突貫
アメリカ郊外
「どうする?」
広がる荒野
織鶴、グラン、彩愛、火星は車外で話をしている
森草とセントは車内で休んでいる最中だ
「…本部との連絡は取れないの?」
「駄目ですね」
「電波が立ちません」
「恐らく、アメリカ全土に…」
「…ったく、こんな時だけ機転効かせるわね」
「空港には張られてるでしょうし…」
「…国境も無理でしょうね」
「ステラがそんな凡ミスをするはずがないわ」
「それよりも、No,4はどうなったんだ?」
「こっちに来てるんだろ?」
「…五大湖の遺跡に行ったわ」
「どうして?」
「今更、隠すような事でもないわね…」
「五紋章よ」
「!」
「各地にNoが取りに行ってるの」
(それで、ゼロが…)
「…グラン、セントちゃんが落ち込んでる理由は」
「えぇ、解ってる」
「解ってるわ…」
「…母親の貴女がしっかりしてあげなさいよ」
「大事な人を2回も亡くしたのよ…?」
「私だって!!」
「…私だってね」
「何回も…、何回も…!」
「…グラン、織鶴」
「今は…、よそう」
「その話はここから脱出してからだ」
「…えぇ、そうね」
「問題は軍本部と連絡が取れない事ね」
「織鶴ならアメリカ支部に乗り込んでも大丈夫なんじゃないか?」
「睡眠ガスとか捲かれたら終わりだけどね」
「うっ…」
「相手はアメリカ支部よ」
「反軍勢力じゃないんだから、私の弱点は完全に把握してるでしょ」
「参ったな…」
「…本部と連絡さえ取れれば良いんです」
「アメリカ支部の電波塔を薙ぎ倒せば妨害電波も止むでしょう」
「他の電波塔からの電波で携帯は使えるわね…、よし」
「だったら、総出で…」
「3本よ」
「え?」
「アメリカ支部の電波塔は3本あるの」
「…3本」
「相手もそれは重々承知でしょうし、見張りも立ててくるわ」
「それに…、1本ずつ倒したんじゃ電波発信源を移動されかねない」
「同時に倒す必要がある、って事?」
「少なくとも、誤差は少なめにね」
「3本倒した後も移動はされるでしょうけど…、その間のタイムラグを利用すれば良い」
「電波を傍受されないか?」
「場所が割れるぞ」
「倒す瞬間だけならOKよ」
「どうせ倒せばバレるわ」
「…そうだな」
「問題は班分けね」
「…私とグラン!」
「彩愛と火星!!」
「森草ちゃんとセントちゃんよ!」
「な!?」
「森草ちゃんは能力者よ」
「戦闘向きじゃないけど、隠密行動に向いてるの」
「戦闘になっても逃げ切れるはずよ」
「…破壊は?」
「火星」
「あぁ」
車の荷台から武器を取り出してくる火星
そこには手榴弾や銃、弾丸などが多く乗っている
「手榴弾があれば大丈夫だろ」
「お願い」
「俺も持って行くからな」
「な、何でこんな…!」
「銃所持が許されてる国で何いってんの」
「日本の百倍簡単に集められたわよ」
「なるほどね…」
「森草ちゃん!セントちゃん!!」
ガラッ
「は、はい、何でしょうか?」
「コレ」
ポンッ
「きゃぁっ!?」
「ピンは抜いてないから大丈夫よ」
「しゅ、手榴弾…」
「良い?今から計画を話すわ」
「まず私がアメリカ支部に突貫をかける」
「当然、混乱するでしょうからその好きに他の皆は侵入」
「グラン、彩愛、セントちゃんは支部内の地形を把握してるでしょ?」
「だから、私とグランはA地区で合流するわ」
「電波塔があるのは?」
「C地区、D地区、E地区です」
「…私とグランがE地区」
「彩愛と火星がD地区」
「森草ちゃんとセントちゃんがC地区ね」
「「了解」」
「わ、解りましタ」
「負けそうになったら逃げれば良い…、と言いたい所だけど」
「今回は電波塔破壊を最優先よ」
「如何なる手段を用いても破壊しなさい」
「「「「…了解」」」」
アメリカ支部
A地区
「…暇だなぁ」
「しっかりしろ!見張りだろ?」
フェンスの周囲を徘徊する2人の見張り
「だってよ、あの防衛プログラムってのがあれば軍本部に連絡は取れねぇんだろ?」
「アキガネって連中が脱走したらしいぜ」
「あきがねぇ?何だ、そりゃ」
「お前…、知らねぇのかよ」
「元No,4だよ!織鶴 千刃が居るんだ」
「へぇー」
「他にもデータバンクの彩愛 真無っての」
「[軍の女の敵ナンパ野郎!TOP10]の1位、鉄珠 忍」
「あー、そいつは知ってるぜ」
「それと、無能力者のカセイ?だったかな」
「もう1人の新人も居るらしい」
「…何だ、そんなに凄くないじゃん」
「No,4意外は雑魚だろ」
「…いや、そうでもないだろ」
「牢獄の壁を破ったのはカセイらし…」
ガシャァアアアアアアアアアアアアンッッッッ!!!
「な、何だぁ!?」
「トラックがフェンスに突っ込んだぞ!!」
「アレはアキガネの連中のトラックだ!!!」
「連絡…ッ」
パァンッッ!
「がっ…!!」
「おい!!」
ゴキンッ
「ぐぇっ…!」
一瞬にして2人の見張りは地面に倒れ込む
突っ込んだトラックの窓から覗く銃口からは煙が立ち上っている
「…火星じゃなくて火星だ」
「馬鹿な事言ってないで、行くわよ」
「おう」
日本
商店街
「夕食はこんな所かな、っと」
「明日出発だし…、準備もしなきゃな」
片手に野菜や肉が入ったビニール袋を抱える波斗
激しい戦争を生き抜き、特売牛肉を手に入れてきたのだった
「はぁ…、仕事ないと暇だなぁ」
「…あ」
「ん?あぁ、馬常さん」
「どもー…」
「何か元気ないですね」
「どうしたんですか?」
「暇で暇で…」
「あー、ゼロさんと委員長、セントさんも居ないんでしたっけ」
「ゼロ、何処に行ったのかなぁ…」
「え?ゼロさんは…」
「うん?」
「…っ、いえ!何でもないですよ」
「あー…、そう」
(まだ…、知らないのか…)
「はぁー…」
「あ、そうだ」
「良かったら飯、食いに来ませんか」
「え?良いの…」
「えぇ、俺も1人で暇だったんです」
「アホ珠…、じゃなかった」
「鉄珠さんも帰ってきませんし」
「んー…、じゃぁ、お願いしようかなぁ」
「晩ご飯なに?」
「青椒肉絲です」
「おー…、良いねぇ」
「いただくよ…」
「はい!」
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