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秋鋼  作者: MTL2
305/600

ステラとシルディ

私には、曾て好きな人が居た

軍学校で出会い、アメリカ支部で共に仕事をする仲だった


だけど、その彼は戦場で死んだ


相手が能力者だったから


[もし、彼が能力を持っていたなら…]


その想いから生まれたのが人工能力装置だった


元老院も神無総督も開発には賛成してくれた


莫大な費用こそ掛かったけれど時間は思いの外、要さなかった


人工能力装置


下級能力者程度の能力を発動条件なしで使用できる装置


歴史的!歴史的誕生!!


だけど、流石に問題が起きなかったワケじゃない



「がぁあああああああああああああああっっっっ!!」


「12番!苦しんでます!!」

「血圧上昇!!」


「人工能力装置を停止させて!早くッ!!」


ピーーーーーーーーー…


「…駄目です」


「ッ…」



実験は尽く失敗

死刑囚での実験だったが、それにも限度はある


「どうすれば…」


そんな時、最初の成功例が出た


私のクローンだった



「…コレ。は?」



彼女に知能はなかった

だから、子供を育成するように1から10まで全て教えた


私だけあって、飲み込みは早い


能力についても、すぐに覚えた



ドンッ!


「…まだ。上がる」


「無理はしないでね?」



能力は強力

本来の予想を遙かに上回っていた


だけど、それはつまり[強力すぎた]という事

能力限度を下げれば成功例が一気に増えた

ただ、それでも使う人間は限定される様だけれども



「この。紅茶。美味しそう」


「あら、良いわね」



月日が経つにつれて見た目は変わっていった

そして、その頃から名前が必要になってきた



「ステラー!」


「何?グラン」


「あ、いや…、貴女じゃなくて」

「クローンの方の」


「うーん、ややこしいわね」


「名前が必要じゃない?」


「…そうね」

「私のクローンだし…」

「シェンディ、シェンディ…」

「…シルディなんて、どうかしら?」


「良いわね」

「…ステラは2人目って事で[es]…」

「ステライスなんてどうかしら?」


「うん、格好良くて良いわね」

「シルディ・ステライスか…」

「喜ぶかしら?あの子」


「喜ぶわよ、きっとね」



名前

私の娘の名前


私はグランが羨ましかった


結婚して娘を産んだグラン

方や私は自分を殺し続けた


だけど、今は違う


シルディ


私の娘


私の私


シルディ------…



「どう?」


「良い。名前」


「良かった!」


「嬉しい。私」


「私じゃないでしょ?」

「私はステラって呼んでね」

「貴女はシルディ」

「シルディ・ステライス♪」


「…シルディ・ステライス。」


嬉しそうなシルディ

私も嬉しい

最高に幸せな日々



それも長くは続かなかった



「あら?地下施設が開いてるわね」


「おかしいですね、ちゃんと閉めたハズなんですけど」


「…待って」

「地下施設には…!」


「あ…」



嫌な予感がした


本当に、嫌な……




地下施設


バタンッ!


「はぁ…!はぁ…!!」


「…ステラ」

「これは。何?」


「シルディ…っ」


シルディの目前に広がる自分

自分の死体の山


「これはっ…」


「これ。私」

「これ。貴女」


「違うっ…!違うの…!!」


「ずっと。騙してた?」

「私も。いつかは…。」


「違う!シルディは違うの!!」


「何が?」


「違っ…!!」


「…。」



ガァアアアアアアアアンッッッ!!


「っ!!」


ステラに向かって火球を放つシルディ

外れこそしたものの、当たれば即死する威力である


「シルディっ…」


「…信じてた。のに」


ガシャァアアンッ!!


「待って!シルディ!!」

「シルディーーーーーーーーーっっっっ!!!」



それが、私達の別れだった






No,2裏切りの少し前

五大湖の遺跡で五紋章を発見した



「コレは?」


「解りません」

「ハンマーの形状をしていますが…」


「うー…ん」


「運びますか?」


「えぇ、お願い」


「おーい!運ぶぞ-!!」


「じゃ、研究班に回してね」

「コレは何らかの…」


その瞬間

私の耳にこの世の物とは思えない悲鳴が届いた


「何!?」


そのハンマーに手をかけた研究員が悲鳴を上げ、白目を剥き泡を吐いて倒れたのだ

彼は絶命し、周囲にも悲鳴の嵐が巻き起こった


「落ち着きなさい!!」

「ハンマーから離れて!落ち着いて行動するのよ!!」



後に調べて解った

それは五紋章と呼ばれ、人の怨恨などを吸う代物

あまりに危険だった


しかし、これには素晴らしい効果があった

発動条件の無効化

コレを加えれば、人工能力装置の威力を上げることができるのではないか?


私の予想は正しかった



「…なんて威力よ」



実験で、支部隣の空き地が消し炭となった


五紋章を利用した人工能力装置

コレを使えば、私でもNoに等しい能力が手に入る


コレをオリジナルとして、次々に人工能力装置を作り上げていった


結果として、従来の物よりも人工能力装置は強力となった



もう、本当は気付いていたのかも知れない


私は人工能力装置を、自分の研究を高めたかったんじゃない


ただ、ただ


自分の娘のために、最高のプレゼントを用意したかっただけ



最高のプレゼントを用意すれば戻ってきてくれると


そう、信じたかっただけなのかも知れない



1人の母親として



娘に戻ってきて欲しかっただけなのかも知れなかった





読んでいただきありがとうございました

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