霊封寺の少女
八十八山
「…でかっ」
「四国八十八カ所の中心に位置する山や」
「ここの山頂に霊封寺いう寺があってな」
「確か…、0番所やっけ」
「…何だって?」
「まぁ、要するに凄んい寺や」
「俺も来るんは初めてやで」
「で?その寺の住職が灯笠さんなのか」
「らしいな」
「へー」
「それよか、ケーキとか落とすなや」
「何で俺が持ってんだ…」
「ジャンケンで負けたやないか」
「お前、[最初はグー]は良いけどよぉ…」
「[出さなきゃ負けよ]って何だよ…」
「あれ?言わん?」
「言うか!ジャンケンなんだから出すわ!!」
「ほうかー、ウチではよぅ言うねんけどなぁ」
「特に響さんが」
「あー、何かあの人って音頭取るだろ」
「焼き肉で肉を率先して焼くタイプだわ」
「おぉ、よぅ解ったな」
「お陰で俺は好きに肉が食えん」
「生っぽいのが好きなんや、生っぽいのが」
(コイツが太る理由もよく解るわぁー…)
「…今更なんだが」
「ケーキの中身溶けない…?」
「あぁ、それについては問題ないで」
「冷、守、封」
「護符術でキンキンに冷えとるけぇの!」
「便利だな護符術!!」
「そうやろー?そうやろー?」
「まぁ、コレを習得するには死ぬ思いしたけどな」
「へぇ、どんな?」
「…聞きたい?」
「ん?」
「聞きたいんか?」
「…遠慮しとく」
「ほうか」
(目がマジだったな…)
霊封寺
「ここもでかぁっ!?」
「ホンマ、でかいなぁ…」
「にしても…?」
「どうしたんだ?」
「周りの木が、ほんな大きぃない癖に」
「麓から見えたか?」
「…そう言えば」
「立地的なアレじゃね?」
「んー…、ほうかなぁ」
「何や、妙な……」
ゴッ
「ぬごっ」
ずざあああああああああああああああッッッ
「い、一斑ぁあああああああーーーーーーーーーーっっ!!」
「隕石が俺の腹に直撃やとぉっ……!?」
「隕石じゃない!人間だから!!」
「ケーキ」
「「は?」」
「ケーキをわっちに寄越すのじゃ!」
「ほ、ほの声はぁ…」
「灯笠っ…」
「こ、この子がぁ!?」
「女の子じゃないか!!」
「こ、声からして間違いないっ…」
「おぅえっ…、弁当×2がぁ」
「だから食い過ぎだ、って言ったんだよ!!」
「生涯に悔いや無しっ…」
「死ぬなぁあああああああああああああ!!!」
「けぇきぃー!!」
「弁当…」
「だぁああああああああああ!!!!」
「…うむ!美味い!!」
「やっと落ち着いたか…」
「お前、保育士さん向いとるで」
「うん、検討しとく…」
「で、灯笠ちゃん」
「ちゃんとは何じゃ!?[ちゃん]とはっ!!」
「わっちはお前等よりも年上じゃぞ!!」
「はいはい」
「ぬぅ~~~~~~っ!!」
「えっと、やな」
「灯笠で良ぇねんな?」
「一斑!いつもは敬語だったじゃろう!!」
「いや、声だけやったら若い女性か思うたねん」
「実物は若すぎたけどな」
「年下には敬語使わん主義や」
「ふーんだ!」
「お前等の無礼は響に言いつけてやるんじゃぁー!!」
「いや、別に言いつけられても…」
「…なぁ?」
「まぁ、そうやな」
「うわぁあああああーーーーんん!!!」
「あ、泣いてもうた」
「ありゃぁー…」
「にゅぅう……」
「発見した」
「ん?」
「ケーキを与えると落ち着くみたいだ」
「んな動物みたいな…」
「さて、と」
「それはそうと、灯笠ちゃん」
「[ちゃん]ではない!!」
「うーん、じゃぁ灯笠さん?」
「うむ!良いぞ!!」
「よし、灯笠さん」
「俺達は何を手伝えば?」
「うむ、着いて来るが良い」
そう言うと灯笠は立ち上がり、奥へと進んでいく
波斗と一斑は互いに顔を見合わせ、一度首を傾げるが黙って着いていく
奥の間
「…何だ、これ」
飾られた巨大な剣
異常なまでの鎖で縛り付けられており、さらには札まで張られている
「大剣…、やな」
「ほなけど、何や……?欠けとるで」
「あぁ、本当だ」
「ボロボロだな、これ」
「そうじゃ」
「で、コレがなんや?」
「見るからにヤバめの奴やろ?」
「何か曰く付きっぽいな」
「持つと呪われるみたいな」
「うむぅ、間違ってはおらぬ」
「えっ」
「だが、触らなければ良い」
「コレは、この寺を支える最も大事な物なのじゃ」
「あー、要するに触るな、って事ね」
「了解了解」
「うむ」
「で、頼みたいのじゃが」
「うん?」
廊下
「…」
「…」
「顔を上げよ」
「いや…、何なの」
「響さんと言い、灯笠さんと言い…」
「何?俺達のこと嫌いなの?」
「お前…、30mぐらいやろ…」
「頑張るが良い!」
「雑巾の水はここから暫く行った所にあるのじゃ!」
「50m離れた所にな!!!」
八十八山
麓
「…暑いッス」
「我慢しろ」
「何なんスかぁー…」
「最近はよく橋唐さんと仕事するッスね」
「…そうだな、霊魅」
読んでいただきありがとうございました