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秋鋼  作者: MTL2
288/600

蕎麦屋の3段盛特製蕎麦

「…えーっと」


何してるの?アレ



馬常の目には手をかざすレウィンと宙に向かって弾丸を撃ち続けるラグドが写る


え?何…?


幻術…、かなぁ



「馬常さん!早くこちらへ!!」


「え?あぁ…、うん」




「…どういう事?アレ」


「…先刻、私は[概念]と言いましたね?」


「言ったねぇ…」


「それなのです」

「レウィン様の能力は現実に作用する幻術」

「現実と幻術の間の壁という[概念]を打ち壊す[概念]」

「念力系の精神系において、恐らく最強の能力です」


「…でも、別に今は」


「えぇ、今は発動していません」

「まだテリトリー内ではありませんから」


「…やっぱり有るんだ、テリトリー」


「えぇ、そうです」

「念力系の殆どにはテリトリーが存在しますから」


「…でも、あれだけ離れてても幻術が効くんでしょ?」

「テリトリーに入ったら…」


「無事では済まないでしょうね」


「…ふーん」


「之乃消をお願いします」

「私が、奴を…」


「もう満身創痍でしょ…」

「俺が行くって…」


「しかし…」



ポタッ…


「う…」


「レウィン様!!」


「は、鼻血…?」


「くっ…!!」


「がっはぁ…!!!」


膝を突くラグド

ぶらんと片手を垂らし、ぜぇぜぇと激しく息を切らしている


(何だったんだゼ…!?今のは…!!)

(幻術!?それにしてはリアル過ぎる…!!)

(だが…、腕はあるんだゼ…!!)


パァンッッ!!


「きゃっ!!」


レウィンの右足に直撃する銃弾

がくりと膝を落とし、屈みながらも悲鳴を押し殺している


「くっ…ん…!!」


「レウィン様ァ!!!」


「レウィンちゃんを助けて」

「俺がアイツを引きつけるから」


「解りました!!」




ゴォンッッッ!!


「腹に銃弾を受けといて動けるのか…!だゼ…!!」


「…気合い?」


ゴッッ!!


「ぐぁっ…!!」


「気合いじゃ限度もあるんだゼ…!」



「レウィン様!!」


「千両ぃ…」


「傷が…!くそっ…!!」

「馬常さん!!」

「…!」


千両の目に飛び込んできたのは気絶した馬常

そして、彼に銃を突き付けるラグド


「…今度こそ、終わりだゼ」

「そこで見てるだけなら見逃してやるんだゼ」


「ぐっ…!」


「嫌なら、今からお前等全員が神様に会うことになるが…」

「どうするんだゼ?」


「…ッ」


奥歯を噛み締める千両

今、自分が置かれている状況は


仲間は戦闘不能

主は血にまみれ苦しんでいる

そして、人質まで取られている


最早、この状況に置いて


「…解りました」


勝てる見込みなど、無いのだ


「物わかりが良くて助かるんだゼ」

「じゃぁな」



ラグドは銃を仕舞い、その場を立ち去った










日本


蕎麦屋



ガララララッ


「どもー」


「あら、布瀬川ちゃんじゃないの」

「こんにちは」


「こんにちは~」

「どう?売り上げは」


「いつも通り、繁盛させて貰ってるわよ」

「それにしてもどうして来たの?」

「出前ならするのに」


「ずっと籠もってちゃ気分悪くなっちゃうから」

「お蕎麦お願いできる?」

「3段盛特製蕎麦!」


「…え?」

「アレを食べるの?」


「えぇ、そうよ」

「駄目かしら」


「構わないわよ~」

「食べられるのなら、ね?」


クスクスと笑いながら厨房へと入っていく女将

総督、白月、院長は従業員に案内されて奥の間へと入っていく



「…何だったのですか?3段盛特製蕎麦とは」


「ゼロがね~、No,3になった時に出来たお祝い蕎麦なの!」

「限られた人間しか食べることができないという伝説のお蕎麦よ!」


「は、はぁ…」


「…お前、食えんのかよ」


「残したら白月達と食べるわよ」


「…お前なぁ」



ガラッ


「はい、お待ち遠様」


運ばれてきたのは巨大な蕎麦の塔

3つに重ねられたそれは高々とエベレストの如くそびえ立っている


「…布瀬川様、コレは」


「さて、食べるわよ」


「で、ですが…」


「いただきまぁーーーーーす」




10分後


「無理」


「だから言ったのに」

「お前、三分の一でギブかよ」


「白月食べてぇ~…」


「ふ、布瀬川様がお口付けなされた物など…」


「…汚い?」


「…いただきます」


「俺も下一段貰うかなぁ」

「くれくれ」


「どうぞ」


「重っ!?」


「流石、特製蕎麦ね…」






30分後


「「ご馳走様でした」」


「いやー、食った食った」


「流石、院長様」

「男性はよく食べられますね」


「よく食べられるわね」


「本来は布瀬川様がお召し上がりにならなければならないはずですが…」


「…さ、精算精算」





「女将さん、ごちそうさまでした」


「はい、お粗末様」

「3300円になります」


「3尽くしだなぁ、オイ」


「安い物よ~」


「私が出しましょう」


「良いの良いの!」

「はい、3300円丁度!」


「はい、ありがとうございます」

「また来てね?」


「えぇ、勿論!」


「あぁ、そうだったわ」

「忘れる所だった」


女将はレジの裏から花を取り出し、布瀬川へと渡す


「綺麗でしょう?」

「店に飾ろうと思うのだけれど、どうかしら」


「花蘇芳ね」

「寒緋桜も?」


「そうなのよ」


「季節外れねぇ」


「だからこその風流よ?」

「知り合いの園芸家がプレゼントしてくれたの」


「その園芸家は随分と季節外れなのを送ってくれたわね」

「何処に住んでるの?」


「ロンドンよ?」


「ロンドン、か」

「今度、ウェスタにも送って貰いましょ」


「…布瀬川様、そろそろお時間が」


「あ!そうだったわ」

「仕事放り出してきたんだった」


「あら、駄目じゃない」


「えへへ~」


「俺もそろそろ帰るか」

「手術の途中だし」


「…アンタ、よく院長で居られるわね」


「流石だろ?」




読んでいただきありがとうございました

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