クラウンVSラグド
サハラ砂漠
「暑゛ぅー…」
「馬常さん、我慢してください」
「レウィン様ですら何も言わずに耐えていると言いますのに」
「だってぇ~…」
「千両が背負ってるし…」
「之乃消が日陰作ってるじゃん…」
日傘でレウィンに日陰を作る男
紫色の髪
武士の様な格好と、腰に差した刀
草履を履き厳格そうな表情を保っている
「おや、それは勘違いでござろう」
「拙者はレウィン殿の為にしているのでござる」
「しかも、ござるって…」
「武士じゃないんだから…」
「拙者、東洋かぶれではござらん!!」
「西洋人だよね…?」
「本名はノノギルア・ミルッツィオ」
「オーストラリア支部生まれで、オーストラリア支部随一の実力の持ち主です」
「日本文化が大好きだそうですね」
「いやはや、千両殿には敵わぬでござる」
「やっぱり…、千両って強いの?」
「我々、クラウンの中では最も強いでござろうな」
「レウィン殿は不安定な部分もお有りでござるからな」
「不安定?」
「之乃消さん、言ってはいけませんよ」
「暗殺特務の人間は能力を知られるのは…、あまり」
「おぉ、そうであったでござる」
「これは失礼」
「い、いや…、別に良いけどさ…」
「で…、サハラ砂漠の遺跡だっけ…?」
「そこに五紋章があるの…」
「あくまで候補ですがね」
「情報として有力なだけであって、確実ではないのでしょう」
「無かったらどうしよう…」
「別に大丈夫でしょう」
「各地にNoが向かっていますし、無ければ無いで良いではありませんか」
「んー、そうだねぇ…」
「しかしながら、千両殿」
「相手は祭峰側なのでござろう?」
「万が一にでも、あの祭峰と鉢合わせますと…」
「確かに厄介ですね」
「その場合は我々では祭峰に勝てる見込みは少ないですから」
「え?そうなの?」
「勝てるのはNo,2かNo,1ぐらいでしょうね」
「…とは言え、No,2はもう居ませんが」
「そう言えばゼロはドイツで引き分けてたなぁ…」
「…って言うか、ほぼ負け?」
「えぇ、その時の事を聞きますと話してくれましたよ」
「あぁ…、試験の時に…」
「何て言ってた…?」
「「アイツは多重能力者か」と」
「多重…?」
「えぇ」
「本来、能力者は能力を1つしか持てません」
「能力によって様々な応用は利いても原点は1つですから」
「No,6のソウ様やNo,4の昕霧様が良い例ですね」
「ある意味ではNo,3のゼロ様が最もの例でしょうか」
「確かにねぇ…」
「しかし、その上で祭峰は身体強化系、属性系、念力系を使っています」
「全属性をですよ?」
「お面によって能力を変えるなどの説はありますが、確かではありません」
「…うん」
「コレは私の仮説なのですが」
「概念を操っているとしたら…、どうでしょう?」
「概念?」
「そうです」
「No,2の能力[空間操作]やNo,1の[拒絶]」
「ゼロさんもそれに近いですが…、及びはしないでしょうね」
「…能力を使うっていう能力?」
「簡潔に言えば、そうでしょう」
「だが、それでは全ての能力が使えてしまうでござろう?」
「…そうなりますね」
「ですから、あくまで仮説です」
「もしもそうならば…、勝ち目など無いのですから」
「だねぇ…」
「60点なんだゼ」
「流石、クラウンの千両なんだゼ」
「!」
「えーっと…」
「ラグド・ファイス…」
「祭峰側の人間ですね」
「あぁ、そうだゼ」
「外れクジ引いて、こんなクソ暑ぃトコに来たんだゼ」
「それはクジ運の悪い事で」
「全くだゼ」
「軍暗殺特務部隊所属組織最強のクラウンに鉢合わせるんだからな、だゼ」
「貴方も[神速の弾丸]と呼ばれた実力の持ち主でしょう?」
「それは大袈裟なんだゼ~」
「ご謙遜を」
「…1つ聞きたいんだが、良いか?だゼ」
「何でしょうか」
「1人…、何処行ったんだゼ?」
「おや…、何処でしょうか」
バァンッッ!!
突如、ラグドの周囲の砂がはじけ飛ぶ
「ぐっ…!!」
「馬常さん、レウィン様を」
「え?う、うん…」
千両は馬常にレウィンを預け、砂塵の中へと突貫して行く
「…チッ」
何も見えないんだゼ
流石、暗殺特務部隊
この1言を送るんだゼ
まず、1人が会話で気を逸らさせる
その内にもう1人が隠れて砂塵を撒き散らす
まぁ、後はそれに隠れて攻撃すれば良いだけなんだゼ
単純明快、至極簡単
尤も手っ取り早く殺せる方法
だが
ブォンッッッ!!
「空気間の重[力]を解放したんだゼ」
「砂塵はコレで…」
目前
刀
眼球へと
迫る
キィンッ
「ーーーーーーー…危ないんだゼ」
「コレを防ぐとは驚きでござるな」
「慣性力を封じたのでござるな?」
「俺の能力はもう知れ渡っちまったみたいだな、だゼ」
「自分で申したのでござろうに」
「まぁ、そうなんだけどな…、だゼ」
「お返しだゼ」
ボォンッッ!!
ラグドの脚撃によって再び舞い散る砂塵
之乃消は慌てず、姿勢を低く保つ
まるで威嚇する猫の様に、周囲を見渡す
「…隠光」
(…消えた?だゼ)
おかしい
完全に場所は把握していたはずだゼ
伏せていても、影で場所はバレバレ
姿を消す能力だとしても実態はあるから影ができるはず
「どうなって…」
瞬間移動系か…?だゼ
ザッ…
「!」
影!
「そこだゼ!!」
パァンッッ!!
「…?」
反応無し?
ドッ
「ぐっ…!」
ラグドの背中に走る激痛
鋭い痛みと共に、背中が濡れていくのが解る
(刺されたのか…!だゼ…!!)
何故!?
影は真正面にあるはず!!
「どうなってやがるんだゼぇぇええええーーーー!!!」
背後へと振り返るラグド
その目前には之乃消の姿が有った
「き、効かんのでござるか!?」
「脳天撃ち抜きだゼッッ!!」
ドドドドドドドスッッ
「がっ…!!」
数十の痛み
否、それすらも凌駕する意識の朦朧さ
「何で…!!」
ラグドの背後にあった影
そこから生える手
「まさか…、こんなに簡単に罠にかかってくれるとは思いませんでしたよ…」
ズズズズズ…
「ち…!ぎりぃ…!!!」
「毒のお味は…、どうですか?」
読んでいただきありがとうございました