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秋鋼  作者: MTL2
360/600

対策

軍病院


院長室


「…どうなってると思う?」


「俺に聞かないでくれ」


机を挟んで座る男2人

火星は煙草の煙を噴かしながら、表情を苦くする


「…なぁ、院長」


「何だ?」


「彼の、天之川の顔を覚えているか?」


「覚えてねえよ」

「何でだかな」


「…俺は、元から知らなかったよ」

「軍に居た経歴はお前よりも遙かに短いしな」


「アイツを手術した事はない」

「だが、会ったことぐらいはあるはずだ」

「女以外の顔は覚えるのは苦手だが、Noは覚えてるハズなんだけどな」


「…考え得るのは」


「記憶の改ざん、ってな」

「誰にされたんだが」

「犯人は女で間違いねぇが」


「何でだ?」


「野郎なら、すぐに解る」

「女は警戒しない」


「…お前なぁ」


「男なら美人と美乳は警戒しない」

「常識だろうが」


「お前の常識が世界共通と思うなよ」

「…俺は、まさか彼が能力者なんて思わなかったよ」


「会ってたんだってな、今までに」


「…あぁ」

「俺には普通の少年にしか見えなかった」


「フツー、ねぇ」

「別に珍しいことじゃねぇさ」

「No,1のガキなんざ良い例だ」

「見た目なんてゲーセンとか中学に居そうなガキだぜ」


「…俺、見た事ないけどな」


「まぁ、アイツは滅多に出てきやしねぇしな」

「今回の件でもそうだ」


「…あぁ」


「それよりも、だ」

「この写真はマジか?」


院長の手に握られる写真

そこには顔にシートをかぶせられた少年が写された物だった


「手術前の、唯一助かった子の写真だ」

「関係者に手回して送って貰った」


「一般病院での手術で、よくバレなかったモンだ」

「…ま、バレてでも欲しい情報だがな」


美しい彫刻品を見つめるように、院長は目を細める

写真を上から下から右から左から眺め、口元を緩める


「俺のメスでも、こんなに綺麗にゃ切れねぇ」

「メスって言うのは雌じゃなくて切れるメスの方で」


「良いから話を進めてくれ」


「…で、だな」

「この切れ味は間違いなく能力のモンだな」

「熱で止血、貫通こそしてるが傷は酷くねぇな」

「医療のガス切断に似てる」

「高熱で切断して止血するトコと、切れ味がな」


「…よく、解らないけど」

「それは並の能力者でも可能なのか?」

「雷系統なら誰でも使えたりするのか?」


「無理だ」

「こんな高等技術、並の奴等が使えるハズがねぇな」

「下手に使えば焼け焦げだ、中身までボロボロだぜ」


「…態と、やったと思うか?」


「さぁな」

「友人にかけた情けか、それとも生かしておいても問題なしと判断したのか」

「俺達への宣戦布告なのか」


「…面倒な事になってきたな」

「軍の疲弊、祭峰の残党狩り、天之川軍勢の出現、総督の死、ゼロの…」

「…っと、悪い」


「いや?別に気にすんな」

「俺はアイツが裏切り者だろーが何だろーが気にしてねぇし」


「…そうか」


「話戻すぞ」

「良いか?雷系の能力者ってのは面倒でな」

「どの能力よりも応用力に優れてると言っても良い」


院長は灰皿に煙草を押しつける

新たに取り出し、口へと咥える


「現代機械の殆どが電気エネルギーで動いてる」

「人体にも応用できる上に、そのままでも使える」

「全能力じゃ最大と言っても良いほどにな」

「…そうだな」

「機械に使うのをAタイプ」

「人体に使うのがBタイプ」

「そのままをCタイプと仮定しようか」


院長は立ち上がり、ホワイトボードにペンを走らせる

火星は姿勢を崩して腕を組み、ホワイトボードを眺める


「これを見る限り、天之川はCタイプだな」

「攻撃力としては最強だろう」


ホワイトボードの上部にCが書かれ、その下にBが、更に下にはAが書かれる


「これが順番だ」

「応用力だと真逆だと考えてくれ」


「あぁ」


「さて、肝心の相手なんだが」

「ノアのおっさんはBだな」

「C2のB8ってトコだろう」


「そのままも使うんだな」


「本来は不可能だろうな」

「あのオッサンだからこそ出来る事だ」

「1つを極めた天之川と応用に長けたノアってトコだろう」


