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秋鋼  作者: MTL2
318/600

白き女




-------------------ォオン


「向こうでは戦闘が始まったか」


刀を回転させ、それを掴み仕舞う橋唐


「強くなったな」

「数多くの経験を経て、貴様は能力を学び戦闘を学んで強くなった」

「ただ、それだけだ」


彼の周囲には異様なまでに多い突起物や、陥没した地面

そして、膝を突く波斗


「ぐぁっ…!!」


相手は祭峰の右腕

単なる、属性系統の能力者なんかじゃない


強い


圧倒的なまでに


強いのだ



「貴様では、例え幾万の経験を積もうとも俺には勝てない」

「何度、戦おうとも、な」


「クソがぁっ…!」


「起きろ、憑神」

「宿主を見殺しにするのか?」


「…は?」


「聞こえているんだろう」

「唯一の、陽に位置する者よ」


「何…、言ってんだ」


「貴様には言っていないんだよ、入れ物」


「…?」


「ここなら、誰にも見られない」

「貴様が恐れる者は誰も、な」


「…意味解んねぇ」

(だけど、チャンスか?)

(アイツは今、油断してる)

(今なら…!!)


「やはり、入れ物を壊した方が速いか?」


ごりっ


「がっ」


波斗の口内に広がる、冷たく堅い感触


「銃ぅッ……!!」


ボゴンッッ



「ご」


ボゴンッ


ボゴンッボゴンッボゴンッ




「…で、だ」


頬に掛かった鮮血を拭う橋唐

生肉を踏みつぶしたかのような、ぐにゃりとした音


眼球がぺしゃりと音を立てて潰れ、脳髄がぐちゃぐちゃと潰れる


「入れ物は壊した」

「後は出るだけだ、憑神」


ボゴンッ


「…出ない、か」


橋唐は刀と同じく銃を仕舞い込み、波斗の壊れた頭を踏みつぶす


「憑神よ」

「時は動き出した」

「全ては我等の読み通りに」

「全ては奴の計画通りに」

「2つの流れは絡み合い、流れている」

「いずれは激突するにも関わらず、だ」


「その流れは私を中心に渦巻いてる」

「私は、ただ眠りたいだけなのに」


起き上がる波斗

いや、それは波斗ではない

白い髪の、夢の女に似た人物


「…憑神か」


「お前は?」


「橋唐 兎氏」

「貴様の[一部]の部下だ」


「…あぁ、そうか」

「ここにも私の一部があるね」


「五紋章の大剣だ」


「大剣…、あぁ」

「炎鬼が持っていた物だったかな」


「五神の名か」

「遙か昔の事だろう」


「そう、遙か昔…」

「もう…、気の遠くなるような…」

「…いや、今はそれよりも」

「私の宿主に随分と酷い事をしてくれたね?橋唐」


「貴様が出て来ないからだ」

「流れは激しい」

「こんな所で止まっては居られないのだよ」


「そうか」

「でも、些か乱暴すぎる」


憑神の手に現る槍らしき物

巨大な、彼女の体の倍は有りそうな出で立ち

その槍からは体の芯を崩されるかのような殺気が立ち籠める


「戦いに来たのではないんだが」


「私の依り代を潰しておいて、よく言う」


「貴様が出て来なかったから、仕方有るまい」

「いや、今はそれよりも先にあるだろう?」


「…そうだね」

「今は、どうなっているのかな」


「ある男が貴様を再び呼び戻そうとしている」

「それを貴様の[一部]達が阻止しようとしている、と言った所か」


「…いつの時代にも、悲しみと憎しみは存在するのだな」

「嘆かわしい事だ…」


「嘆かわしい?」

「その力を持って生まれた貴様が、嘆かわしい、だと?」

「その為に俺達は!お前の力のために!!」


「許せとは言わないよ」

「私の業であり、罪なのだから」


「…貴様、喰えるのだろう?」


「何を」


「コレじゃよ」


巨大な、鎖で巻かれた大剣を持って出てくる灯笠

憑神の顔は、彼女を見て驚きの色を露わにする


「自我を…」


「久しいな、わっち」


「…久しいね、炎鬼」


「今は灯笠じゃ」


「そう、灯笠…」

「何年間…、そうしていたの?」


「もう数えておらんよ」


「…そう、そう」

「解ったよ…、うん」


1歩、1歩と緩やかに、緩やかに灯笠の前へ進む憑神


「楽しかったかい?」


「うむ、仲間が出来た」


「好きな物は出来たかい?」


「甘い物が好きになった」


「人は好きになったかい?」


「うむ、大好きじゃ」


「後悔はしているかい?」


「何もしておらんよ」


「私を恨んでいるかい?」


「あぁ、存分に」


「…ごめんね」


「何を今更言うか」

「前からじゃろう?」


「…うん、そうかも知れない」

「もう繰り返したくなかったのになぁ…」






ドスッ





深く、灯笠の首を抉り抜く槍



「許して、灯笠」



噴水の様に、吹き出る血



「私は、自分の為に」



体は崩れ落ち、大剣と共に血の海へ



「お前を喰らうよ」




それは、もう

この世の物と思えぬほどの


光景



白き女が口と髪と肌と服を赤く染め


肉を喰らい臓を喰らい骨を喰らい剣を喰らい


涙を流し



咆吼を上げ



槍を地に突き立てる




「その姿が、真の姿か?」

「憑神」


「-----------…あぁ、そうだよ」

「私は…、化け物だ」




読んでいただきありがとうございました

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