表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秋鋼  作者: MTL2
375/600

九華梨テーマパークの戦い

「雷剛拳」


かつて、公園で見たときとは比べものにならない雷撃

剛雷をその背に背負い、Noの名に相応しき戦闘力を見せつける男


「千飛輝」


その背に幾千の光を背負い月をもかき消す白光

夜を昼に変える殺戮の光は自分の数倍はあろうかという巨躯の男に突き付けられる


「無駄は要らぬ」

「語りは要らぬ」

「要るは」

「純然たる闘争のみ」


「闘争を望むか、老害」

「貴様に相応しき死に場所は戦場でもここでも誰かの腕の中でも無い」

「薄汚い、ゴミ箱の中だ」


天之川より放たれる雷光

各方向から光速で迫る雷撃にノアは超光速で対応する


一撃


目認は不可能

必然、光景が追いつくはずも無い


音もなく

動きもなく

光もなく


ただ、静止した光景


何も動かず

何も聞こえぬ


静止



然れど


観覧車下の建造物が次々と壊滅していく



パチンッ



水が地面に叩き付けられたような破裂音

一度きりの、小さな音



その瞬間、観覧車のゴンドラが全壊する

鉄骨のみを残した不格好な回転車の鉄同士が悲鳴を上げる



「天裂ッッッッッ!!!」


「不動雷塊ッッッ!!」



豪声轟声強声


人が出し得ぬであろう、破咆なる声


雷光に身を包んだ剛毅なる男

電光を背負う小柄な男


対立した雷神の化身

陽光をも凌駕する閃光の中で、2人の雷撃が激突する








入り口門前


「ごっ……!ぁ……!!」


苦痛に呻き、血が止めどなくあふれ出す

火星の肩と足が銃弾によって打ち抜かれているのだ


「無能力者にしては、よく粘りましたね」

「耐久力もあるし銃の腕も良い」

「流石は元No,4の部下です」


「驚いたね…」

「自分の腕が変な方向に向く…!」


苦痛に酷く汗を流しながらも、火星は冗談交じりに笑う

その光景を見てハアラは深くため息をつく


「何発銃弾を受けているのか、までは私も数えていません」

「しかし、貴方は今、自滅にも等しい形で負けようとしている」

「解決策もなく」


「本当…、どうすれば良いんだか」


ハアラの腕が伸び、火星の右腕へと向けられる

鉛弾の入った銃が火星の側頭部へと突き付けられる


「良いですか?今から言うことに従ってください」

「そうすれば命だけは助けてあげましょう」


「女の子の言いなりに、ってのは悪くないけど…」

「一度でも君の言いなりになると全てを支配されそうだね」


「…流石に、この手には乗りませんか」


「常套手段だからね」


「では、このまま頭を打ち抜きますか?」


「それはホント、遠慮できないかな…」


「…では、少し質問に」


「うん?どうぞ」


「貴方は、軍が何をしているか知っていますか?」


「軍?」

「…そうだね、世界の秩序を守ってる、ってトコかな」


「…では」

「もしも、の話です」


「…?」


「軍が己の為に秩序を守っているとしたら?」

「何かの目的の為に、守っているとしたら?」


「…それでも、守られてるんだから良いんじゃないのかな」


「結果、貴方達が苦しむ事になってもですか?」


「それは嫌…、かな」


「では、軍に反旗を翻す?」


「まさか、そんな事はしないよ」


「…自分勝手ですね」

「大切な誰かの為に動こうとは思わないのですか」


「…君、名前は?」


「聞いてどうするのです」


「呼べないと不便だろう?」


「…ハアラ・パピヨン」


「ハアラ、か」

「じゃ、聞くけど?ハアラちゃん」

「もし、君が死んで誰かが悲しむとどうなる?」

「君は悲しいかい?」


「私が死んで悲しむ人など居ない」


「本当にそうかな」


「…」


一瞬

ほんの、一瞬だけれど

天之川や刻、虚漸、鉄珠、灯笠、[核]と[躯]

