元老院直属部隊会議
真っ暗な闇
深くて深くて
何処までも沈んでいける闇の中
俺は?
私は?
僕は?
誰誰誰?
俺は誰だ?
私は誰だ?
僕は誰だ?
お前は
貴方は
貴様は
誰だ?
あぁ、そうだ
いいや、違う
誰だ?
俺はお前でお前は私で私は貴方で貴方は僕で僕は貴様で貴様は俺で
全てがまわる
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる
「rwbo;grbgo?」
あぁ、久しぶりだな
本当に久しぶりだ
どうした俺よ?
どうした私よ?
どうした僕よ?
お前は誰だ
貴方は誰だ
貴様は誰だ?
あぁ、
俺だ私だ僕だ
己だ
「…あ」
「居眠りか?」
「珍しい」
「…アウロラか」
「人の部屋で何やってんだ…」
「貴様の部屋ではない」
「会議場だ」
「…あぁ、そうか」
「まだ総帥殿は来ないのか?」
「まだですねー」
「シヴァ以外は全員揃ってるのか」
「卯琉は居ないがな」
「いつもの事だ」
「防銛は神無総帥の指示を仰ぎに言っている」
「もう暫くすれば戻って来るはずだ」
「…そうか」
11の椅子には3つの空席
8人が楕円形の机を囲んで座っている
「コヨーテ、アヌビス、オシリス、アテナ、スキュラ、セクメト、アウロラ」
「そして防銛、卯琉、俺、シヴァ」
「この11人が居れば国だって滅ぼせる」
「そんな俺達が高々、実験体の始末に駆り出すための会議とは…」
「反吐が出る」
「何も、それだけじゃねぇーだろ」
「他にも色々あるって」
机に脚をのせる蜂蜜色の髪の男
口に萎びた煙草を咥え、椅子をぐらぐらと揺らしている
「例えば何だ?セクメト」
「例えばさぁー…、何つーか」
「ほら、衛星砲とか」
「あー…、アレか」
「結局は機械だ、ポンコツだ」
「使えるとは思えねーな」
「おいおい、機械をポンコツなんて言うなよぉー」
「寄りによって、お前が」
セクメトの喉元に現れる、銀の刃
虚ろな目をした男が、明らかに不自然な手の向きで刃物を握っている
「黙ってろ、屑が」
「へいへい、こりゃ失敬」
セクメトが指を振るうと、男は宙へと浮遊する
パチンという音と共に男は霧散、血の霧が周囲に広がって消える
「…だが」
「その、衛星砲とやら」
「理論的には可能なのか」
重々しい声で、オシリスが皆へと語りかける
その問いに答えたのはアテナだった
「…理論的には可能」
「完成すれば、私の能力と同等の威力が得られる」
「それは凄い!」
「先輩と同等なんて、島ぁ1つ消せますよ!!」
「たった、それだけ」
「もし、あの実験台が本気で来れば、その程度では話にならない」
「え?で、でも…」
「何度も言わせるな」
「不快」
「う…、うっす」
「待たせましたね」
少女を隣に引き連れ、神無が会議場へと入ってくる
それと共に全員が姿勢を正し、起立
神無に一礼し、再び着席する
「少し時間が掛かってしまいました」
「神無総帥、シヴァと卯琉は?」
「シヴァ君は祭峰の足取りを掴みに」
「卯琉さんは…、解りませんね」
「先日、雨雲一族の生き残りが負傷したと聞く」
「その現場でも見に行ったのでは?」
「だと良いのですが」
「さて、それでは会議を始めましょう」
「防銛さん、お願いします」
防銛は無言で手に抱えていた資料を皆へと配る
皆が資料を手に取り、隙間が無いほどに並んだ文字に目を通す
「…ほう」
「ややこしい事になっているな」
「五紋章の中身が抜かれているとは…、どういう事だ?」
「そのままじゃないですか?」
「俺っちの記憶が正しければ、五紋章って、確か形を持った超高純度エネルギー体ですよね?」
「だったらエネルギーだけを抽出する事も可能じゃ?」
「どうやって?」
「どうやって、って…」
「そりゃ[無型]で」
「…あっ」
「そういう事です」
「今、恐らく」
「いいえ…、間違いなく」
「2つの五紋章の中身は5人目である祭峰 悠拉が持っています」
「マジで厄介じゃねぇか?」
「中身がないんじゃ、意味を成さない」
「いいえ、全て抜かれてはいません」
「ただ一部、ほんの一部が抜かれているのです」
「…計画に影響は?」
「ありません」
「どうして全て抜かなかったのだ?」
「抜ききれば、多少なりとも計画をズラすこともできたはず」
「えぇ、ですから不審なのです」
「少なくとも何かを企んでいる可能性は高い」
「ですから、皆さんには早急に祭峰側を殲滅していただきたい」
「お願いできますね?」
全員は立ち上がり了解、と同時に発声する
神無は満足そうに頷いて同じく立ち上がる
それぞれが部屋を後にするが、ただ1人は椅子に依然として座ったままである
「…総帥」
「何です?モルバさん」
「少し、聞きたいんだが」
「何でしょう?」
「衛星砲、というデータがあるだろう」
「えぇ、ありますね」
「アレの発明者は死んだんだったな」
「そうですよ」
「…何も知らないのか?アンタは」
「発明者についてですか?」
「申し訳ありませんが、私は…」
「違う」
「あの兵器に使われている[完全自立型プログラム]だ」
「…ご要望とあらば、お話しますが?」
「…」
「…」
「…いや、良い」
「結構だ」
「そうですか、解りました」
「では失礼します」
「…あぁ」
地下街
遺体安置所
「…」
ただ、呆然と立ち尽くす
白月は一向に総督の遺体の前から離れる様子を見せない
「…白月さん」
「そろそろ退かなければお体に触ります」
職員が退場を促すも、白月は依然として動こうとしない
「あのぅ……」
「…」
ただ、総督の安らかな死顔を瞳に移す
さわっ
「ひゃぁっっ!?」
「おう、すまん」
「つい手が出た」
「ぐ、軍病院の…!」
「何をするんですか!」
「いやぁ、あまりに良い尻してたんで」
「…で?この馬鹿は何時間、こうしてる」
「もう…、五時間ほど…」
「…そうか、解った」
「悪いが席を外してくれ」
「し、しかし…」
「別に死体をどうこうするワケじゃぁない」
「頼む」
「…は、はい」
「解りました…」
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