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秋鋼  作者: MTL2
325/600

防衛本能

無人島


「…あー」

「しんどい」


地面に仰向けに寝転がる祭峰

青い空に泳ぐ雲を見つめて、和やかな空気を楽しんでいる


「…」

「………」

「…寝てた」


「しっかりするんだゼ!祭峰!!」

「来るぞ!!」


「解ぁーってるってば…」


空を覆い尽くす黒い影


「手間ぁかけさせやがる」



それは暴走した波斗だった



ゴッッッッッッッッッッッッ!!!


「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


「うるせぇなぁ…」

「こんな良い天気なんだ、日向ぼっこぐらいさせろ、ボケ」


振り下ろされる拳

その一撃はかつて、ロンドンで建物を一撃で破壊したほどの威力


「はいはい」


しかし、それを祭峰は簡単に片腕で受け止める

正確には受け止めたのでは無く遅らせたのだ


波斗の拳撃の速度を


「便利な能力な事で」


彼はやれやれと首を降る

波斗の腹を一度殴るが、音は10回以上


速度操作を最大限に生かした、ゼロ特有の戦法


「ガァアアアアアッッ…!!」


「俺はアイツほど力もねぇからなぁ」

「所詮は速度だけのパンチだ」

「だが…、質は数で補う」


ドッ


一度だけ響く音

しかし、その音と共に


波斗の腹の肉は飛び散る



「数えてないけど、まぁ6万発ぐらいじゃねーの?」


「ガッ…!ゴッッァッッ……!!」


然れど、その傷も一瞬のうちに完治


「化け物だな、マジで」


「退くんだゼ、祭峰」


波斗の頭部に当てられる銃口

ラグドは波斗の両肩に脚を乗せ、引き金に掛けた手に力を込める


「弾け飛べ、だゼ」


パァンッ!



「…ガァアアアアアアアアアア!!」


「何もねぇぞ!オイ!!」


「まぁ見てろ、だゼ」


「ガッ」


ボゴッ


「Split open♪」


バァアアアアアアアアアアンッッ!!!


弾ける波斗の頭部

首から上を失った体はよたよたと揺れ、血を吹き出す


「再生するぞ」


「解ってるんだゼ!」

「霊魅ィっっ!!」


地面から生え出る手

手は頭の無い体を地面へと引きずり込む


「良くやった、霊魅、ラグド」


橋唐は地面に埋まった、その体の穴

つまり弾け飛んだ頭の付け根である首に手を差し込む

ぼぎゅりと血管と肉を掻き別ける不快な音

それを物ともせず橋唐は能力を発動させる



簡潔に表せば、ミキサーなのだ


体の内部から風の刃で切り裂く


土内というハコに入った材料はミキサーでザンザンと切り刻まれる



「暫くは大丈夫だろう」

「アロン!まだ別離させられないのか!?」


そこより遙か遠くで憑神の体を弄くるアロン


「ホホホホホ!まだですねぇ」

「別離させるまで暫く防衛本能を引きつけておいてくださいぃ」


「速くしてくれ」

「こちらも、コレを引きつけておくのは…」


「橋唐ァッッッッッッ!!!」


首に伝わる、冷たい感触

冷えた金属?氷?冷水?


いいや、違う


その[冷たい]ではない


人外の

恐怖の

絶望の


[冷たさ]


「ーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッ!!」








「これ以上…、部下を失いたくないんだよ」



メキッ


「ガァアアアア!?」


「暴走なんざ、したくねぇってなぁ」

「みっともねぇし情けねぇ」

「だけど、仕方ねぇ」






「ハロー、ハロー、化け物」

「聞こえるか?化け物」

「貴様と同じ化け物が前に居るぞ、化け物」

「化け物だ、化け物」

「俺は化け物だ、化け物」






怨恨の

漆黒の

深淵の





「ガァアアアアアアア…」


同族を前にした獅子は、それを仲間などとは思わない


自分と対等な




[敵]と認識する




「ガァアアアアアアアッッッー……」


その、狂気じみた歓喜を含む笑み


「嬉しいのか」


「ガァアアア…」


「嬉しいだろうなぁ」

「お前と同種の化け物が目の前に」

「戦闘強には大好きな餌だ」

「だが、何か勘違いしてるだろ」







「同種であるだけで、同等じゃねぇんだよ」








天を、地を、海を裂く咆吼


それを合図に、波斗も祭峰も

双方の化け物は一撃を衝突させる



「下がるんだゼ、橋唐、霊魅」


「な、何でッスか!」

「早く加勢しないと!」


「…霊魅」

「お前は獅子と獅子の戦いに蟻が役立てると思うか?」


「そういう事なんだゼ」

「あの2人は最早…、人知を越える事を超えたんだゼ」


「俺達はアロンを護衛する事に尽くすぞ」


「わ…、解ったッス…」






「祭焉蛩」


天に呼応する鈴虫の音

太陽を覆い尽くす大翼


「ガァアアアアアアアアアアアアアア!!!」


地を揺るがす化け物の慟哭

森林を枯らす程の殺戮の意



「comen、化け物」

「夏風の中に沈め」





読んでいただきありがとうございました

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