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秋鋼  作者: MTL2
329/600

血で染まったその日

路地裏


「…」


「…ソウ」


「No,2カ」

「その姿からして…、かなりやった様だネ」


「…相手から仕掛けてきただけだ」

「お前は?」


「俺は傭兵ヨ?」

「雇い主の命に従って動くだけネ」


「…そうか」

「ゴホッッ、ゴホッ」


「風邪カ?」


「いや…、気にするな…」


「…?」


「…それよりも、お前の後ろの」


「あぁ、気にするナ」

「この肉塊共は処理班がキチンと処理するヨ」


拳に付いた血を拭うソウ

No,2はその光景を見て、静かに息を吐く


「…なぁ」


「何ダ?」


「お前は、どう思う」


「何をだヨ?」


「軍を」

「正しいと、思うか」


「…考えた事もないネ」


拳を握りしめ、ソウは肉塊を眺める


「俺は生まれてから親の顔を知らず、生きてきタ」

「生き方は略奪殺人麻薬…」

「明日を生きるよりも今を生きなければならなかっタ」

「だからこそ、死んダ」

「俺は俺を殺シ、今も生きていル」

「最早…、正常じゃない事なんて百も承知ヨ」

「だけど、仕方ないじゃないカ」

「俺は生きたイ」

「例え、誰かから盗んでも」

「例え、誰かを殺しても」

「例え、誰かの心を壊しても」

「生きたいんだよ、俺ハ」


「…そうか」

「生への執着は…、恐ろしいな」


「あぁ、そうダ」

「人間は生への執着で生きていル」

「それこそが、人間だからナ」




ビル屋上


「はーい、皆ぁー」

「聞こえるかな的なぁー?」


『『『YES,SER』』』


各地の闇夜に潜む武装兵達

彼等の指揮を執るのは、ビルの屋上で風になびく髪を掻き分ける1人の女


「暗殺特務部隊に課せられた任務は1つ!」

「軍属以外の能力者の根絶やし虐殺パーティー的な!」

「出来るかな的な?」


『『『YES,SEAWIS』』』


「じゃ、行ってらっしゃい的な!」


その女の、その一言と共に町には阿鼻叫喚の風景と声が広がっていく


「♪」


「…楽しそうだな?戦闘狂」


「貴女が言う的な?シーサー」


「…フン」


「私達が頑張らなきゃ、仕方が無い的な」

「あの計画を阻止するために、私達は…、的な」


「…それが幾千の犠牲の上に成り立つ物だとしても、か?」


「私は聖人じゃない的な」

「誰が死のうと、誰が苦しもうと…」

「私は私の目的を達成できればそれで良い的な」


「…それは逃避か?」


「綺麗事なんかじゃ生きていけない、的な」

「あれは死よりも恐ろしい」

「世界の人間が縋り付く」

「自分の体裁のために、自分を守るために」

「私は、あんな物がこの世を壊してしまうのが恐ろしい的な」


「…俺から見れば貴様の方が余程、壊れているがな」


「…さぁ?何の事かな的な」


「…1人の男のために」

「…1人の女のために」

「…貴様は奴等の全てを壊したのだからな」


「…知らない的な」

「私は…、間違った事をしたとは思ってない的な」






九華梨高校


「腐ってるねぇ」


九華梨高校の屋上から、町を見つめる祭峰

その顔は悪しき笑みに包まれている


「…祭峰か」


「おぉ?えっとー…」


「刻だ」


「あぁ、そうだ」

「刻ね」


「ここで何をしている?」


「別に?見物」


「…見物、か」


「いやぁー、肌寒いねぇ」

「おぉ寒!」


「コレを貸してやる」


水に濡れた黒いスーツを祭峰へと投げる刻

祭峰は彼からそれを受け取るが、そのままスーツを受け流して地面へと叩き付ける


「水で濡れてんだから意味ないでしょうが」


「…俺の一張羅なんだが」


「高校就職オメデトーってか?」

「フナムラ…、だっけか」


「…天之川から聞いたのか」


「ちょっと大喧嘩した後にな」

「アレは大人げなかったと思ってるよ、うん」


「よくいう」

「まだお前も幼子だろう」


「…まさか」

「蒼空やNo,1とは違うんだ」

「前の記憶はあるぜ」


「何だ、そうだったのか」


「まぁな」

「…それよりもよ」

「コレ、どう思う?」


「…あぁ、軍の狂気の沙汰か」


「狂気の沙汰ぁ?」

「違うな、これは違う」


「…では、何だと言うのだ」


「餌集め」


「…そうか」

「そういう事か」


「粗方、失敗作辺りが暗躍してんだろ」

「…No,1とな」


「…フン」


「天之川達はどうしてる?」


「四国の霊封寺に」

「そろそろこっちに来させる」


「あっちから通ってんだろ?ここまで」

「監視とは言え、手が込んでんなぁ」


「…いつしかは、貴様と共闘する事になるだろうな」


「その時まで生きてりゃ、な」


「…あぁ、そうだな」





世界が


世界が狂い


世界が叫び


世界が血で染められて


その地獄の日は


終わった













「…思い返せば、あの時からだったんだろうなー」

「最近の裏切りパーティーは」


「…」


「あの後は何事も無かったかのように事は収束した」

「ただ、処理係の野郎共が苦労しただろうけどな」


缶珈琲を口へ運ぶ昕霧

まずっと眉をしかめるが、結局は全て飲み干す


「元老院のジジィ共は、最近になって神無が粛正」

「能力者狩りの黒幕は葬られました」

「真実も序でに、ってな…」


「…元老院が動くことなんて滅多に無いのに」

「どうしてあの時は動いたんでしょうね…」


「…さーな」

「ただ、あの時のジジィはマジで狂ってた」

「誰が見ても判断できるぐらいに」


「誰も、それを止めれなかったのもあるわね」


「…アレは」

「あの事件は何の為に…」


「…ただ、最も近しいのよね」


「何がだよ」


「目撃情報よ」


「…あー、有ったな、そんなの」

「イタズラか何か、って事で大沙汰にはされなかったが…」

「目撃者が多すぎた事と」


「目撃者の相次ぐ不審死ね」


「アレは死んだ、ってよりは殺されたんだろうな」

「証拠隠滅のつもりが証拠証明になったワケだ」


「…問題点は」

「それを元老院が仕組んだのか」

「それとも祭峰が仕組んだのか」

「それとも第三者が仕組んだのか、って事よね」


「…あぁ」


本当に存在していたのか?


あの日


あの、小雨と血の降った日


本当に奴は居たのか






-------------------隻眼の男







読んでいただきありがとうございました

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