そして、絵道とNo,2の顔が頭の中に浮かんだ


「…っ」


歯を噛み締めて、頭の中の光景をかき消す

そんなはずはない、と


「君は何歳?」


「…何ですか?」


「言いたくなければ、良いけどね」

「でも君は若い」

「本当に大切な人が死んだ時、どれほど悲しいか知ってる?」


「…知って、います」


「…悲しいかったろう?」

「涙が出ないほどに、涙が涸れるほどに」


「…それが、何ですか」

「その人達の意思を!私は継ぐ!!」

「その為に!!」


「君は、その悲しみをまた誰かに味合わせようとしている」

「違うかな?」


「ッッ!」


「君の言う、[その人達]は君に言ったのか?」

「俺達の代わりに目的を成し遂げろ、と」

「言ったのかな?」


「…それが、何ですか」

「言われなければやってはいけないとでも?」


「そうだね、あぁ、そうだ」

「君はそうやって簡単に命を捨てる」


火星の表情が一層険しくなる

怒りを抑えているかのように歯を噛み締めて、拳に力を込める


「命を幾つあると思ってる?」

「君は1人だ」

「代わりなんて誰も居ないし、作る事もできない」

「大切な人が死んで悲しまない人なんて居ない」

「居ないんだよ、誰も」


「…居ない?」

「居ない、あぁ、そうです」

「もう居ないんですよ」

「師匠の代わりも、あの人の代わりも」

「誰も居ない」


銃のトリガーに添えられた指が、段々と引き金を引き始める


「貴方は知らないんでしょう」

「本当の[喪失]を」

「だから、そんなに軽い口が叩ける」


「ッ…!!」


「それでは」

「さようなら」


闇夜に響く銃声

太陽が如き雷光を背負った男は

己の手で

己の銃で


己の頭を打ち抜いた







ジェットコースター付近


「…はっ」

「この程度、か」


昕霧の嘲笑にも近い笑いが漏れる

彼女の目の前で、刻は全身から流血し膝を突いている


「ったく…、相手がNo,4ォ…?」

「冗談だろ…、オイ…」


「[鷹]の狩りを見せてくれるんだろ?」

「早くしてくれ、眠くなっちまうだろーが」


「…知ってるか?」

「鷹ってのは、獲物を定めてから狙うモンだ」


「獲物が悪かったな」


「狐を狙ったと思ったら虎だったワケだ」

「全く、もっと楽に狩れると思っていたんだがな」


「ケッ、馬鹿が」

「テメーからは情報を吐き出しまくって貰うぜ?」


「…あのなぁ」

「聞こえなかったのか?」


「あ?」


「俺は「もっと楽に狩れると思った」と言ったんだがな」

「誰も「狩れない」とは言ってないだろうが」


「じゃー、狩って見せろよ」


「そのつもりだ」


昕霧は左に1歩移動する

その瞬間、彼女の居た場所に弾痕が生じる


「…で?」


「早いなァ、おい」


「No,4を舐めんじゃねーよ」

「音響探査を使えば、テメーの下手くそな罠ぐらい解る」


「…そうか、糞」

「手詰まりだな」


「諦めて情報吐きやがれ」


「使いたくなかったんだよ、コレ」


刻が天高く手を掲げると、1つの箱が落ちてくる

彼を昕霧の視界から消失させるほどの白煙をあげて


「目くらまし、じゃねーな」


「あぁ、そうだ」


空箱とかした、それが昕霧の前へと転がってくる


「HD-2513」

「世界最大の狙撃銃だ」


刻が抱えているのは彼の体長を遙かに超す銃

銃身だけでも数mはあるかという巨大なそれを降ろし、彼は昕霧へと向ける


「さて、始めようか」

「[狩り]を」



読んでいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