天之川VSノア
「ぬぅううううう……」
口から蒸気を吐き出し、ノアは体を起こす
街灯の灯すらも切り裂く雷撃は彼の剛拳から放出されている
「先代、元No,5、雷属性最強」
「天之川 夜空」
「よぅやっと、見つけたぞ」
「老いぼれが…!後釜が…!!」
「不意打ちとは上等だ…!!」
「笑わせるな」
「戦場では卑怯も糞も有りはせぬ」
「ただ、生か死か」
「それのみであろう」
「…はっ、確かにそうだな」
「貴様の掲げる大義名分のため、人を殺す場ではそれが常套句だ」
「正義という下らん大義名分のため、無抵抗でも無力でも殺す場ではな」
「[正義]か」
「おぬし、若いのぅ」
「…何だと?」
「正義とは[正しい義]と書く」
「だがなぁ、そんな物ではない」
「人を殺すのも正義、物を奪うのも正義、女を犯すのも正義」
「正義とは必要悪であり不要であり最悪なのだ」
「正義のヒーローなど、存在せぬ」
「幻想空想妄想の産物よ」
「…貴様が、それを言うか?」
「当然」
「ワシが目指すのは正義ではあり平和である」
「ワシは、その為の必要悪であるべきなのだ」
「偽善だ」
「偽善こそ正義だ」
「…老害には言語が通じんらしい」
「老害とは言うのぅ」
「確かにもう歳じゃが、まだ現役よ」
「とっとと引退しろ」
「断る」
天之川から放たれる雷矢
避ける動作は見せず、ノアは不動のまま矢を受ける
「不動雷塊」
「身体強化型か…」
「貴様は肉体強化に属性を使うのだな」
「うぅむ、その点では貴様とは違うかも知れんな」
「どの道だ」
「強ければ良い」
「その点では賛成じゃのぅ」
バチィイイイイイイイイイイインッッ!!
天之川を襲う突起
しかし、それは彼に直撃する寸前で雷矢によって破壊される
「…蒼空」
「誰じゃ?この小僧は」
「アンタこそ誰だよ!!」
「急に入って来て…!!」
「ワシか?ワシはNo,5のノア・ゼルディギスじゃ」
「な、No,5!?」
「貴様こそ誰じゃ?」
「…天之川の友達だ!!」
「友達?」
「貴様は能力犯罪者…、ではないのぅ」
「名は?」
「蒼空 波斗だ!!」
「…ほう、ふむ」
「そうか」
「13人目か」
「!?」
「…貴様、何故それを」
「ワシとて阿呆ではないのでな」
「末端でしかないだろうが、情報は掴んでおる」
「…馬鹿が、消されるだけだ」
「奴のように」
「やはり知っておるのだな?ゼロのことを」
「…」
「ぜ、ゼロさんのこと…?」
「どういう事ですか!ノアさん!!」
「…知らぬのか、小僧」
「何で俺が13人目って…!」
「ゼロさんのことも!!」
「…いつかは知ることだ」
「小僧、貴様は」
「黙れ!!!」
天を切り裂く雷剣
「天裂ッッッ!!」
天之川の右手から掲げられた天を覇す雷剣はノアへと直線的に振り下ろされる
「天を覇す雷剣ならば」
「ワシは地を覇す雷拳としようか」
ノアの拳に纏われる紫雷
彼の腕には血管が浮き上がり振動する
「面白い!受けてみろ!!」
天之川の咆吼
振り下ろされる雷剣に向かって、ノアは拳を構える
紫雷が収束
光を失った拳は振動を停止する
「ふ、不発!?」
「あぁ、小僧」
「そこから離れておけよ」
波斗に背を向けたままノアは語りかける
「ワシは責任を取らんからのぅ?」
波斗は瞬時に判断した
背筋を貫く悪寒と殺気を
「死ぬぞ」
咄嗟に波斗は道端へと飛ぶ
その瞬間、彼が居た場所は業炎と爆風によって破壊される
「天雷破轟拳」
剣を撃ち壊す拳
ノアの足が地面を砕き、拳は天を砕く
雷剣は破壊され、剣撃の衝撃波が天之川へと迫る
「雷道!!」
直後、天之川の周囲に長方形の雷膜が張り巡らされる
衝撃は雷膜によって掻潜られる
「どうした、小僧」
「受け流すのでは話にならんぞ」
天之川の眼前にはノア
「あの拳撃すら囮だとォ!?」
「何だ?漫画やアニメのように必殺技で倒すのがセオリーだとでも思うたか?」
「違うのぅ、ワシが見ているのは結果のみ」
「生きるか、死ぬか、殺すか、殺されるか」
「それのみよ」
「貴様ッッッッ……!!」
「小僧、貴様は強い」
「だが経験を積んだワシの方が強かったな」
「…ハッ!笑わせる」
「経験?知った事か」
「俺は負けられない」
「貴様如きには負けられない!!」
「虚言ならば、いずれ聞こう」
「空の上でな」
「ただし、先に向かうのは貴様だ」
「ほざけ」
「貴様などに負けるか」
「負けられない、俺はまだ」
「負けられないのだ」
「…雷剛拳」
「負けられないんだよォッッッッッッ!!!」
瞬間
ノアの心臓を剣が貫く
「ぬっっ…………!!!」
「速まるなよ、天之川」
「貴様…!虚漸…!!」
「邪魔をするか!!」
「邪魔?笑わせてくれるな」
「貴様の目的は何だ?喧嘩か?」
「っ…!」
「最上級犯罪者じゃな…?」
「心臓を刺されても死なない、と聞いた事はあったが」
「まさか本当とはな」
「…大家さん?」
「…何だ、居たのか」
「何で…、こんなトコに…」
「…話は、また今度」
「ゆっくりしよう」
「ぬぇええええええええええええええいあぁああああああああああああああっっっっっっ!!!」
轟巨なる咆吼が全てを振動させる
ノアは胸襟によって刃を分断
踵を返し、虚漸へと拳撃を繰り出す
パァンッ
その拳を一発の銃弾が貫く
「流石だ、的確だな」
「称賛する」
不敵に笑う虚漸
ノアの眼球は、遙か遠くのビル屋上の人影を捕らえる
「鷹ァッッッッッ……!!!」
「どうする?ノア」
「貴様は例え天之川でも容易には勝てぬ強敵」
「だが、俺達3人でかかれば話は別だ」
「…然れど引けぬ」
「引けぬのだよ、ワシは」
「必要悪は常に悪であり必要でなければならぬ」
「それが存在意義で有りーーーーーー…」
「ーーーーーーー…正義だからだ」
「…ちっ、強情め」
「天之川!引くぞ!!」
「ーーーーー…、ちっ」
突如の雷光
波斗は腕で顔を防ぐが、ノアは平然と立っている
「…逃げたか」
ビル屋上
「…馬鹿が」
「[天光雷神]を使おうとしたな?」
「…」
「…あれは使うな」
「使って良いのは」
「解っている」
「…その時は近い、それだけだ」
「…あぁ、そうだな」
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