八十八山へ
四国
徳島
徳島駅
「…あのさぁ」
「うん?」
「俺、響さんが移動手段を用意してるって聞いたんだけど」
「そやな」
「この自転車は嫌がらせか」
「…そやな」
「おま…、響さんの家まで何キロあると…」
「…気合いやろ、気合い」
「頑張るで」
「…おぅ」
響の家
ピンポーン
ガチャッ
「おぉ、来たか」
「待っとったで」
玄関から覗く怨霊2人
「…」
ガシッ
「閉めるなぁあああああああああああああああーーーーー…」
「怨霊を呼んだ覚えは無い」
「怨霊作成しくさった癖に何言うてんねん……」
「普段から足腰鍛えとらんけんや」
「アンタと一緒にしぃなや」
「あ、あの…」
「あぁ、リンデルちゃん」
「久しぶり」
「こ、こんにちは…」
「まぁ、部屋に入れや」
「話があるけぇな」
「へいへい」
「…は?」
「ほなから、今言うた通りや」
「いやいやいやいや…」
「…いやいや」
「何の冗談ですか」
「いや、冗談ちゃうし」
「お前等には寺ぁ行って貰う」
「ほんで、そこの住職の仕事を手伝って来い、言うてんねん」
「何で俺が!」
「暇なんやろ?」
「う…」
「俺が手伝う意味が解らん」
「因みに、その住職ってのは灯笠な」
「…え?マジ?」
「マジ」
「灯笠って誰だ?」
「響さんの知り合いでな」
「俺も電話で何度か話したねんけど、実際の会った事はないしなぁ」
「ほんでな、ワイは行けんねん」
「「何で!?」」
「別に用事があるんや」
「お前等だけで行ってこい」
(面倒事を押しつける気だな…)
(姑息やな、姑息)
「聞こえとるぞ、お前等」
「「…」」
「リンデルも、ちぃとロンドンに帰って貰わなアカンけぇな」
「え…」
「…お前等、コレは秘密やけどな」
「最近はかなり軍と反軍が対立しとるんや」
「ここも狙われたらヤバいで」
「そ、そりゃ、そうやろうけど…」
「ロンドンならソルナもゼルアも居る」
「安心やろ?」
「…えっと」
「要するに俺と一斑は、そのお寺に」
「リンデルちゃんはロンドンに」
「響さんは別件で仕事に、って事ですか?」
「ん、そういうこっちゃ」
「ほな、ワイはリンデルを空港まで送るけぇな」
「ほれ」
「地図?」
「印付けとる所に寺ぁあるけぇ」
「あ、ほうや」
「コレも持ってけや」
響は冷蔵庫から大量のケーキを取り出す
他にも色々なお菓子も大量に
「…何や?この量」
「灯笠は甘いモン好きって言わんかったか?」
「い、いや…、それにしても多すぎませんか」
「良ぇねん良ぇねん」
「んな細かい事気にしぃなや」
そう言うと、響は2人の背中をバンッ!と叩く
思わず2人が痛ぇっと声を漏らすが、響は大声を出して笑っている
「っと、そろそろ時間やなぁ」
「来たトコで悪いけど、家閉めるけぇ早ぉ行けや」
「あぁ、はい」
「解りました」
「…なぁ、蒼空」
「はい?」
「お前…」
「…いや、何でもない」
「?」
「何や、響さん」
「アンタが言葉濁すなんざ珍しいなぁ」
「おい、ほのワイが悩んだ事ない、みたいな言い方止めろや」
「「「えっ」」」
「え?」
軍病院
「…む」
「あぁ、起きましたか?之乃消さん」
「千両殿…?」
「あぃや、ここは軍病院でござるか?」
「えぇ、そうです」
「…どうやら」
「えぇ、ご察しの通り」
「…何と情けない事か」
「申し別けないでござる」
「いえいえ…、私の油断もありましたから」
「おや、レウィン殿は…」
「今はNo,6様と会談中です」
「ふむ、そうでござるか」
「…馬常は?」
「資料室の方へ行っているはずですが」
「解ったでござる」
「…となると、気絶していたのは拙者だけでござるか」
「仕方ないですよ、あの毒を全身に被ったんですから」
「うぅむ、まだ修行が足りないでござる」
唸る之乃消
千両はそれを見て少しだけ微笑む
「…む?」
「どうしました?」
「いや…、見間違いでござろうか」
「今…」
「?」
「…いや、そんなはずがないでござろう」
「どうしたのです?」
「いえ、拙者の見間違いでござる」
「…?」
「はぁ、そうですか」
院長室
「最近のエロ本はレベル高いなぁー」
コンコンッ
「はい、どぞー」
ガチャッ
「昼間から、そんな卑猥な本を鑑賞とは」
「随分と良いご身分ですね」
「…ん?あー」
「神無か」
「お久しぶりですね、藤登」
「今は院長だ」
「その名前で呼ぶのはテメーぐらいだぜ」
「おやおや、そうですか」
「で?何の用事だ」
「俺も暇じゃないんでね」
「その本を持ってよく言いますね」
「こりゃー、アレだよ、お前」
「男の嗜みだ」
「…はぁ」
「おぉう、リアルなため息は心にグサッと来るぜ」
「それはそうと、何の用事なんだ」
「あぁ、そうでした」
「貴方にお願いがありまして」
「お願いだぁ?」
「-------」
「…」
ぼそりと動く神無の口
それを見て院長は本を机に置く
「どうでしょうか?」
「断る」
「…断りますか」
「当然だ」
「俺はやらん」
「何故?」
「何故…?」
「それはお前が最も解ってる事だろうが」
「奇怪神、白羽さん、美穹、査阿、俺、蜂木、そしてお前…」
「俺達7人で行った、あの計画は…」
「正しく地獄だった」
「…」
「13人…、いや?」
「失敗作を入れれば14人だな」
「彼等を弄んだんだよ、俺達は」
「せめてもの罪滅ぼし、と俺はこの職に就いた」
「その罪滅ぼしを、また邪魔するつもりか?」
「…そうですか」
「貴方なら、そう言うと思っていました」
「どうせ蜂木にも断られてんだろ」
「いえ?まだ言っていません」
「そうか、じゃぁやめとけ」
「無駄だ」
「…そうですね」
「では、失礼します」
「あぁ、待て」
「何です?」
「お前、エロ本いる?」
「いりません」
読んでいただきありがとうございました