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秋鋼  作者: MTL2
355/600

蔵波捜索

廃工場


「桜見ーーーーーっっ!!」


「あ、蒼空!」


「何処だ!蔵波は!!」


「解らねぇ!」

「ただ、夕夏と熊谷が探してくれてる!」


日が沈み、街灯が照らす町外れ

廃工場近くに人影は殆どなく、ただ桜見と波斗の話し声が響くだけである


「あンの馬鹿!見つけたら1発殴ってやる!!」

「私は、この周辺を探す!」

「お前は九華梨公園近くを探してくれ!!」


「わ、解った」





九華梨公園


「…居ない、か」


頭の中を混乱が襲う

自分が何を考えてるのかも解らないくらいに

ぐちゃぐちゃに思考回路は掻き回される

大家さんの手紙が、蔵波が、ゼロさんの死が

自分の中を掻き回していく


「…くそっ!」


何処に行ったんだよ、大家さんも蔵波も

畜生っ、畜生っ


「蒼空」


懐かしい、だけど親しげな声


「く、蔵波…!!」








山の麓


「…」


生い茂る木々を眺める馬常

風が吹き、揺れる葉を静寂を味わうように静観している


「凄かったね-!」


「あぁ、そうだなぁ」


幸せそうに笑う夫婦が山から下りてくる

楽しそうに笑い合い、仲良く手を繋いでいる


「…あの」


「はい、何でしょう?」


「この山の上にさ…、有名な占い師がいるって聞いたんだけど…」

「…そうなの?」


「えぇ、居ますよ」

「もう当たる当たる!」

「私達が幸せになるなんて予言してくれたんですよ!」


「ねー♪」


「…そう、ありがとう」

「お幸せにねぇ」


「「ありがとうございます!」」


夫婦は車に乗って、山を下っていく

馬常は横目にそれを確認して山を登り始める



山中


「…手綱も生きてたら、あんな感じだったのかなぁ」


ふと、呟いていた

馬鹿らしいと頭を振って考えを消すが、再び蘇ってくる


「…和美ワミも、生きてたら」

「あんな風に…」


今更だ

今更、考えたって意味はない


過去が変わるワケじゃない

今が変わるワケじゃない


…もしも

もし、変わるのなら



「…ん?」


気配

獣かな、山中だし


馬常は周囲を警戒し、背から傘を抜く

地面を踏みしめ手に力を込める


周囲の雑木林が風に揺れる

いいや、風だけではない

確かに何か、何かに揺れている


「…獣、じゃないね」

「人間…、にしては何だか…」


唸り声を馬常の耳が捕らえる

右足を回転軸にし背後方向へ急速回転

音源へ傘の切っ先を突き付ける


「ひっ……!」


「…女の子?」


馬常の目に入ったのは可憐な少女

とても戦えるような子供ではない


「…何で?」


馬常は傘の切っ先を少女から離し、肩へと担ぐ

ため息混じりの少女を見下ろす


「あ、あのぅ…」


「君…、何してるの」

「こんな所で…」

「一般人…、だよね…」


「わ、私は」


少女は酷く怯えている

尤も、急に鋭利な殺意を突き付けられたので当然だが


「…えっと、ごめんねぇ」

「動物かと思ったんだ…」


「ど、動物…」


「違うよねぇ…、あはは」

「立てる…?大丈夫?」


馬常は少女へと手を差し出す

その瞬間、少女はびくりと震えて尾尻から有り得ない物を出す


「…しっぽ?」


「っ!」


「コスプレ…、じゃないよねぇ」

「何…」


----------実験体


「!」


馬常の脳内を、虚漸の言葉が駆け抜ける


--------本来の計画から外れた模造品

--------防衛本能を元にした獣

--------言うなれば化獣といった所だ


「…そうだ」

「君は……」

「…廃棄物の?」

「どうして…」


「?」


少女は首を傾げる

馬常は額に汗が滲んでいることに気付き、袖で拭う


「…いや」


もしも、本当に彼がここに居るのなら説明がつく

…つかない方が良いのだが


「君、この近くに住んでるの?」


「う、うん」


「一緒に誰か住んでる?」


「…パパと」


「占い師の?」


「うん…」

「でも、今日はもう…」


「いや、店じゃなくてね…」

「その人を…、訪ねてきたから…」

「案内してくれる?」


「う、うー…ん」

「解った…」


「うん…、ありがと」

「それとさ…、1つ聞いておくけど…」

「君は動物になれる…?」


「な、なれる」


「…そっか」


間違いない

この近くに居る

創世計画総責任者

奇怪神 怪異






九華梨公園


街灯に照らされた公園

闇から半身を照らす蔵波は、波斗の眼前に立っている


「何処に行ってたんだよ!?馬鹿野郎!!」

「皆が、どれだけお前を心配したと思ってる!!」


月光に照らされる公園に響く怒号

波斗は蔵波へと歩み寄っていく


「何とか言えよ!おい!!」


「…ろ」


「あ!?」


ぼそり、と

呟く声が聞こえる

小さすぎて聞き取れない


「何だって!?」


「…げろ」


「謝ってるのか!?」

「謝るなら、まず桜見に謝れ!!」

「彼女にまで心配かけてんじゃねぇよ!!」


「逃げろ…!!」


「え?」


雷音


「蔵波?」


波斗の眼前の少年を貫く雷撃


「おい…」


膝を突き


「嘘だろ…」


蔵波は地面へと頭を打ち付ける


「蔵波ィッッッ!!」


公園に響き渡る絶叫

波斗は蔵波へと駆け寄り、抱きかかえる


「余計な事を調べなければ、こんな事にはならなかった」


街頭より出てくる、1人の少年


「…馬鹿が」


(雷撃…ッ!!)


間違いない!

天之川ッ…!!


「なぁ、そうは思わないか?」

「蒼空」


街灯の光が、天之川の顔を照らす

波斗の目が驚愕に見開かれ、声が喉に詰まる


「…ぁ?」


「気付かなければ、良き学友だったというのに」


「熊谷…?」




読んでいただきありがとうございました

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