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秋鋼  作者: MTL2
3/600

隻眼の男

万屋


カランカラ-ン


「ただいま」


「お邪魔します…」


「ただいまで良いわよ」

「どうせ働くんだから」


(強制なのか…)


カタカタカタカタ


「…?」


暗い室内に響くキ-ボ-ドを叩く音

デスクトップの光が一人の女性を映し出している


「…あの人は?」


「ああ、あの子は彩愛アヤメ 真無マム

「この万屋の情報係よ」


「はぁ…」


「挨拶しときなさい」


「は、はい」



「えっと…、よろしくお願いします」


「誰ですか?貴方は」


「蒼空 波斗です…」


「そうですか」

「紅茶が奥の戸棚にあるので取ってきてください」


「は、はい…」



カチャカチャ


コポコポ…


素早い手際で紅茶を入れる波斗


「どうぞ」


「ありがとうございます」


ゴクッ


「…!!」


「どうしたの?彩愛」


「この味は…!!」

「織鶴さん!織鶴さん!!」


「?」


ゴクッ


「…合格ね」


「合格ですね」


「波斗は料理得意なのかしら?」


「まぁ、一応」

「一人暮らしなんで」


「そう」

「…ご両親は殺害されたんだってね」


「!?」


「色々と調べさせて貰ったのよ」

「貴方を雇うに当たって…、ね」

「でも詳しくは解らなかったわ」

「教えて貰えるかしら?」


「…まぁ、隠す様な話でもないですから」

「俺がまだ…、小学生の頃の話です」

「冬の寒い日だったんですけど、俺が学校から帰ってきたんです」

「玄関から部屋に入ると…、床が濡れてて」

「母さんが水でも零したのかと思ったら…、血だったんです」

「前を向いたら斬り裂かれて寄り添うように死んでいた父さんと母さん」

「父さんと母さんを殺した男も居ました」


「どんな男だった?」


「外見は暗くてよく見えなかったんですけど…」

「暗い部屋に光ってる目…、眼帯をしてました」


「…!!」


「やっぱり…、ね」


「?」


「貴方のご両親が殺された様に…」

「私の兄弟、彩愛の彼氏、火星の昔の恩人も殺されてるのよ」

「その隻眼の男に」


「…知ってるんですか?」


「まぁ、座りなさい」

「軍についても説明するから」


「…はい」



「まずは…、そうね」

「能力について」


「能力…?」


「貴方が電柱や銃をひん曲げたアレね」

「私がドラム缶を投げ飛ばしたのもそう」


「あのサイコキネンシスとかテレパシ-とかの…?」


「それは念力系ね」

「他には属性系、身体強化系、特殊系」

「大きく分けて4つかしら」


「俺は?」


「特殊系よ」

「特殊系は未だに解明されてない能力が分類されるわ」

「私は身体強化系ね」


「あの馬鹿力ですか」


「そうよ」


「火星さんと彩愛さんは?」


「あの2人は無能力者よ」

「というより、この万屋には私達以外の能力者は居ないわ」


「そ、そうなんですか…」


「念力系は貴方の予想通り」

「触ってない物を吹き飛ばしたり、相手の心を読んだりね」

「属性系は火とか水とかを操る能力」

「大凡はそんな所ね」


「は、はぁ…」


「それと、能力について重要なのは発動条件」


「発動条件…?」


「貴方が血を媒体に物質を変換させる様に私にも能力を使うための条件があるわ」


「それをしないと使えないんですか?」


「そうなるわね」

「でも、使用前に条件があったり使用後だったり使用時だったりと条件は様々」

「貴方は血を流してないと使えないわね」


「血…」


「足の傷は痛むかしら?」

「帰りの車での治療じゃ不十分?」


「い、いえ…」

「かなり乱暴でしたけど、もう大丈夫です…」


「そう」


「織鶴さんも発動条件が?」


「私は力を使った分だけ睡眠を取らなければならないのよ」


「睡眠…」


「次は軍についてね」


「軍って…、自衛隊ですか?」


「違うわよ」

「あんな表面だけの集団、ゴミクズ以下よ」


「表面だけ…?」


「軍ってのは世界政府が作った能力者組織よ」

「私や貴方みたいなのが集まってる集団ってトコかしら」


「万屋も…?」


「違うわよ!!」

「あんな集団と一緒にしないで欲しいわね、全く…」

「私達は軍公認のフリ-の万屋なの」


「軍公認ですか?」


「そうよ」

「公認されてない能力者や犯罪に手を出した能力者は即抹殺されるわ」

「先刻の奴等みたいにね」


「…!」


「公認にされたら軍に入るか軍に使えるか」

「逆らえば即抹殺ね」


「そんなに厳しいんですか…」


「当たり前でしょ」

「能力と強さにも寄るけど、やろうと思えば能力者1人で国1つも落とせるんだから」


「俺も…、その能力者なんですよね」


「深い事は考えなくて良いわよ」

「だからこそ、貴方をスカウトしたんだし」


「もし断ってたら…?」


「そりゃ-、簡単な話よ」


親指を首筋に当て、横に流す織鶴


「よく解りました」


「よろしい」

「また軍には挨拶に行くとして…、ここからが本題」

「隻眼の男についてよ」


「…隻眼」


「そうよ」

「片目に眼帯をした男…、私達の大切な人を殺した男」

「この万屋はその男を捜すのが目的でもあるわ」


「その男は…、どんな男なんですか?」


「…解らないのよ」

「解らないことだらけ」


「え?」


「彩愛」


「はい」

「隻眼の男は数百年前から存在してます」


「数百年前!?」


「片目に眼帯、もう片目は紅い眼」

「そして奇っ怪な能力を使う男」

「江戸時代の文書にも載ってるほどです」


「そんな…」


「…つまり、ね」

「隻眼の男は化け物の可能性が高いわ」

「情報は皆無だし」


「…そう、ですか」


「…重い話はコレぐらいにしましょう」

「今度はこの万屋について説明ね」


「はい」


「この万屋の名刺」


織鶴から4枚の名刺を渡される波斗


「あ、どうも」

「え-っと、織鶴 千刃さん…」

「この万屋の主人ですね」


「そうね」


「で、彩愛 真無さん」

「情報処理係…、と」


「はい」


「火星 太陽さん」

「…雑用」


「「YES」」


「…鉄珠テツタマ シノブさん?」


「あ-、そいつには会ってなかったわね」

「あまり来ないんだけど、一応は従業員」


「実用係ですか…」


「要するに戦闘員よ」


「…はい」


「貴方の名刺も作らなきゃね」


「店名は…」

「シュウコウ?」


「違うわよ」

「秋に鋼と書いて秋鋼アキガネ

「この店の名前よ」


「は、はい!」


「じゃ、改めて」

「秋鋼にようこそ、蒼空 波斗」


「はい!!」


「雑務係に決定ね」


「…はい」





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