院長はそう良いながらボードに難解な数式を書き連ねていく

「それで」と言葉を続けようとするが、火星が手で制止する


「俺、そこまでは解らねぇよ」


「そうか、まぁ普通だな」


「俺が知りたいのは天之川への対策だ」

「蒼空君に任せたくない」


「相変わらず甘いことで」

「だが、言っておくぞ」


ボードの橋に簡易な城と兵士を書く

院長はその兵士をマジックで指す


「これがお前だとしよう」

「能力者が責めてきても、お前だけで城は護れる」

「だが天之川が責めてくりゃドーンだ」


「…っ」


「火星、テメーの後輩思いは良いトコだぜ」

「だがな…、お前だって自分の実力が解らんほど馬鹿でもないだろ」


「…あぁ」

「だけど、だけど…」


「仲間思いも度が過ぎると迷惑になる」

「エロ本選びと同じだ」

「エロ本ってのはな」


「長いだろうから話を進めてくれ」


「…エロ本良いじゃん」

「それで、だがな」

「対策としては避雷針だ」


「避雷針?そんなモンが使えるのか」


「あぁ、使える」

「そのままって事は雷と同じだからな」

「だが、人間の発声させる物だ」

「所詮は自然発生するモンには劣るだろうよ」


「…そうなのか?」


「正直に言えば断言は出来ない」

「だが、俺も一応は能力者治療の医者だからな」

「能力についての基礎構造や応用も頭にゃ入ってる」


「…むぅ」


「さて、と話を続けるか」

「このA、B、Cで強力なのも防ぐのが簡単なのもCなんだ」

「つけ込むのはそこだ」


「…A、Bの場合は?」


「Aは現実的な実害がねぇからな」

「対抗策はお前の所の彩愛とかだろう」

「Bは近接だ」

「遠距離攻撃でも倒せるかもな」


「じゃぁ、ノアと天之川は…」


「…相性は悪いだろうよ」

「だが、あのノアだ」

「経験は軍の誰にも負けない大ベテランだ」


「経験が物を言う、か」


「お前なら解るだろ?」


「ん…、まぁな」


「…だが、まぁ」

「そこそこの経験を積んでて天之川に挑むとか言ってる馬鹿が居るんですが?」


「…悪いと思ってるよ」

「布瀬川はゼロの件で忙しいし、お前ぐらいしか頼めなかったんだ」


「俺も忙しいけどなァ!!」


「俺が来た時、エロ本読んでただろ」


「何が悪い」


「働け」


「断る」


「…はぁ」

「対応策は避雷針だけか?」


「…いや、そうでもない」

「ゴムとかもそうだが、ゴム手袋にゴム長靴して戦うワケにはいかないだろ?」


「あ、あぁ…」


「秘密兵器として出すなら避雷針弾丸だな」


「誘電素材の弾丸か」


「そういう事だ」

「それに、天之川も元No,5とは言えガキだ」

「取っ組み合えば一瞬だろ?」


「…あぁ」


「お前、まさか子供だからとか言って手加減しないよな?」

「一瞬で消し炭だぞ」


「…解ってる」


「避雷針弾丸はこっちで用意してやる」

「無能力者が能力者に何処まで抗えるか興味有るしな」


「ありがとう」


「いや、気にすんな」

「俺も興味でやってるし」


院長はボードに書いた文字を消し、再び椅子に腰をかける


「…だが、だ」

「ノアでも負傷させられたんだ」

「お前、対峙した瞬間に死んでもおかしくねぇぞ」


「…あぁ、解ってるさ」

「解ってる」


「それなのに、なんで…」


「…蒼空君さ、苦しいと思うんだ」

「友人が、大家が、担任が敵だったから」

「何も考えられないぐらいに」


「…そりゃ、そうだろうが」

「それでもお前が行く理由にはなるのか?」


「ならないよ」

「だけど、俺も熊谷君…、天之川と大家さんとは知り合いだったんだ」

「身近な人物に裏切られる苦しさは、俺もよく知ってるから」


「…はぁ、そうかよ」

「ま、出来るだけは協力するぜ」


「…ありがとよ、院長」


「礼はエロ本で」


「…何冊?」


「お前の秘蔵コレクション出してこい」

「10冊以上だ」


「…あー、無理」


「何でだよ?」

「手伝ってやるんだから…」


「いや…、かなり前に織鶴に発見されてさ…」

「目の前で粉塵と化したんだ…」


「…お疲れ様です」



読んでいただきありがとうございました

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