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秋鋼  作者: MTL2
296/600

過去への固執

アパート


波斗の部屋



「どうですか?」


「美味い…」


「おぉ!それは良かった」

「青椒肉絲なんて滅多に作らないから、ちょっと不安だったんですよ」


「うん…、いける…、美味い…」


「じゃんじゃん食ってくださいよ!」

「まだまだ有りますんで!!」


「いや…、作りすぎでしょ…」



コンコンッ


「はーい!」


「蒼空君-、入って良いかな-?」


「あぁ、大家さん!」

「どうぞどうぞ!」


ガチャッ


「お邪魔しまー…」

「っと、お客さん?」


「えぇ、馬常さんです」


「へぇ、馬常さんか」

「よろしくお願いします」


「…どうもー」


「お茶お茶」

「…ってないし」


「あー…、買ってくるよ」


「俺が行きますよ、馬常さん」


「良いって良いって…」

「ご飯食べさせて貰ったし…」


「そ、そうですか…?」

「それじゃ、お願いします」


「はいはーい…」

「…道解らない」


「あぁ、私が案内しますよ」


「どうも…、査阿さん」


「いえいえ」

「では、行きましょうか」


「うん…」


ガチャッ


「あぁ、そうだ」

「蒼空君」


「はい?」


「今度、私の実家に来ないかい?」

「お父さんの写真とかあるから」


「…はい!お願いします」


「うん」



バタンッ



「ふぅ…」

「今日はお客さん多いな…」

「…あれ?」

「俺、馬常さんに大家さんの本名言ったっけ?」






路地裏


「…久しいな」


「全くだねぇ…」

「どう…、あの後は」


「…何、ある人物に拾われてな」

「今も、その元で働いている」


「査阿…、だっけ」

「前の名前は」


「あぁ」

「今は虚漸だ」


「へぇ~…、カッコイイね」


「…あの人がくれた、名前だからな」


「…そうだねぇ」

「で…、さ」

「聞きたいんだけど」


「何だ」


「創世計画」


「!」


「知ってるよね…」


「…貴様」


「昔の馴染みでしょ…」

「白羽さんの下に着いてた…、さ…」


「…あの人の事を思うのならば、忘れる事だ」

「知ったとて貴様にどうこう出来る代物ではない」


「真実をね…、知りたいんだよ…」

「科学者で研究者だからさ…」

「常に真実を追い求めなきゃ気が済まない…」

「…君もそうでしょ?」


「…」


「…教えてくれるかな」


「…何処まで知っている」


「取り敢えずは…、13人の実験台」

「五紋章の秘密…、ぐらいかなぁ」


「…良いだろう」

「全て、教えてやる」











「…!!!」


「…全て真実だ」


「…笑えないねぇ」


「笑えてたまるか」


「じゃぁ…、蒼空は…」


「あの人達の息子だ」


「…あはは-」


「笑ってんじゃねぇよ」


「なるほどねぇ…」

「じゃぁ、君は見張り役ってワケだ…」


「そういう事だ」


「…いつから?」


「さぁな」

「遙か古代、人間が認知する前から[それ]はあった」

「そして、奴はそれを復活させようとしている」


「…それを阻止するために?」


「…あぁ」


「なるほど…」


「この事を知った時点で、もう後戻りは出きぬぞ」


「解ってるよ…、とっくにね」

「面白い事が聞けたなぁ…」


「…馬常よ」


「んー…?」


「No,3の事は知っているか」


「…何が?」


「死んだぞ、奴は」


「…わお」

「今日は驚愕驚嘆驚倒の日だねぇ…」


「…本心で言っているのか?」


「まぁ…、本心かなぁ」


「ふん、相変わらず内の読めん奴だ」

「…いや、今はそうでもないか」


ギリギリと肉に食い込む馬常の爪

いつもの、気怠そうな表情とは裏腹に彼の掌は血でにじみ、血を滴らせている


「貴様はいつまでそうする?」

「手綱の事を忘れ、のうのうと生き続けるのか」


呆れたように吐き捨てる虚漸

その瞬間、馬常の表情は憤怒に歪む


「黙れ…、ブチ殺すぞ…!!!」


虚漸は少しだけ口元を緩ませ、見下すように言葉を吐く


「それが本来の貴様の姿だろう?」


「…」


「何故、隠す?」

「それ故に貴様は手綱を殺したからか?」

「過去を背負い、現在に逃げ」

「逃げ続け逃げ続け」

「まだ逃げ続けるのか?」


「…っっ」


「投げ出せ」

「逃げ出せ」

「泣き出せ」

「全てから背を向けたお前に何が見える?」



ゴゥッッッッッッッッッ!!



虚漸の眼前へと突き出される傘の切っ先

しかし、虚漸は動じずただ馬常を見ている


「…」


「何だ?俺は何か間違った事を言ったか」


「…もう、良い」


「フン、また逃げるのか」


「…あぁ」

「逃げるよ」

「逃げて逃げて逃げ続けて…」

「そうして…、俺は生きてきた…」

「今までも…、これからも…」


「それで良いのか」


「…世間一般のヒーロー論理は好きじゃぁない」

「自己犠牲大好きの…、ドマゾ共の論理だから」


「酷い言い様だな」

「貴様の弟はそれに憧れていたのに」


「…もう、昔の話だ」


「それに固執しているのは貴様だ」


「…」


「なぁ、馬常よ」

「あの事件は仕方のない事だった」

「だが、憎いのだろう?あの事件が」

「ならば、こちらへ来い」

「全てを償い、先へ進む事が出来る」

「…あの人の思いも継げる」


「…勧誘、だよね」


「あぁ、そうだ」

「貴様ならば歓迎しよう」


「…うーん」

「いや…、断っとく」


「…何故?」


「確かにさ…、君の言う通りだよ」

「過去に固執し、俺は自分を捨てた…」

「だけどさ…、今は…」

「今は…、好きなんだ」

「現在が…、今が…」

「皆が…、仲間が…」

「好きなんだ…」


「…そうか」


キンッ


馬常の首元へ当てられる刃

虚漸は冷淡な目つきで馬常を睨み、静かに呟く


「では、殺す」


「…良いんじゃないかな」

「でも、ただじゃぁ…、死ねないよね…」


「この距離ならば能力を発動されるよりも早く頸動脈を斬れる」


「…眼がマジだね」


「あぁ、マジだ」


「…」


「…」


「馬常」


「んー…?」


「…過去のよしみだ」


カキンッ


虚漸は馬常を傷付ける事なく、刀を鞘へと仕舞う

馬常は首を鳴らし、小さくため息をつく


「人の事…、言えないじゃん」


「…フン、知った事か」


「ありがとって…、言わないでも良いか」

「…帰る?見張りさん」


「…あぁ、そうだな」




「馬常」


「…ん?」


「お前は…、あの人の事を、白羽さんの事を覚えているよな」


「恩人を忘れる程、薄情じゃないってねぇ…」


「…そうか」


満足そうに微笑む虚漸

馬常もため息混じりに少しだけ微笑んだ








アパート


波斗の部屋



「…お茶は?」


「「あ」」





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