表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秋鋼  作者: MTL2
298/600

元五眼衆の男

C地区


「見えました、電波塔でス」


「ここからじゃ、まだ爆弾は届かないわね…」


物陰に隠れるセントと森草

織鶴達によってE地区に人が集められており、C地区には他の地区よりも人が少ない

さらには森草の能力

2人が敵に接触する可能性はきわめて低いのだ


「都合が良いわ」

「後は織鶴さんの連絡を待つだけ?」


「えぇ、そうですネ」

「森草さんのお陰で人は寄ってきませんシ」



ゴリッ



「…何の音?」


「エ?」



ゴリッ



「何か…、削ってるような…」


「…確かに、音ガ」



ゴリンッ




「止…」



ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッッ!!!



「「!?」」


「あ゛ー………」

「発見」


「敵ッ…!!」


金の坊主頭に剃り込みを入れた男

耳には銀のピアスをしており、手にはメリケンサックが握られている


「シドウンさン…!!」


「おう、セント」

「お前か」


「くっ…!!」


銃を構える森草

しかし、その瞬間に銃はシドウンによって弾き飛ばされる


「森草さン!!」


「しまっ…!」


「へいへい、落ち着け落ち着け」


やれやれと首を振るシドウン

両腕を上げ、戦闘の意思はない事を2人にアピールする


「…?」


「何が悲しくて恩人の娘と戦わにゃならんのだ」


「え、えっと…」

「セントさん…」


「う、嘘をつくような人じゃないのでデ…」


「当たり前だ!!」

「…ん?待て」

「森草 蜜柑か…?」


「え、えぇ…」


「ーーーーーーーーーーッッッ!!!」


胸から溢れる言葉をせき止める様に、シドウンは肩を振るわせる

小さく言葉を漏らしながら、割れ物を扱うかのように恐る恐る森草の手を握る


「和鹿島さんの…?」


「…ボスを知ってるんですか?」


「五眼衆の選択の森草…!」

「あぁ…!なんと数奇な運命かっ…!!」


「…あの?」


「森草さン」


「な、何?」


「…シドウンさんは、元五眼衆の一員なんでス」


「!?」


「ファグナを覚えているかい?」


「混沌のファグナですよね…」

「彼が…?」


「…俺とファグナは腐れ縁でな」

「よく連んでたんだが…」

「…ある時、ファグナが言い出した」

「ある組織に勧誘されたって」


「…それが五眼衆」


「あぁ、そうだ」

「俺も誘われたんだが…、断ったよ」

「だけど、ある人に出会ったんだ」


「だ、誰ですか?」


「和鹿島さんだ」

「あの人は素晴らしい人だった」

「始めは胡散臭い奴かと思ったがな、話す度に惹かれていったよ」

「その頃だったか、セントと会ったのも」

「まだ、こぉーんなに小さいガキだったのになぁ」


クックックと笑うシドウン


「…それから、俺は五眼衆に入った」

「様々な仕事をしてな」

「ファグナと一緒に人工能力装置を流したのも俺だ」


「…そうですか」


「…そして」

「俺を…、逃がしたのは和鹿島さんだ」


「逃がした?」


「ロンドンでの最終決戦の前に、な」

「五眼衆を追い出された」


「どうして…」


「言ってなかったか?あの人が」

「逃げたい奴は逃げろ、と」


「あ…」


「決して抑制や要請の為の言葉じゃなかった」

「本当に…、心からの…!!」

「…そうして、俺は逃げたんだ」

「だけど、後悔はしてないよ」

「あの人の思いを…、継げるから」


「思い…?」


「…あの人はな、軍を正したかったんだよ」

「それなのに…!それなのにっ…!!」


悔しそうに俯くシドウン

セントは目を背け、森草も小さく俯いている


「…いや、すまない」

「今はそれ所じゃないな」


シドウンは苦笑し、頭をボリボリと掻きむしる



「…」


この人は敵?


とても、そうは見えない

セントさんも警戒してる様子はないし、味方…?



「疑っているのか」


「!」


突如として投げかけられる問いかけ


「…」


シドウンは全てを見透かしたかの様に森草の目を見る


「…いえ」


「何、嘘はつかなくて良い」

「解るんだよ」


「せ、精神系…?」


「いやいやいや」

「何となく、勘だよ勘」


「勘って…」


「…俺はな」

「いろんな人間を見てきた」

「これから死にに行く人間」

「覚悟を決めた人間」

「希望に満ちた人間」

「絶望に堕ちた人間」

「全てを知った人間」

「…見てきたんだ、俺は」


「シドウンさン…」


「だから」

「だからこそ!」

「…君達には生きて欲しい」


シドウンは地面に足で絵を書き始める


「今、ここはC地区だ」

「だけど、この道を伝うと施設の屋根に出る」

「そこなら見張りは居ないはずだから、安全に外に出られるだろう」


「え…?」


「…君達が、俺達がやろうとしてる事を止めようとしてるのは解ってるんだ」

「だからこそ、逃げてくれ」


「…で、でも」


「君の仲間も、例え捕まったとしても助かるように俺がステラに申請する!」

「だから、だから逃げてくれ…」


「どうして…」


「…君達には抹殺命令が下ってるからだ」


「!」


「カムルが進言したんだよ」

「アイツは仲間とかいうのを嫌い、結果論を好くからな…」


「…でも、私達はやらなきゃ駄目なんでス!!」

「ステラさんを止めるためにモ…!!」


「止める…?」

「止めるのは軍の方だッッ!!!」


「っ…!?」


「…っと、すまない」

「急に大声を出して…」


「…い、いエ」


「どういう事ですか?」

「軍を止めるって…」


「それは…」


言っていいのか?

この子達に


真実を



「…いや、すまない」

「言えないんだ…」


「…?」


「…ともかく、逃げた方が良いのは確かなんだ」

「奴が…、奴が来る前に!」


「奴…?」


「…シルディ・ステライス」

「祭峰側の人間だよ」



読んでいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