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秋鋼  作者: MTL2
306/600

昔の御伽話

地下施設


「モルバ…?」


「本名じゃないがね」


「…でも、敵に変わりない」


「あぁ、そうだ」

「だがね、俺も暇じゃぁない」


歩き出すモルバ

森草は構えるが、それを無視し彼は通り過ぎる


「…?」


「俺の目的はコレだ」


彼が手にした槌

とても、この世の物とは思えない造形


「…?」


「五紋章と言ってねぇ」

「まぁ…、持ってみると良い」


ポイッ


「え?」


森草に投げられた槌

彼女はそれに手を伸ばす



ぞくっ



「ーーーーーっっ!!」



ガラァンッ



「おぉ?良い勘してるねぇ」


「何…!?コレ…!!」


「言っただろう?」

「[憑神]の道具」

「五紋章さ」


「[憑神]っ…!?」


「カミサマ」

「命を司るカミサマだ」


ゲラゲラと笑い、槌を拾い上げるモルバ

森草は警戒して1歩2歩と下がり始める


「恐怖ってのはな?概念でしかねぇ」

「物理的に表すのは不可能だ」

「だが…、もし、それを物体で表せるとしたら?」


「ど、どういう事よ…」


「それがコレさ」

「人の怨恨を吸い、取り込む物」

「まぁ…、コレは何でだか少ないけどな」


「…?」


「おっとぉ?解らないか」

「じゃぁ、少し昔話をしよう」


その場にモルバは腰を降ろす

そして、にやりと口元を緩めて語り始める


「昔々、5人の戦士が居ました」

「5人は世界を揺るがす悪魔を倒し、人々から神と崇められました」

「5人は五神と呼ばれ、五つの称号を王より賜りました」

「火、水、風、雷、岩」

「炎神、ガルドラ」

「水神、ウォルディ」

「風神、サイガ」

「雷神、雷火」

「岩神、ケイジ」

「この5人だ」


「な、何…」


「まぁまぁ、黙って聞けよ」


「ぐっ!?」

(口が…!!)


「5人は平和な世界で平和な生活を送っていました」

「しかし、悲劇は訪れます」

「ある男が死者を復活させようとしました」

「5人は止めようとしますが、逆に利用されてしまいましたー」


「むっぐっ…!!」


「息は出来るだろ?静かにしてろ」

「さてさて、ある男は彼等を利用して神様を呼びました」

「だけど、神様を呼ぶには依り代が必要でした」

「だから初めては失敗に終わってしまったとさ」

「それからその男を殺そうとした五神の内、4人は返り討ちに遭って死んでしまいました」


やれやれとモルバは首を振る


「時は流れて数百年後!」

「新しく4人の神様が生まれました」

「彼等はそれぞれの称号を継いで、神様となりました」

「また、別の場所に3人の勇者が居ました」

「3人の勇者はその男の野望を阻止すべく、旅を始めました」

「途中で医者と助手に会い、3人組に会い…」

「長い旅を経て8人になった彼等は男の野望を阻止すべく立ち上がりました」

「5人の神様も彼等に協力し、彼等は旅の途中で会った仲間達と共に男を倒しました…」


1人だけの拍手が地下施設に鳴り響く

森草はモルバを睨み、モルバは彼女を見て鼻で笑う


「しかし話は終わらない!」

「その男の部下が実は生きていたのです」

「長い間、その部下は準備を進めました…」

「長く長く長く…、ただ準備を進め」

「その部下は男を超える程の力を手に入れました」

「隠居生活を送っていた勇者達は必死に戦いました」

「しかし、勝てそうにもない…」

「結果、その部下に五紋章を全て奪われ、再び憑神を召還されてしまいました!!」

「ですが!それを1人の少年が止めたのです!」

「少年は自らの体に憑神の本体を封じて行方を眩ませたのでした…」

「おしまい」

「ただ、コレには続きがある」

「8人の勇者は、もうこんな事が起こらないように憑神の魂を別けて封じたのです」

「5人の神は、もう争いをしたくないと武器を差し出しました」

「そして、憑神の魂は封じられたのでした…」


パチンッ


「っっはぁ!」


「感想を聞かせてくれよ」


「…随分と長い御伽話ね」


「おとぎばなしぃ?」

「ギャハハハハハハハハ!本気で言ってんのか!?」


「…そんな空想話が御伽話じゃなくて何なの?」


「実話」


「そんな…」


「首狩島って島があってな?」

「そこは昔、聖域と呼ばれた場所だった」

「8人の勇者は2つ目の対策として世界をつなげたのさ」


「…?」


「急な話しすぎて解んねぇか?」

「当然だろうけどな」

「所詮は昔話だ」


立ち上がるモルバ

森草はびくりと体を震わせ、警戒する


「さて、俺は…」



ドタドタドタドタッ!!


「な、何!?」


地下施設になだれ込むアメリカ支部の兵士達

素早くモルバと森草を取り囲み、銃を向ける


「手を上げろ!貴様達は囲われている!!」

「逃げ道はないぞ!!」


「ないなら作るだけだ」



ぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちぶちっっ



まるで、操り人形の糸が切れたかのように崩れ落ちる兵士達

モルバは口が裂けたかというほど笑い狂う



「ーーーーーーーーーーーーーーっはぁ!腹が痛い!!」

「ギャハハハッハハハッハハハハッハハハハッハハハハッハハハッハハ!!!」

「…ハハハ、生きてるんだろ?」


モルバに銃口を向ける森草

しかし、その手はガタガタと震えている


「やめときな、テメーじゃ俺を殺せねぇよ」

「それとも無駄死がお好みか?」


「こんなっ…!簡単に人を…っ!!」


「…お前は馬鹿だな」

「人間ほど簡単に殺せる物もねぇぜ?」


「何をっ…!!」


「まだまだ甘いなァ…、小娘」

「クックック…」


槌を持ち、出口へと向かうモルバ

森草はガタガタと震えて銃口を向けはしているが、とても撃てる状態ではない


「じゃぁなァ…、小娘」


「貴方はっ…!軍の人間…!?」


「…元老院直属部隊所属だ」

「覚えときなァ」











E地区



「本部に連絡は?」


「完了したわ」

「もう少しで来るはず…」


ドスッッ


「かっ…!?」


「グランッッ!!」


グランの背中に突き刺さる針

彼女は痛みで表情をゆがめながらも大丈夫、と織鶴にサインを送る


「この針は…!」

「リグッッ!!」



そこに居たのはリグではない


いや、最早


人間ではなかった


「あー…あぁ」



眼球が潰れ

歯が抉れて

皮膚が焼け落ち

骨が飛び出て

臓器のあふれ出した


化け物



「あぁああああああああああああああああああ!!!」


狂ったように能力を吐き出す塊



「…コレは」


「人工能力装置の副作用よ…」


「え?」


「強化された装置は、精神に多大な影響を与える物だったの」

「それを長時間使用し、さらに私達の攻撃を加えた結果がアレよ…」


「…やっぱり、人工物は信用できないわね」







読んでいただきありがとうございました

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