…ノアと茶柱は、私の仲間だった」

「彼等が傭兵部隊だった、という事は知っているだろう」


「…それが、何だよ」


「サウジアラビアで、我々は軍に勧誘された」

「だが、あの時…、ノアは正義を捨てた」

「我々のために必要悪を欲した」

「それが、私には許しがたかったのだよ」


「……」


「何故、我々の為に捨てたのか」

「何故、我々の為に己の信念をも枉げたのか」

「何故、我々の為に全てを犠牲にしたのか」

「それが、私は知りたかったのだ」


「…知るかよ」


「貴女も、知りたかったのではないか」

「どうしてノアが貴女に茶柱を預けたのか」


「それは…」

「アイツが…、面倒だと思ったからだろ…」


「本当にそう思っているのか?」

「否、違うな」


「…っ」


「…危険から、遠ざけたかったのだ」

「奴は、茶柱を」

「今回の天之川の件、本来ならば茶柱の位置は私の物だったのだ」

「だがそれを、茶柱が奪い…、挙げ句の果てに火星まで参加させた」

「理由は簡単だな」

「茶柱と火星の方が、遙かに私よりも有能だからだ」


「…テメーが弱いから、だろ」


「あぁ、そうだ」

「私の無力さ故に彼女を死なせ…」

「貴女の無力さ故にノアが死した」


「…ぁ?」


「No,4」

「貴女は、弱い」


BOXの頭部を弾き飛ばす音弾


「後はねーぞ」


「いつまで目をそらす」


仰け反った男は、ゆっくりと態勢を戻す

額から流れる血が鼻横を通って顎から滴り落ちる


「No,2直属部下に敗した時も、そうだ」

「己の覚悟を上辺に、逃げただけだ」


「…何が言いてーんだ?」

「私が弱い、と?」

「私が弱者ならば、テメーは何だ」


「貴女は弱者ではない」

「臆病なだけだ」


「…あ?」


「己の位置を…、どうして、そこまでして守る?」

「そのNo,4という位置は何なのだ?」

「貴女は、何故、その位置に拘る?」

「己を偽り、弱くしてまで」


「…テメーに話して何になる」


「…あぁ、そうだろう」

「だが…、これだけは言える」

「貴女のその行為は、貴女の為になどならない」

「貴女はその地位を捨てるべきだ」


「…テメーが決めんじゃねーよ」


「あまりに、重いのだ」

「貴女はNo,4以上の実力を持ちながらも、そこに座し続ける」

「貴女の功績と能力値は最早、No,2にすら匹敵する」

「だが、貴女は試験の時もそうだった」

「何か、と言いつつもそこを離れない」

「決してNo,4の位置から退かない」

「何故だ?」


「……」


「答えを、聞かせていただきたい」


「何故、それを聞く」


「意味など、ない」

「知りたいが故に聞くのだ」

「その、答えを」


「…テメーが、知る事じゃねーよ」

「出て行け」


「No,4!」


「うるさい」


部屋からたたき出されるBOX

暫く扉前に立っていたが、やがて諦めて立ち去っていく



「…」


この、数字は

No,4は


捨てられねーんだ


私が、私である限り






軍本部


45F総督執務室


「呪われた席…、ですか」


「…おや、千両さん」


「布瀬川さんですか」

「どうしました??」


「私は資料の整理に」

「千両さんこそ、ここで何を?」


「私も資料を拝借しに」

「レウィン様の傷も癒えてきたので、そろそろ前戦に出ようかと」

「……今回の、件は」


「解っています」

「天之川の件に乗じ、ゼロに刺客を差し向けたのですがね」

「見事に全滅してしまいましたよ」


「…そうですか」


「やはり、確実な方法で行わないと」

「……そうそう、それと」


「何です?」


「ノアさんの死亡に伴い、新たな総督が選出されました」


「総督?代理ではなく、ですか」


「えぇ、そうです」

「やはり前戦に出る方を指揮官としたのは間違いだと判断されたのでしょう」


「…誰になったのです?」


「元老院総帥」

「神無総帥です」


読んでいただきありがとうございました

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